ジンベエザメは、世界でいちばん大きな魚です。体長は10mをこえ、大きなものは18mにもなります。名前に「クジラ」の意味がふくまれますが、クジラではなくサメの仲間です。あの大きな口で、海水ごとプランクトンを吸いこんで食べる、おとなしい大型ザメです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:軟骨魚綱 Chondrichthyes
- 目:テンジクザメ目 Orectolobiformes
- 科:ジンベエザメ科 Rhincodontidae
- 属:ジンベエザメ属 Rhincodon
- 種:ジンベエザメ Rhincodon typus
和名・英名
- 和名:ジンベエザメ(漢字で「甚兵衛鮫」)
- 英名:Whale shark(クジラのように大きいサメの意味)
名前の由来
「ジンベエザメ」の名前は、背中の模様に由来します。体にならぶ水玉のような白い点が、「甚兵衛(じんべえ)」という和服の背中の模様に似ているのです。そこから「甚兵衛鮫」と呼ばれるようになりました。英語の Whale shark は、クジラのように大きなサメ、という意味です。名前に「クジラ」が入りますが、クジラの仲間ではありません。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約10〜12m(最大で約18m)・体重 10t以上になることも |
|---|---|
| 分布 | 世界の暖かい海。日本では小笠原や沖縄などの海で見られる |
| 生息環境 | あたたかい外洋の表層〜深海 |
| 食べもの | プランクトン・小魚・魚や生きものの卵など |
| 寿命 | 80〜130年ほどと考えられている |
| 保全状況 | IUCN: EN(絶滅危惧) |
世界でいちばん大きな魚

体長18mの巨体
ジンベエザメは、今の海に生きる魚のなかで最大です。ふつうでも体長10mをこえ、大きな個体は18mにもなります。これは、大型の路線バス2台分ほどの長さです。体重は10tを大きくこえることもあります。海の中で出会うと、その大きさに圧倒されます。
メガロドンと比べると
大昔の海には、メガロドンという巨大なサメがいました。体長は15mをこえたと考えられています。今のジンベエザメは、これに近い大きさを持つ、現代最大のサメです。ただし、メガロドンが大きな獲物をおそう肉食だったのに対し、ジンベエザメは小さなプランクトンを食べます。同じ大きさでも、暮らし方はまったく違います。
クジラではなく、サメ

「クジラ」の名がつく理由
ジンベエザメは、名前に「クジラ」の意味を持ちます。しかし、クジラとはまったく別の生きものです。クジラは、人と同じように肺で息をする哺乳類です。いっぽうジンベエザメは、エラで呼吸をする魚です。名前に「クジラ」がつくのは、クジラのように体が大きいからにすぎません。
骨のないサメの体
ジンベエザメは、サメの仲間です。サメの体には、かたい骨がありません。かわりに、やわらかい軟骨(なんこつ)で体を支えています。この軟骨の体は、サメやエイだけが持つ特徴です。ジンベエザメも、まぎれもなくサメのなかまだと分かります。
プランクトンを吸いこむ大きな口

海水ごと、こしとる
ジンベエザメの口は、大きいものでは幅1.5mほどにもなります。この大きな口を開けたまま泳ぎ、海水ごとえさを吸いこみます。口に入った海水は、エラのすきまから外へ出ていきます。そのとき、水の中のプランクトンや小魚だけが、こしとられて残ります。1時間に数千リットルもの海水を、こうして「こし器」のように通します。
3000本以上の小さな歯
ジンベエザメの口には、3000本をこえる小さな歯がならんでいます。ところが、この歯はえさを食べるのに使われません。えさをこしとるのは、あくまでエラのそばにある「こし器」の役目です。大きな口とたくさんの歯を持ちながら、獲物にかみつくことのない、おとなしいサメです。
体の模様と、小さな目

一頭ずつ違う水玉模様
ジンベエザメの背中には、白い水玉のような模様がならびます。この模様の出方は、一頭ごとにすべて違います。人の指紋のように、同じ個体は二つといません。研究者は、この模様を写真にとって、個体を見分けています。どこで生まれた一頭が、どこまで旅をするのかを追う手がかりになっています。
体の割に小さな目
あれほど大きな体を持ちながら、ジンベエザメの目はとても小さめです。目は頭の左右に低くついています。近年、その目には小さなうろこのような歯(皮歯)がびっしり生え、目を守っていることが分かりました。目を引っこめて守るしぐさも見られます。大きな体を、こうした工夫で守っています。
大回遊と、深海へのダイブ
ジンベエザメは、世界の暖かい海を広く泳ぎまわります。えさの多い海を求めて、数千kmもの距離を回遊します。ふだんは海面近くにいますが、深くもぐることもあります。記録では、水深1900mをこえる深海までダイブしたことも分かっています。おだやかに泳ぐ姿からは想像できない、長い旅をする魚です。ときには、コバンザメやコガネシマアジなどの小さな魚を、体に引き連れて泳ぎます。
卵から、体の中でかえる
ジンベエザメのふえ方は、長いあいだ大きな謎でした。しかし、卵を産むのではありません。メスは、体の中で卵をかえし、子ザメの姿で産みます。このふえ方は「卵胎生(らんたいせい)」と呼ばれます。かつて捕らえられたメスの体内には、約300匹もの子ザメがいました。生まれたばかりの子ザメは、40〜60cmほどの大きさです。世界最大の魚も、はじめは小さな子ザメから育ちます。
天敵と、減っていく数
大人のジンベエザメには、自然の中でおそう天敵はほとんどいません。まれに、シャチや大型のサメが子ザメをおそうことがある程度です。いっぽう、人による影響が大きな脅威になっています。ヒレを目当てにした漁や、船との衝突、海の汚れなどです。この75年ほどで、世界の数はおよそ半分に減ったとされます。IUCNは、ジンベエザメを絶滅危惧(EN)に分類しています。
どこで会える

日本の水族館
ジンベエザメは、日本のいくつかの大きな水族館で見られます。沖縄の「美ら海(ちゅらうみ)水族館」や、大阪の「海遊館」が知られています。巨大な水そうを悠々と泳ぐ姿は、水族館の主役として人気です。飼うには、体の大きさに合った、とてつもなく大きな水そうが必要です。世界でも、ジンベエザメを飼える水族館はごくわずかです。
野生の海で泳ぐ
野生のジンベエザメと泳げる海も、世界にはあります。フィリピンやメキシコの海では、シュノーケリングでいっしょに泳ぐツアーが人気です。日本でも、沖縄などで観察できることがあります。おとなしく、人をおそわないため、間近で泳ぐこともできます。ただし、体にさわることは、多くの国で禁じられています。

参考
- Wikipedia(英語版)「Whale shark」(大きさ・ろ過摂食・斑紋・繁殖・保全)
- IUCN Red List:Rhincodon typus(EN・個体数の減少と脅威)
- 沖縄美ら海水族館ほかの資料(飼育・生態の記録)
画像出典
サムネイル画像: Derek Keats from Johannesburg, South Africa, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


