ズキンアザラシ

哺乳類

ズキンアザラシは北極海と北大西洋に住む大型のアザラシです。オスは頭にある袋を2通りに膨らませ、音を出して相手に伝えます。授乳は平均4日で、哺乳類の中でもっとも短いとされます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:アザラシ科 Phocidae
  • 属:ズキンアザラシ属 Cystophora
  • 種:ズキンアザラシ Cystophora cristata

和名・英名

  • 和名:ズキンアザラシ(頭巾海豹)
  • 英名:Hooded seal

名前の由来は頭の袋

ズキンアザラシ属にはこの1種しかいません。属名の Cystophora はギリシャ語で「袋を持つもの」を意味し、オスの頭にある袋から付けられました。和名の「頭巾」も頭からかぶったように見える袋を指しています。英名の Hooded seal、別名の bladdernose seal も同じ特徴から来ています。

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大きさ・分布などの基本データ

大きさ(オス)体長 平均2.6m(最大3.5m)/体重 300〜410kg
大きさ(メス)体長 約2.03m/体重 145〜300kg
生まれたとき体長 約1m/体重 約24kg
体色(成体)銀色に暗い不規則な斑点。頭は体より暗く、斑点が無い
分布北極海と北大西洋。流氷の上と深い海
食べ物端脚類(エビに近い小さな甲殻類)・オキアミ・魚・イカ・貝など
繁殖3月中旬〜4月初めに氷の上で1頭を産む。授乳は平均4日
寿命30〜35年
天敵シャチ、ホッキョクグマ、ニシオンデンザメ(北の海の大型のサメ)
保全状況IUCN EN(絶滅危惧・2025年評価)

※ IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅リスクを評価した国際的なリストです。「EN」は絶滅危惧の区分のひとつで、絶滅のおそれが高いことを示します。

オスだけが膨らませる黒とピンク

頭の袋がしぼんで垂れ下がったズキンアザラシの剥製
Ziko van Dijk, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(ケーニヒ博物館の剥製)

頭からかぶったような黒い袋

オスの頭にある袋は、よく伸び縮みする鼻腔(鼻のおくの空間)が正体です。頭のてっぺんから鼻にかけて伸び、メスにはありません。普段は黒くしぼんで垂れ下がっています。

左の鼻孔から押し出すピンクの膜

成熟したオスはこの袋を内側から押し出すこともできます。すると左の鼻孔から風船のような膜が飛び出し、こちらはピンク色をしています。黒い袋とピンクの膜は別の器官ではなく、同じ袋を膨らませる向きが違うだけです。

鼻の風船は音を出す道具

4歳から使えるようになる袋

水に潜る直前の息を吸ったとき、袋は膨らみ始めます。泳いでいる間もしぼませたり膨らませたりを繰り返します。オスは4歳ごろから、この袋を持つようになります。

ピンクの膜を揺らすと、さまざまな音が出ます。水の中にいるときと陸の上にいるときで、出る音は変わります。

求愛より争いに使う音

膜が出す音のうち、求愛に使われるのは約12%にとどまります。多くは争いの場面で使われます。脅威を感じたときや、餌と休む場所をめぐって競うときに膨らませます。

音は相手を追い払うだけの道具ではありません。自分の健康状態と優位さを、ほかのオスとメスの両方へ伝えているとされます。

氷の上で育つ4日間

氷の上にいるズキンアザラシの子
NOAA Fisheries, Public domain, via Wikimedia Commons(セントローレンス湾)

知られている中でもっとも短い授乳

母親が乳を与えるのは平均4日です。これより短く乳を与える哺乳類は知られていません。その間に子は1日およそ7kgずつ増え、体重は倍以上になります。生まれたばかりの人の赤ちゃん2人分ほどの重さが、毎日積み上がっていきます。

牛乳の脂肪分は3.8%ほどです。ズキンアザラシの母乳はその16倍にあたる60%あります。

青灰色の毛で生まれる

3月中旬から4月初めにかけて、氷の上で1頭が生まれます。生まれたときの体長は約1m、体重は約24kgです。胎児のときの毛は母親の腹の中で落としてくるため、青みがかった灰色の毛をまとって出てきます。子の腹は薄いクリーム色。この毛から「ブルーバック」と呼ばれ、14か月ほどで生え変わります。

水深600mまで降りて餌をとる

餌場は海の深いところ。水深100mから600mで、潜っている時間は5分から25分です。記録には1,016mより深く、52分より長く潜った例もあります。1,016mは東京スカイツリーを1本半つないだ高さより深い数字です。

