ハト

街のハト、ドバト 小型陸鳥

ハトは、街でも野山でも見かける、身近な鳥です。ずんぐりした体と小さな頭、そして胸をつき出して歩く姿は、多くの人に見覚えがあります。駅前や公園に群れているのは、灰色のドバト。林や庭でよく鳴くのは、茶色っぽいキジバトです。世界には多くの種類がいて、暮らす場所も色もさまざまです。

身近な鳥でありながら、ハトには不思議がいくつもあります。遠くから家に帰りつく力、めったに見かけない赤ちゃん、親がつくる「ミルク」。どれも、ふだんはあまり知られていない一面です。帰巣の力や種類、子育て、体のつくりまでを順に見ていきます。

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分類と学名

分類階層

ハトは、ハト目ハト科に入る鳥の総称です。世界にはおよそ300種が知られ、南極を除く広い地域に住んでいます。日本で身近なのは、街に住むドバトと、野山に住むキジバトです。このほかにも、緑色のアオバトなど、いくつもの種類が見られます。

  • 目:ハト目
  • 科:ハト科
  • おもな種類:ドバト(カワラバト)・キジバト・アオバト など
  • 分布:南極を除く世界の広い地域

「バト」と「ハト」

街でよく見る灰色のハトは「ドバト」と呼ばれ、もとは飼いバトが野生化したものです。その祖先は、崖などに住むカワラバトという野生の鳥でした。日本には昔から、キジバトやアオバトといった野生のハトもいます。種類の名前の多くに「バト」がつくのは、「ハト」が濁って読まれるためです。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約30〜35cm(ドバト・キジバト)
分布南極を除く世界の広い地域
生息環境市街地・公園・農地・林・海辺など
食べ物草の種・木の実・穀物など(おもに植物食)
子育て親が「ハトのミルク」でひなを育てる
特徴帰巣の力、胸を振って歩く、水を吸って飲む

遠くから帰ってくる力

ハトには、遠く離れた場所から自分の巣へ帰りつく、すぐれた力があります。この力は「帰巣本能」と呼ばれ、昔から人にも役立てられてきました。

伝書鳩として飼われるハト
帰巣の力を生かして飼われるレース用のハト。撮影:SJasminum(CC BY-SA 4.0)

帰巣本能

いくつもの手がかりで方角を知る

ハトは、初めて連れていかれた場所からでも、何百キロも先の巣へ戻ることがあります。どうやって方角を知るのかは、今もはっきりとは分かっていません。太陽の位置や地球の磁気、目じるしになる景色やにおいなど、いくつもの手がかりを組み合わせていると考えられています。とくに、頭の中で地球の磁気を感じているらしいことが、研究で示されてきました。近ごろの研究では、血液に含まれる特別な細胞が、この磁気を感じることに関わっているらしいとも報告されました。それでも、すべての謎が解けたわけではありません。

手紙を運んだ伝書鳩

この帰巣の力を利用したのが、「伝書鳩」です。遠くへ連れていったハトに手紙をくくりつけて放すと、自分の巣へ帰る途中で、その便りを遠くまで運びます。電話や無線がなかった時代には、戦争や新聞の連絡に広く使われました。何百キロも離れた場所から放たれても、多くが無事に帰りついたと伝えられます。今でも、ハトを競わせるレースが趣味として楽しまれています。

いろいろな種類

街のドバトと野生のキジバト

街に住むドバト

ドバトは、駅前や公園、神社などでいちばんよく見るハトです。灰色の体に、首もとが緑や紫に光るのが特徴です。もとは飼いバトが野生にもどったもので、人の暮らしのそばで数を増やしてきました。人になれていて、逃げずに足もとまで寄ってくることもあります。一年を通して何度も子を育てるため、街では数が大きく増えます。数が増えすぎて、ふんで建物が汚れるといった問題が起きる場所もあります。

広場に集まるドバトの群れ
広場に群れる街のドバト。撮影:ProhibitOnions(CC BY-SA 3.0)

