イワトビペンギンは、まっ赤な目と、ツンツンと逆立った黄色い冠羽(かんむり羽)がトレードマークのペンギンです。その名前のとおり、岩から岩へとぴょんぴょん飛びうつる、元気いっぱいのペンギン。ちょっとヤンチャに見える顔つきで、水族館でも大人気です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:マカロニペンギン属 Eudyptes
- 種:イワトビペンギン Eudyptes chrysocome
和名・英名
- 和名:イワトビペンギン(岩飛びペンギン)
- 英名:Rockhopper penguin
名前の由来
和名の「イワトビ」も、英名の「ロックホッパー(rockhopper=岩を飛ぶ者)」も、どちらもこのペンギンの動きから来ています。多くのペンギンが岩をおなかですべって越えるのに対し、イワトビペンギンは両足をそろえてぴょんと飛びこえるのです。日本語も英語も、同じ特徴に目をつけて名づけました。学名のchrysocome(クリソコメ)は「金色の髪」という意味で、あの黄色い冠羽をあらわしています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約45〜58cm・体重 約2〜3.4kg(小型) |
|---|---|
| 分布 | 南米南端・フォークランド諸島など、亜南極の島々 |
| 生息環境 | 岩場の海岸・崖・まわりの海 |
| 食べ物 | オキアミ・イカ・小魚(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ10年前後(飼育下では長い例も) |
| 保全状況 | IUCN:危急(VU) |
赤い目と逆立つ黄色い冠羽
まっ赤な目とスパイキーな冠羽
まっ赤な目とツンツンの黄色い冠羽
イワトビペンギンの顔は、とても個性的です。目はあざやかな赤色で、その上には、まっすぐのびた黄色い眉のような羽があります。背中は青みがかった灰色で、おなかは白色です。頭部の黄色い羽は、頭の横で長くのびて、ツンツンと逆立ちます。まるで髪をワックスで立てたような姿から、「ヤンキーみたい」「パンクな顔」とも言われる人気の見た目です。この立派な冠羽と赤い目は、子どものうちははっきりせず、大人になるにつれて色づいていきます。

冠羽を「後光」のように広げる求愛
冠羽をもつペンギンの中では、いちばん小さな体をしています。求愛のときには頭をふって、黄色い眉の羽を「後光(こうこう)」のようにパッと広げ、相手にアピールします。あわせて「エクスタティック・コール」と呼ばれる大きな声で鳴き、自分の存在やなわばりを知らせます。
キタ・ミナミ・ヒガシの3グループ
じつは「イワトビペンギン」は、近年の研究で3つの種に分けられています。南米まわりにすむミナミ(この記事の主役)、インド洋・太平洋の島々にすむヒガシ、そして少し北の海にすむキタの3グループです。見た目はよく似ていますが、冠羽の様子やくちばしのふちの色などに、少しずつ違いがあります。この分け方は、近年の遺伝子(DNA)の研究をもとにしたものです。なお、イワトビペンギンは同じ属のマカロニペンギンやロイヤルペンギンと、とても近い仲間にあたります。水族館でよく見られるのは、おもにミナミイワトビペンギンです。
名前のとおり岩を「飛びこえる」
イワトビペンギンは、ゴツゴツした岩場の海岸や、切り立った崖の上にコロニー(集団繁殖地)をつくって暮らします。その険しい地形を移動するとき、両足をそろえてぴょんぴょんと岩を飛びこえていきます。岩のすき間や割れ目も、ジャンプでひとっ飛び。この元気な動きこそ、名前の由来になった得意技です。小さな体で険しい岩山を登っていく姿は、とてもたくましく見えます。じつは同じ冠羽ペンギンの仲間も岩を飛びますが、イワトビペンギンのすむ島々は昔から探検家や捕鯨船がよく立ち寄る場所でした。そのため、この飛びはねる行動が早くから知られ、名前として広まりました。

水族館で会える人気者
イワトビペンギンは、冠羽をもつペンギンの中で、いちばん人によく知られた種です。映画やイラストに登場する冠羽ペンギンの多くは、このイワトビペンギンがモデルになっています。日本でも、大阪の海遊館をはじめ、多くの水族館で会うことができます。あのツンツン頭とヤンチャな表情を、間近で観察できる人気者です。ちなみに、ノルウェーの水族館にいた「ロッキー」という個体は29歳4か月まで生き、ペンギンの最高齢記録として知られています。

子育てと保全
崖のコロニーと2個の卵
繁殖の季節は9月から11月ごろです。コロニーは海面近くから切り立った崖の上まで、さまざまな高さにつくられます。そのため親たちは毎日、海と巣のあいだの険しい道を、飛びはねながら往復します。2個の卵を産みますが、ふつう育つのはそのうち1羽だけです。卵は約35日でかえり、生まれたヒナは26日ほど親に守られて育ちます。餌をとりに行く親は、コロニーから100km以上もはなれた海まで泳ぐこともあります。ふだんは仲間と群れで海へ出かけ、いっしょに帰ってくる習性があります。えものは、オキアミやイカ・小魚などです。海の底ちかく、水深100mほどまでもぐって餌をさがすこともある、じょうずな潜り手です。
数が減っている危急種
イワトビペンギンは、この30年ほどで数がおよそ3分の1も減ってしまいました。そのためIUCNレッドリストでは「危急(VU)」に指定されています。数が減っている原因には、漁業との競合(えさのとりすぎ)や、海の油の流出などが考えられています。人気者でありながら、その未来には心配もある、守っていきたいペンギンです。



参考
- IUCN Red List: Eudyptes chrysocome(危急VU・約30年で3分の1減/漁業・油流出)
- Animal Diversity Web「Eudyptes chrysocome」(求愛で頭をふり黄色い冠羽を「後光」状に広げる・エクスタティックコール/一夫一妻で毎年同じ相手/野生の平均寿命10年)
- Wikipedia「Southern/Western rockhopper penguin」英語版(名前の由来=岩飛び/赤い目・金色の冠羽/キタ・ミナミ・ヒガシの分割/最高齢ロッキー29歳)
画像出典
アイキャッチ画像: Nick (United Kingdom), CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


