アサリ

甲殻類・軟体動物

アサリは内湾の砂や砂泥にもぐって暮らす二枚貝です。潮干狩りでおなじみですが、拾い上げた殻をよく見ると、模様が一枚ずつ違います。この多彩さには遺伝と育った環境の両方が関わっています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:二枚貝綱 Bivalvia
  • 亜綱:異歯亜綱 Heterodonta
  • 目:マルスダレガイ目 Venerida
  • 上科:マルスダレガイ上科 Veneroidea
  • 科:マルスダレガイ科 Veneridae
  • 属:アサリ属 Ruditapes
  • 種:アサリ Ruditapes philippinarum

和名・英名

  • 和名:アサリ(浅蜊・蛤仔)
  • 英名:Manila clam/Japanese littleneck

命名は1850年のアダムスとリーブによるものです。俳句では春の季語として扱われます。広い意味ではアサリ属の総称でもあり、日本ではヒメアサリもアサリと呼ばれることが多くあります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさふつう殻長4cm前後。最大で6cmほど
分布北海道から九州、サハリン・朝鮮半島・中国大陸沿岸・台湾。地中海やフランス、ハワイ諸島、北米太平洋岸には移入
生息環境海水と淡水が混じる汽水を好む。潮間帯から水深10mほどまでの砂礫泥の底
食べ物水管から吸いこんだ植物プランクトンや浮遊有機物を、えらで濾しとる
繁殖春と秋の年2回。受精卵は直径60〜70μmで、約10時間で孵化
季語春(三春)

一つとして同じ模様がない殻

模様の異なるアサリの殻を並べたところ
並べると一枚ずつ模様が違う。横しま・幾何学模様・青・無地に近いものまで幅がある。Unknown author, Public domain, via Wikimedia Commons

殻の模様は横しまから幾何学模様まで、幅広く変わります。色も黒無地から白黒・白茶・茶色無地・青無地・青白まで揃います。

色を作っているのは金属を含むタンパク質

2層構造の色素

この色はアルミニウムと鉄を含むタンパク質による、2層構造の色素によるものと分析されています。層ごとの濃淡と組み合わせが変わることで、多様な色と模様が現れます。

青い殻は鉄を含む色素

青みを帯びた殻の色素は鉄を含む酸性のタンパク質です。中性の条件下では、分子量1万ほどの単位が3個から4個集まった状態で存在すると報告されています。貝殻の色は化学の産物でもあります。

模様には遺伝が関わる

色と模様がはっきり出たアサリの殻
色の濃さや模様の出方には幅がある。Commons側の説明も色彩変異の例とされている。Gerd Röder, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

左殻後縁の黒い模様は優性形質

白い個体の多くは左の殻の後ろ寄りだけが黒くなります。左右で模様がそろわないので、非対称模様と呼ばれます。この形質は遺伝性で、しかも優性であることが明らかにされています。模様は環境まかせではなく、まず親から受け継がれる部分があります。

北海道東部では模様が消える

一方で、模様は地域差や底質によっても変化します。北海道の主に東部に住む個体は大型で、目立った模様がなく、一様に黄褐色がかった色をしています。ただし同じ個体でも、稚貝のうちは他の地域と同じように多様な模様を持っています。育つ過程で環境の影響を受け、一様な色へ変わっていきます。

ハマグリとの見分け

アサリの殻の外側と内側
殻の外側(下)と内側(上)。外側には細かい筋が網目状に走る。Gerd Röder, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

表面がざらつくかどうか

潮干狩りで迷ったときの手がかりは殻の表面です。アサリの殻には、放射状に走る細い筋と成長線が交わってできた網目状の彫りがあります。指でなでるとざらつくのはこのためです。ハマグリの殻は表面がなめらかで、つやがあります。

模様だけで見分けようとすると迷います。アサリは同じ模様の個体がいないほど変異するため、色や柄は決め手になりません。

足糸で砂に貼りつく稚貝

着底直後だけ足糸を出す

海中を漂っていた幼生は2週間から4週間かけて海底に降ります。着底した直後の稚貝は足糸という糸を分泌し、砂粒や小石にくっついて体を固定します。まだ小さいうちは流れに逆らえないためと考えられています。

成長すると退化する

足糸は成長にともなって退化します。一生を足糸で岩に留まるムール貝の仲間とは、この点が違います。アサリの成貝は足を使って砂にもぐり、殻ごと身を隠します。

着底できる場所は限られる

着底に向くのは、大潮の干潮線から0.6mから0.9mほどの高さで、流れが穏やかな砂や砂泥の場所です。潮が引いて干上がる時間が2時間以内という条件も挙げられます。着底してからの移動距離は数mほどにとどまります。