野山のキジバト

キジバトは、林や畑、住宅地の庭などに住む野生のハトです。うろこのような茶色い模様が、キジのメスに似ていることから、この名がつきました。「デーデーポッポー」と、くり返し鳴く声でも知られます。ドバトと違って群れをつくることは少なく、一羽かつがいで見かけることが多い種類です。繁殖の時期が長く、春から秋にかけて何度もひなを育てます。

野生のハト、キジバト
うろこ模様が美しい野生のキジバト。撮影:Mildeep(CC BY-SA 4.0)

緑色のアオバト

アオバトは、体が緑色をした、めずらしいハトです。木の実を好んで食べ、森の中で暮らします。夏には、海辺の岩場に群れでやってきて、海水を飲む姿が知られています。塩分をとるためと考えられていますが、はっきりした理由はまだ分かっていません。ときには波にさらわれる危険をおかしてまで、海水を飲みにくることが知られます。

緑色のハト、アオバト
全身が緑色をしたアオバト。撮影:Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0)

見かけない赤ちゃんとハトのミルク

これだけ身近なハトなのに、そのひなを見た人は少ないはずです。ひなが人目につかないのには、ハトならではの子育てが関わっています。

親がつくる「ハトのミルク」

そのうから出る栄養

ハトの親は、のどのおくにある「そのう」という袋から、栄養に富んだ分泌物を出します。これは「ピジョンミルク」や「ハトのミルク」と呼ばれ、生まれたてのひなの食べ物になります。乳ではありませんが、栄養が豊富です。しかも、オスとメスの両方がこのミルクをつくって、ひなに与えます。ミルクを与えるのは、生まれてしばらくのあいだだけです。やがて、親が半分消化した種を、口移しで与えるようになります。

巣立つころには親と同じ大きさ

ミルクと種で育てられたひなは、巣の中で早く育ちます。人目につきにくい高い場所に巣がつくられるうえ、巣立つころには親とほとんど同じ大きさに育っています。そのため、いかにも赤ちゃんという姿のハトを、外で見かけることはめったにありません。街で見る小さめのハトも、多くはすでに巣立った若い鳥です。

ハトの体と生態

首を振って歩く

ハトが歩くとき、頭を前後に振っているように見えます。じっさいには、頭を一度前に出して空中で止め、それから体を追いつかせています。頭を止めているあいだに、まわりの景色をしっかり見ているのだと考えられています。せわしなく動いて見える歩き方には、目でまわりを確かめるための意味があるようです。

ドバトの頭のアップ
首もとが緑や紫に光るドバト。撮影:Dori(CC BY-SA 3.0)

水の飲み方と鳴き声

ハトの水の飲み方は、ほかの鳥とちがっています。多くの鳥は、水を口に含んで、上を向いて流しこみます。ところがハトは、くちばしを水につけたまま、吸うようにして飲めます。水面から口を離さずに飲めるのは、ハトのなかまに共通する特徴です。鳴き声は、種類によってさまざまです。ドバトは「クルックー」と低くのどを鳴らし、キジバトは「デーデーポッポー」とくり返します。

平和の象徴

白いハトは、世界の多くの地域で「平和の象徴」とされてきました。旧約聖書には、大洪水のあとにハトがオリーブの葉をくわえて戻り、水が引いたことを知らせる場面があります。この物語から、オリーブの枝をもつハトが、平和のしるしとして広まりました。式典で白いハトが放たれるのも、こうした願いがこめられているためです。画家のピカソが描いたハトも、平和のしるしとして広く知られています。かつては、オリンピックの式典で、たくさんの白いハトが放たれることもありました。

どこで会えるか

ハトに会うのは、むずかしくありません。駅前の広場や公園、神社の境内など、人の集まる場所にドバトはたいてい群れています。キジバトは、住宅地の庭や電線、林のふちなどで見つかります。「デーデーポッポー」という声が聞こえたら、近くにキジバトがいる合図です。足もとや街路樹に目を向ければ、たいていハトの姿が見つかります。

参考

  • Wikipedia「ハト」「カワラバト」「キジバト」「Homing pigeon」
  • Encyclopædia Britannica「Pigeon」「Columbidae」
  • ハトのナビゲーションに関する研究(Science ほか)

画像出典

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