ダイオウグソクムシ

深海甲殻類

ダイオウグソクムシは、深い海の底に住む世界最大級のダンゴムシの仲間です。陸のダンゴムシやワラジムシと同じ等脚類が、深海で大きく育ったものにあたります。海に沈んだ生きものの死骸を食べる掃除屋で、何年も食べずに生きた記録でも知られます。鎧のような殻をまとった姿から、深海の人気者になっています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:等脚目 Isopoda
  • 科:スナホリムシ科 Cirolanidae
  • 属:オオグソクムシ属 Bathynomus
  • 種:ダイオウグソクムシ Bathynomus giganteus

和名・英名

  • 和名:ダイオウグソクムシ
  • 英名:Giant isopod

名前の由来

「グソクムシ(具足虫)」は、体を覆う殻を武士の鎧(具足)に見立てた名です。「ダイオウ(大王)」は、その仲間のなかでもとりわけ大きいことをあらわします。英名の Giant isopod も、そのまま「巨大な等脚類」という意味です。日本近海には、ひとまわり小さいオオグソクムシも住んでいます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約20〜40cm(最大で50cm近く)
分布大西洋西部・メキシコ湾・カリブ海の深海
生息環境水深 約170〜2100mの海底(多くは400〜700m)
食べものおもに生きものの死骸(腐肉食)
寿命およそ6〜8年と推定される
仲間ダンゴムシ・ワラジムシと同じ等脚類

体のつくり ― ダンゴムシの巨大版

ダイオウグソクムシの体の側面(節と体色)
Eric Polk, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ダンゴムシ・ワラジムシの仲間

等脚類とは

ダイオウグソクムシは、等脚目という大きなグループに属します。等脚とは、よく似た形の脚がそろっていることをさす言葉です。その名のとおり、体の下には7対の脚が並んでいます。陸に住むダンゴムシやワラジムシ、海のフナムシも、この等脚類の仲間です。

名前に「ムシ」とつきますが、昆虫ではありません。エビやカニ、ダンゴムシと同じ甲殻類の一種です。昆虫の体が頭・胸・腹の3つに分かれるのに対し、この仲間は多くの節が連なった体をしています。海の底をゆっくりと歩き回る、深海の甲殻類です。

深海で大きくなった体

身近なダンゴムシは、体長わずか1cmほどです。同じ仲間でありながら、ダイオウグソクムシは40cm近くにまで育ちます。深海の生きものが陸や浅い海の近縁種より大きく育つ現象は、「深海巨大症」と呼ばれています。低い水温や餌の少ない環境が関わると考えられていますが、はっきりした理由は分かっていません。

ものさしと並べたダイオウグソクムシ(大きさの比較)
Eric Polk, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

鎧のような殻と大きな目

硬い殻と丸まる体

体は、いくつもの節に分かれた硬い殻に覆われています。人のような背骨はなく、体を支えるのは外側の硬い殻(外骨格)。この殻は、外敵や深海の高い水圧から身を守る鎧でもあります。成長のときには、古い殻を脱ぎ捨てる脱皮を繰り返します。危険を感じると、ダンゴムシと同じように体を丸めて身を守ります。薄紫や淡いピンクがかった体色も、この仲間の特徴です。

暗い海を見る複眼

頭には、左右に大きな複眼があります。複眼は小さな目が集まったつくりで、その数は4000近くにのぼるとされます。光のほとんど届かない深海で、わずかな明かりも捉えるための目です。落ちてきた餌をいち早く見つけるのにも、この大きな目が役立つと考えられています。頭の先には長い触角ものびています。暗闇のなかで匂いや水の動きを感じ取る、大切な感覚器です。

深海の掃除屋

深海の海底を歩くダイオウグソクムシ
Expedition to the Deep Slope 2006, NOAA-OE, Public domain, via Wikimedia Commons

死骸に群がる

海底の掃除屋

ダイオウグソクムシは、海に沈んできた死骸を主に食べます。クジラや魚、イカなどの死骸に、匂いをたどって集まります。深海では、餌が滅多に手に入りません。落ちてきた餌を見逃すことはありません。こうして死骸を片付ける姿から、「深海の掃除屋」とも呼ばれる存在です。死骸は、多くの深海の生きものを養う貴重な食べものになります。

一度にたくさん食べる

餌にありついたときには、腹いっぱいになるまで食べます。大きな胃に食べものをため込み、しばらくの飢えに備えます。動けなくなるほど食べた個体が見つかることもあります。いつ次の死骸が落ちてくるか分からない、深海ならではの食べ方です。

何年も食べない記録

ダイオウグソクムシは、驚くほど長いあいだ食べずに生きられます。日本の水族館では、5年以上も餌をとらずに生きた個体が記録されています。餌をとらない間も、体重があまり減らないことが観察されています。深海の低い水温のもとで、体の働きを抑え、少ないエネルギーで過ごすためと考えられています。ただし、なぜここまで飢えに耐えられるのかは、いまだ詳しく分かっていません。深海の暮らしに残された、大きな謎の一つです。

繁殖と、人とのかかわり

卵を腹で育てる

卵を守り育てるのは、メスの腹にある「育房」という袋です。卵は袋のなかでふ化し、親と似た姿の子として外へ出てきます。深海での詳しい暮らしぶりには、まだ分かっていないことも多く残されています。幼い個体が見つかることはまれで、その成長には今も多くの謎が残されています。

水族館の人気者

ダイオウグソクムシは、深海生物ブームの主役として親しまれてきました。ほとんど動かず、長く食べない不思議な姿が、多くの人の興味を引いてきました。ぬいぐるみや食玩などのグッズも、数多く作られています。東アジアでは、珍しい食材として食べられることもあるそうです。

日本のオオグソクムシ

日本の近海には、近縁のオオグソクムシが住んでいます。相模湾や駿河湾などの深海に住む、体長10〜15cmほどの種です。ダイオウグソクムシよりひとまわり小さく、日本の水族館でもよく見られます。産地の一部では唐揚げなどにして食べられ、その味はエビやカニにたとえられることもあります。同じ属の仲間として、姿もよく似ています。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Giant isopod」― 分類・形態・分布・食性・繁殖・絶食の各節
  • 鳥羽水族館 生きもの図鑑「ダイオウグソクムシ」― 飼育記録(長期絶食)
  • WoRMS(世界海洋生物種目録)「Bathynomus giganteus」― 分類・学名の確認

画像出典

サムネイル画像: NOAA, Public domain, via Wikimedia Commons

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