潜水はほぼ切れ目なく続き、昼も夜も時間のおよそ90%を水の中で過ごします。昼の潜水は夜より深く長く、冬の潜水も夏より深く長くなる傾向があります。

メヌケに偏った食べ方

餌は端脚類やオキアミ、そして魚です。記録されている魚には次のものがあります。

  • ニシン
  • カラフトシシャモ
  • オヒョウ
  • ホッキョクダラ
  • メヌケ(体の赤い深い海の魚)

食べたものに占めるメヌケの割合は、近い種の3倍あります。カラフトシシャモは冬によく食べる魚です。タコやイカ、ヒトデや貝も口にします。

単独で暮らし繁殖期と換毛期に集まる

北大西洋と北極海に広がる分布と繁殖地を示した地図
Mirko Thiessen, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(分布図)

ほかのアザラシと比べて社会性が乏しく、攻撃的で縄張り意識が強いとされます。1年の大半は1頭で過ごします。

繁殖期と、毛が生え変わる換毛期にだけまとまります。換毛は6月から8月にかけて進み、7月ごろにはデンマーク海峡の近くへ集まります。この2つの時期には餌をとらず、絶食して過ごします。タテゴトアザラシと混ざった群れを作ることもあります。

4か所に分かれた繁殖地

主なところは次の4か所です。

  • セントローレンス湾
  • ニューファンドランド島の東(「フロント」と呼ばれる海域)
  • デービス海峡(グリーンランドとカナダ北部の間)
  • ヤンマイエン島付近の「ウエストアイス」

オスによって違う交わり方

交尾の時期ははっきりしていません。1頭のメスを長く守り続けるオスもいれば、短い期間に多くのメスと交わるオスもいます。メスは3歳から6歳、オスは5歳から7歳で子を残せる体になるとされます。

幼獣の毛皮が狙われた

青みがかった灰色をした幼獣の毛皮
Mickey Bohnacker, Presse-Fotograf, Frankfurt/Main, Public domain, via Wikimedia Commons(幼獣の毛皮「ブルーバック」)

革と脂肪から子の毛皮へ

1940年代より前に目当てとされたのは、大人の革と脂肪でした。肉は食用に、脂肪は燃料に、毛皮は革製品に使われました。以前は生殖器が滋養強壮の薬として売られたこともあります。

その後は子の毛皮に需要が移ります。青と黒の毛皮が珍重されたため、守ろうとした母親も多く殺されました。

ホッキョクグマ
ホッキョクグマは、北極の氷の上で暮らす、世界最大のクマです。「シロクマ」とも呼ばれます。白く見える体で氷の海を歩き、アザラシを狩って生きています。地球温暖化で北極の氷が減り、絶滅が心配されている動物でもあります。分類と学名分類階層界:動物界...

北東大西洋では60年で85〜90%減った

減り方は海域によってまるで違います。北西大西洋の個体群(同じ地域にまとまって暮らす集団)は、安定しているか増えています。一方で北東大西洋では、60年で85〜90%減りました。

今の主な脅威は狩猟と、漁の網にかかってしまう混獲です。狩猟はグリーンランドやカナダ、ロシアやノルウェーで行われています。

ソナーが原因という説は裏づけられていない

海岸へ次々と打ち上げられる座礁の理由として、かつてソナーが疑われていました。飼育された個体に1kHzから7kHzの音を当てる試験が重ねられています。人の耳にも聞こえる高さの音です。

試験の結果、影響はほとんど見られませんでした。どの個体でも最初に音を浴びたときにだけ差が出ました。潜水が減ったり、探るように速く泳いだりする反応が見られました。

2025年に絶滅危惧種となった

保護の枠組みはいくつかあります。アメリカでは1972年の海洋哺乳類保護法が適用されています。漁の量などを話し合う北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)という国際的な取り決めもあります。

それでも国際自然保護連合は2025年の評価で、この種を絶滅危惧(EN)に指定しました。北極に住むアザラシ3種が絶滅に近づいている、という判断の一部です。

シャチ
シャチは、世界中の海にすむ哺乳類です。白と黒のもようと高い背びれを持ち、群れで自分より大きなクジラも狩る、海の食物連鎖の頂点に立つ動物です。分類上はイルカのなかまで、そのなかで最大の種にあたります。分類と学名分類階層界:動物界 Animal...

参考

画像出典

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