岸と沖で形が変わる

岸寄りは丸く厚く、沖は薄く平たい

岸に近い場所では餌が不足しがちで、貝は団子のように丸くなり、殻も厚くなります。沖側の個体は殻が薄く、平たい形に育ちます。

成長も沖側のほうが早く、身の詰まり方も良いと言われます。そのぶん殻は割れやすくなります。水温が25度を超えると成長の速さは鈍ります。

春と秋に産卵し、10時間で孵化する

産卵期は春と秋の2回あります。水温が春は19度から24度、秋は23度から15度ほどになるころが目安です。

水中で受精する

産卵に加わるのは10か月から

雄が精子を水中に放ち、雌がそれを受け取って受精します。産卵に加わるのは、生まれてから10か月以上たち、殻の長さが20mmから25mm以上に育った個体とされます。身の詰まり具合を示す肥満度も条件に挙げられます。年2回の産卵期があるので、春に生まれた個体は翌年の春に加わる計算です。

卵は髪の毛ほどの太さ

受精卵の直径は60μmから70μmで、髪の毛ほどの太さしかありません。およそ10時間で孵化します。産んだ卵を守るしくみはなく、数で残す繁殖です。

3つの段階を経て着底する

孵化した幼生は海中を漂います。はじめはトロコフォア幼生、続いてベリジャー幼生と姿を変えます。

ベリジャー幼生の時期はさらに細かく分かれます。殻の長さでいうとD状期が90μmから130μm、アンボ期が130μmから180μm、フルグロウン期が180μmから230μmです。この段階を経て海底へ降ります。

殻に穴をあけて食べるツメタガイ

穿孔殻という食べあと

ツメタガイは同じ砂地に住む肉食の巻貝です。アサリの殻に小さな穴をあけ、中身を食べます。食べられた殻には丸い穴が残るため、被害の大きさを数えられます。この穴のあいた殻を穿孔殻と呼びます。

浜名湖で広がった食害

静岡県水産試験場浜名湖分場の調査では、湖南部を中心にツメタガイによる食害が広がりました。死んだ殻に占める穿孔殻の割合は、1997年の28%から2001年には67%へ増えています。

同じ時期、浜名湖のアサリ漁獲量は大きく落ちこみました。1988年から1991年の4千から5千トンに対し、1997年から2001年は2千から2.7千トンです。かつて主漁場だった湖南部では、生息密度が1平方メートルあたり平均647個から281個へ減りました。食害はその一因として疑われています。

水を濾してきれいにする役目

水管を伸ばしたアサリ
水にひたしたアサリ。殻のすきまから白い水管を伸ばしている。Σ64, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

砂にもぐったアサリは水管という管を砂の上へ伸ばします。ここから海水を吸いこみ、中に含まれる植物プランクトンや浮遊有機物をえらで濾しとって食べます。

1個で1日にバケツ1杯

濾す量は水温で大きく変わります。漁獲サイズの殻長3.5cmの個体では、水温15度で1日あたり14.9リットルと見積もられました。25度まで上がれば26.2リットルに増えます。中型のバケツ1杯ぶんの水を、手のひらに乗る貝が1日で通していることになります。

7kgのアサリで、1時間ほどでほぼ透明に

水産庁の資料には、千葉県内湾水産試験場の実験が紹介されています。7kgのアサリを入れた水槽と空の水槽で濁った海水を比べたところ、アサリのほうは開始から1時間ほどでほぼ透明になったとされます。

沿岸の海は、生活排水に含まれるチッソやリンが流れこんで富栄養化の影響を受けています。二枚貝が水を濾す働きには、その環境を保つ側面もあります。同じ二枚貝のカキも、1個が1日に約400リットルの海水を濾すと言われます。

食べ残しは偽糞になる

吸いこんだ粒のうち食べきれなかった分は、粘液で固めて外へ出されます。これを偽糞と呼びます。偽糞はゴカイやカニの餌になるので、アサリが多い干潟は他の生き物も養う場になります。

どこで会える

河川水が入る内湾の干潟

会いやすいのは、河川水が流れこんで塩分がやや低い内湾の干潟です。潮が引いた砂泥をかき分けると、浅いところに埋まっています。

同じ干潟に住む生き物

同じ砂泥底には腹を底につけて暮らすマハゼもいます。マハゼは多毛類や甲殻類、貝や小魚を食べる魚で、水中の粒を濾しとるアサリとは餌のとり方が違います。ただし無関係ではありません。マハゼをはじめ干潟の底魚の消化管からは、アサリの水管が見つかることが多いと報告されています。

縄文から食べられてきた

日本や朝鮮半島南部では古くから食用にされ、縄文時代の貝塚からも殻が数多く出土します。江戸時代にはアサリ売りが街を回っていたと伝えられます。旬は産卵前の春から夏とされますが、流通は年間を通してあります。

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参考

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