ベニズワイガニ

甲殻類・軟体動物

ベニズワイガニは、日本海の水深1,000〜2,000mを中心とする深海で暮らすカニです。ズワイガニに近い仲間で、茹でると鮮やかな紅色になります。オスが漁獲できる大きさに育つまで、およそ10年かかります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:短尾下目(カニ下目) Brachyura
  • 科:ケセンガニ科 Oregoniidae
  • 属:ズワイガニ属 Chionoecetes
  • 種:ベニズワイガニ Chionoecetes japonicus Rathbun, 1932

和名・英名

  • 和名:ベニズワイガニ(紅楚蟹)
  • 英名:Red snow crab
  • 地方名:紅ガニ(鳥取県)、赤ガニ(富山湾)

佐渡沖の1匹から始まった記録

最初の標本は、1906年にアメリカの海洋調査船アルバトロス号が、佐渡沖の水深960mで採集した1匹です。この個体をもとに、アメリカの海洋生物学者メアリー・ラスバンが1932年に新種として記載しました。記載とは、論文で特徴を記して学名を付け、発表することです。学名の japonicus は「日本の」という意味です。

当時の日本ではまだ存在が知られておらず、1950年に但馬沖で採集された11匹をもとに、山本孝治が和名を付けました。ただ富山湾では、それより前の1941年から「赤ガニ」と呼ばれ、網で獲られていました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ成体の甲羅の幅は、オスで5.9〜12.5cm、メスで5.2〜8.2cm
分布北海道から島根県沖の日本海、オホーツク海、銚子より北の本州太平洋沿岸
生息環境日本海では水深400〜2,700mの深海。中心は1,000〜2,000m
食べ物イカ・エビやカニなどの甲殻類・小さな貝・小魚
寿命オスは少なくとも10年以上と考えられている
保全状況IUCN:未評価(NE)。日本では国が毎年、資源の量を調べる対象

水深1,000mを超える深海に暮らすズワイガニの仲間

日本海では水深400〜2,700mに分布

生息域は、北海道から島根県沖にかけての日本海の深海です。オホーツク海や、銚子より北の本州太平洋沿岸にもいます。日本海では水深400〜2,700mに広く分布し、特に多いのは1,000〜2,000mです。富士山の高さのおよそ4分の1から半分に当たる深さの海底です。

海底に降りてからは、あまり遠くへ移動しません。標識を付けて放流した調査では、成体でも移動距離はせいぜい50〜60kmで、大半は10km以内にとどまりました。

マリンピア日本海の水槽で飼育されている生きたベニズワイガニ。細長い脚を広げている
Totti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ズワイガニより深い海の、殻の柔らかいカニ

同じ属のズワイガニとは、体の形も大きさもよく似ています。違いの一つは暮らす深さで、ベニズワイガニのほうが深い海にいます。

ベニズワイガニズワイガニ
暮らす深さズワイガニより深い。日本海では中心が水深1,000〜2,000mベニズワイガニより浅い
殻柔らかく、冷凍には向かないベニズワイガニより硬い
メスの漁獲全面禁漁漁期を限って獲られる地域がある
ズワイガニ
松葉ガニ・越前ガニと呼ばれるズワイガニは、ヤドカリに近いタラバガニと違い正真正銘のカニ。脚が10本の理由、オスとメスで名前が変わるわけ、深海での暮らしまで。

イカや甲殻類を食べ、魚に食べられる

胃の中から見つかるイカ、エビ、カニ

胃の中身を調べると、イカのほかにエビ・カニ・ヨコエビなどの甲殻類や小さな貝、小魚が見つかります。他のカニがいない深さの個体からもカニが出てくることがあります。そこから、仲間や脱皮した殻を食べる共食いの可能性も指摘されています。

稚ガニを狙う深海の魚

海底に降りたばかりの稚ガニは、アゴゲンゲやヤマトコブシカジカといった深海の魚に食べられます。大きくなった個体も、エイの仲間のドブカスベに捕食されることが知られています。

