デンキウナギ

硬骨魚類

デンキウナギは、強い電気を出すことで知られる南米の魚です。名前に「ウナギ」とつきますが、じつはウナギの仲間ではありません。最大で2mを超え、獲物を電気でしびれさせて捕らえます。その電気は最大で800ボルトを超え、動物のなかでもっとも強いとされます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:デンキウナギ目 Gymnotiformes
  • 科:デンキウナギ科 Gymnotidae
  • 属:デンキウナギ属 Electrophorus(全3種)

和名・英名

  • 和名:デンキウナギ(漢字で「電気鰻」。「電気ウナギ」とも書く)
  • 英名:Electric eel

名前の由来

「デンキウナギ」の名は、強い電気を出す細長い姿にちなんだ名前です。ただし、分類の上ではウナギの仲間ではありません。ウナギよりも、じつはナマズに近い魚です。長いあいだ1種とされてきましたが、2019年に3種へ分けられました。そのうちの1種は、最大860ボルトという記録を持ちます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 最大2.5mほど・体重 最大20kgほど
分布南米(アマゾン川・オリノコ川の流域)
生息環境流れのゆるい濁った川・沼・池(淡水。海にはいない)
食べものおもに魚(幼魚は小さな無脊椎動物も)
電気最大800ボルト超(動物で最強クラス)
活動夜行性。視力は弱く、電気で周囲を探る

強い電気を出すしくみ

デンキウナギの細長い体
体の後ろの大部分が発電器官(FakirNL, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

体の大部分が発電器官

電気を生む細胞の列

デンキウナギの体は、大部分が発電のための器官でできています。内臓は頭のほうに寄せられ、後ろの長い部分に発電器官がつまっています。ここに並ぶのは、「電気板」と呼ばれる特殊な細胞。その数は、大きな個体で何千枚にもなります。一枚が生む電気はわずかですが、乾電池を直列につなぐように積み重なります。これがいっせいに働くことで、大きな電圧を生み出します。

最大で800ボルトをこえる

生み出される電気は、種類によっては最大860ボルトに達します。これは家庭のコンセント(日本では100ボルト)を大きく上回る強さです。動物が出す電気としては、自然界で最も強いとされています。強い電気は一瞬で放たれ、獲物や敵をしびれさせます。弱った獲物は、そのまま丸のみです。人がうかつにふれれば、大人でも感電し、おぼれる危険があります。

強い電気と、弱い電気

デンキウナギの電気には、二つの役目があります。一つは、狩りや身を守るための強い電気です。もう一つは、周囲を探るための弱い電気です。目のよく見えない濁った水の中で、弱い電気を出して物の位置を感じ取ります。人が明かりで暗闇を照らすように、電気で「見て」いるのです。

電気で狩り、身を守る

デンキウナギの頭部
頭のまわりには電気を感じ取る小さな穴がある(David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

獲物をしびれさせる

水から飛び出して攻撃も

デンキウナギは、水の中だけでなく、水面から飛び出して攻撃することがあります。大きな動物が近づくと、体を持ち上げて相手に押し当て、電気を流します。水の外へ直接ふれることで、より強い電気を伝えられます。近づいた馬やワニが感電した、という記録も残されています。追いつめられたときの、思いきった防御の手段です。

獲物の筋肉をあやつる

デンキウナギは、電気をたくみに使って狩りをします。短い電気を送り、隠れた獲物の筋肉をびくりと動かして居場所を暴きます。強い電気で相手の体を固まらせ、逃げられなくすることもあります。電気は、しびれさせるだけの道具ではありません。相手の体を遠くから操る、精密な武器でもあるのです。

自分は感電しないのか

「自分の電気で感電しないの?」とよく疑問に思われます。デンキウナギの大切な臓器は、体の前のほうにまとまっています。発電器官から離れているため、強い電気は直接届きにくいとされます。放電が一瞬であることも、自分への害を小さくする理由です。まったく感じないわけではありませんが、大きな害は受けません。強い電気とうまく付き合う体を、進化のなかで身につけてきました。

ウナギでない、息継ぎする魚

じつはナマズに近い仲間

デンキウナギは、細長い姿からウナギと間違えられがちです。しかし本当のウナギとは、遠い間柄にすぎません。分類の上では、ナマズに近い「デンキウナギ目」という仲間に入ります。この仲間には、弱い電気で周囲を探る魚が多く含まれます。そのなかで、強い電気を出せるようになったのがデンキウナギです。

空気を吸いに水面へ

えらだけでは足りない

デンキウナギは、魚でありながら空気を吸って呼吸します。すむのは、酸素の少ない濁った川や沼です。えらでの呼吸だけでは、必要な酸素をまかなえません。そこで口の中の特殊な組織を使い、水面で吸った空気から酸素を取り込みます。酸素の多くを、この空気呼吸にたよる魚です。

水面に上がれないと溺れる

空気呼吸にたよるため、定期的に水面へ上がる必要があります。数分から十数分に一度、口を出して空気を吸いこみます。もし水面に上がれないと、デンキウナギは溺れてしまいます。魚が溺れるとは意外ですが、この魚にとっては死活問題です。強い電気を持つ王者にも、こんな弱点があるのです。

アマゾンの暮らしと天敵

デンキウナギ3種の分布図
南米に分布するデンキウナギ3種(赤=electricus・青=voltai・黄=varii/C. D. de Santana ほか, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

濁った川にすむ

デンキウナギがすむのは、アマゾン川やオリノコ川の流域です。流れのゆるい、濁った川や沼を好みます。日本には自然にはすんでおらず、水族館などで見られます。夜になると活動し、電気を頼りに獲物を探します。濁った水の中では、電気が目の代わりになります。まわりの物や生きものの位置を、電気のゆがみとして読み取るのです。

天敵と子育て

強い電気を持つ大人のデンキウナギには、天敵はほとんどいません。うかつに近づけば、大型の動物でも強い電気を受けるためです。ただし、電気の弱い小さな子は、ほかの魚などに狙われます。繁殖期には、オスが自分のだ液で泡の巣をつくって卵を守ります。強さと子育ての工夫で、濁った川を生きぬく魚です。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Electric eel」(分類・電圧・発電器官・空気呼吸・生態)
  • Wikipedia(日本語版)「デンキウナギ」(分布・生態)
  • de Santana et al. (2019) Nature Communications(3種への分割・860V)/K. Catania の狩り・跳躍の研究

画像出典

サムネイル画像: Unknown author, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons

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