オスは約10年かけて漁獲サイズに育つ

最後の脱皮で成体になる

ベニズワイガニは、海中を漂う3段階の幼生期を経て、甲羅の幅3〜4mmの稚ガニになり海底に降ります。その後は脱皮を繰り返して大きくなります。ある大きさで「成熟脱皮」と呼ばれる最後の脱皮をすると成体(大人の体)になり、それ以上は脱皮しません。

最後の脱皮をする大きさには幅があります。メスが成熟する大きさは、海域や水深によって違い、餌の多さが影響すると考えられています。

国立科学博物館に展示されたベニズワイガニの標本
Daderot, CC0, via Wikimedia Commons

脱皮の回数と、長い育ちの時間

甲羅の幅9cm(12齢)まで8.7年以上

カニには年齢を示す体の目印が見つかっておらず、野生の個体の年齢は分かっていません。飼育した結果では、オスが漁獲できる甲羅の幅9cmに育つまでに、8.7〜10.2年かかりました。これは脱皮を重ねて数える成長段階の12番目(12齢)に当たり、甲羅の幅は大人の手のひらほどです。メスが成熟を始めるまでにも、7.2年以上かかります。

最後の脱皮から後の寿命

飼育下のオスは、最後の脱皮から4年で54%、5年で73%が死にました。育つまでに8年以上かかることと合わせると、オスは少なくとも10年以上生きると考えられています。

メスは約2年、卵を抱き続ける

メスは最後の脱皮をした後に卵巣が育ち、初めての産卵をします。主な産卵期は2〜4月です。産んだ卵を約2年かけて抱き、1年おきに産卵します。

メスを獲らない「かにかご」漁

1941年の富山湾から始まった漁

日本海のベニズワイガニ漁は、1941年に富山県で、海底に網を張ってかからせる底刺し網で獲られたのが始まりです。1962年に「かにかご」を使う漁法が開発され、1964年には全ての船がかご漁に切り替えました。今では、他の魚の漁で一緒にかかる分(混獲)を除き、ほとんどがかごで獲られています。鳥取県によると、漁は9月から翌年6月まで、水深800mより深い海で行われます。

メスは全面禁漁、オスは甲羅9cm以下を獲らない

国の決まり(省令)により、メスは全面禁漁です。オスも甲羅の幅9cm以下は獲れません。ただ、かごを沈める時間が短いとメスがオスより多くかかることがあり、放されたメスの多くはその後に死にます。

かごを4日以上沈めておくと、メスは全てかごから抜け出します。7日以上なら、甲羅の幅9.5cm以下の小さめのオスも抜け出します。そのため水産研究・教育機構は、できれば1週間以上、少なくとも4日以上かごを置くことが望ましいとしています。

日本と韓国が同じ海で獲る資源

日本の漁は、国が許可する沖合の水域と、県が許可する各県の沖の水域に分かれています。2024年の漁獲量は国の許可水域が5,561トン、県の許可水域が5,053トンで、合わせて約1万トンでした。同じ年、韓国は28,456トンと、日本の2倍以上を水揚げしています。

日本海の群れの分布域は、その大部分が日本と韓国の船がともに漁をする水域と重なります。ただ、韓国船の漁の詳しい情報は公開されていません。

加工に回る紅色のカニ

境港は水揚げ量が全国一

ベニズワイガニの水揚げ量が全国一なのは、鳥取県の境港です。地元では「紅ガニ」と呼ばれ、名前のとおり鮮やかな紅色をしています。

新潟県長岡市の寺泊の魚市場に並ぶ、紅色のベニズワイガニ
ひでわく, CC BY-SA 2.1 jp, via Wikimedia Commons

捨てる所がほとんどない利用法

ベニズワイガニは殻が柔らかく、冷凍には向きません。水揚げされたカニは加工工場で茹でられ、直売所などで売られます。境港の周りには加工施設が集まり、脚の身(棒肉)や爪の身、かにみそなどの冷凍食品が作られています。

殻も捨てられず、キチン・キトサンという物質の原料に使われます。キチンは、エビやカニの殻を作る成分です。

カニ【総合】
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参考

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