オオサンショウウオは、きれいな川にすむ、世界最大級の両生類です。最大で全長150cmにもなり、国の特別天然記念物に指定されています。数千万年ものあいだ、ほとんど姿を変えていない「生きた化石」としても知られます。目は小さく、皮ふで水の動きを感じ取りながら、夜の川で獲物を待ち伏せます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:両生綱 Amphibia
- 目:有尾目 Urodela
- 科:オオサンショウウオ科 Cryptobranchidae
- 属:オオサンショウウオ属 Andrias
- 種:オオサンショウウオ Andrias japonicus
和名・英名
- 和名:オオサンショウウオ(漢字で「大山椒魚」)
- 英名:Japanese giant salamander(日本の巨大サンショウウオ)
別名・名前の由来
「山椒魚」という名は、体から山椒に似た匂いを出すことにちなむ、とされています。地方によっては「ハンザキ」「ハンザケ」とも呼ばれます。これは「体を半分に裂いても生きている」という言い伝えに由来する、と言われます。もちろん、実際に裂かれて生きるわけではありません。学名の japonicus は「日本の」という意味で、日本の固有種であることを表します。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 最大 全長150cm(野生では50〜70cmほどが多い) |
|---|---|
| 分布 | 本州(岐阜県以西)・四国・九州の一部(日本固有種) |
| 生息環境 | 水のきれいな川の上流〜中流 |
| 食べもの | 肉食(魚・カニ・カエル・水生昆虫など) |
| 寿命 | 野生で10年以上/飼育下で51年の記録 |
| 保全状況 | IUCN: VU(危急)/国の特別天然記念物 |
世界最大級の両生類

最大150cm、野生では50〜70cmほど
オオサンショウウオは、最大で全長150cmにまで育つとされます。これは、いま生きている両生類のなかでも、世界で3番目に大きな体です。より大きいのは、近い仲間のチュウゴクオオサンショウウオなどだけです。ただし、150cmは大きく育った記録です。野生では全長50〜70cmほどのものが多く見られます。
ゆっくり育ち、とても長生き
これほど大きくなるまでには、長い年月がかかります。オオサンショウウオは、ゆっくりと時間をかけて育つ生きものです。寿命は野生でも10年をこえ、飼育下では51年も生きた記録があります。大きな体と長い寿命は、水のきれいな川で静かに生きてきた証でもあります。
「生きた化石」と、皮ふの呼吸

数千万年、姿を変えていない
オオサンショウウオの仲間は、大昔からほとんど姿を変えていません。数千万年前の地層からも、よく似た化石が見つかっています。長い時間をこえて、古い形のまま生き続けてきたのです。このことから、「生きた化石」とも呼ばれます。
ぶよぶよの皮ふで息をする
オオサンショウウオの体には、ぶよぶよとした皮ふのヒダがあります。とくに首から体の横にかけて、大きなヒダが目立ちます。このヒダには、大切な役目があります。
ヒダで表面積を広げる
オオサンショウウオは、皮ふをとおして水中の酸素を取りこみます。これを「皮ふ呼吸」といいます。体の横のヒダは、皮ふの面積を広げるはたらきをします。面積が広いほど、多くの酸素を取りこめるのです。えらを持たない大人にとって、この皮ふ呼吸はとても重要です。
ときどき水面で空気も吸う
皮ふ呼吸だけでなく、空気を吸うこともあります。ときおり鼻先を水面に出して、空気を取りこみます。ただし陸には上がらず、頭だけを水面に出して息をします。一生のほとんどを、水の中で過ごす両生類なのです。
小さな目と、皮ふのセンサー

目はとても小さく、視力は弱い
「オオサンショウウオの目はどこ?」と、よく聞かれます。目は、平たい頭の上のほうに、点のように小さくついています。まぶたはなく、とても小さいため、見つけにくいのです。じっさい、オオサンショウウオの視力はとても弱いとされます。にごった川底の暗がりでは、目はあまり役に立ちません。
体じゅうのセンサーで水を感じる
目が弱いかわりに、オオサンショウウオは皮ふで水を感じます。頭から尾まで、体の表面には特別な感覚のつぶがならんでいます。この「側線(そくせん)」というしくみで、水のわずかな動きを感じ取ります。近くを通った魚が起こす水の揺れも、これでとらえます。目に頼らず、体全体で「見て」いるような生きものです。
夜の川の、待ち伏せハンター

昼は巣穴、夜に動きだす
オオサンショウウオは、夜行性の生きものです。昼のあいだは、水辺に掘った巣穴や岩のかげでじっと休みます。あたりが暗くなると、川底をゆっくりと動きはじめます。ふだんの動きは、とてもゆったりとしています。
近づいた獲物を、一気に丸のみ
動きはにぶそうですが、狩りのときは違います。獲物が近づくと、大きな口を一気に開けて、水ごと吸いこみます。魚・カニ・カエル・水生昆虫など、口に入るものを丸のみにします。皮ふのセンサーで獲物の動きを察し、目の前に来た瞬間をとらえるのです。待ち伏せて、確実にしとめるハンターです。
オスが卵を守る「ヌシ」の子育て

オスが川辺に産卵巣を掘る
繁殖の季節が近づくと、オスは川辺に横穴を掘ります。これが、卵を産むための「産卵巣」になります。よい産卵巣を作れる場所はかぎられています。そのため、大きくて強いオスだけが、巣を持つことができます。巣を構えたオスは、「ヌシ」と呼ばれます。
8月下旬から9月、数珠状の卵
産卵は、8月下旬から9月ごろに行われます。ヌシは、巣にメスを招き入れて卵を産ませます。卵は、ひもでつながった数珠(じゅず)のような形で、400〜500個ほど産まれます。このとき、こっそり別のオスが巣に入りこむこともあります。ひとつの巣で、複数のオスが受精にくわわることもあるのです。
ヌシが尾で水を送り、卵を守る
尾で新しい水を送る
卵を産ませたあと、メスは巣を去ります。巣に残るのはヌシのオスで、卵の世話をつづけます。ヌシは尾を動かして、卵に新しい水を送ります。これは、卵にきれいな酸素をとどけるための行動です。汚れがたまってカビが生えるのを、こうして防ぎます。
幼生も、春まで見守る
卵がかえったあとも、ヌシは幼生を守りつづけます。幼生が巣から散っていくまで、オスはしばらく番をつづけます。母親でなく、父親が子の世話をするのです。大きな体のヌシは、次の世代を支える大切な役目をになっています。
チュウゴクオオサンショウウオとの交雑問題
よく似た外来種
オオサンショウウオによく似た仲間に、チュウゴクオオサンショウウオがいます。中国から食用などのために持ちこまれ、日本の川に放されたものがいます。姿がとても似ていて、見分けはかんたんではありません。頭やのどにある「イボ」の並び方などが、見分けの手がかりになります。在来のオオサンショウウオは、イボが大きく数も多いとされます。
交雑で、在来の遺伝子が失われる
雑種が生まれ、純粋な在来種が減る
この外来種は、在来のオオサンショウウオと交雑してしまいます。生まれた雑種は、どちらの純粋な種でもありません。京都市の賀茂川では、在来種がほぼ失われた可能性も指摘されています。これは「遺伝子のよごれ」とも呼ばれる、深刻な問題です。
特定外来生物に指定
国は、チュウゴクオオサンショウウオを特定外来生物に指定しました。この指定には、在来種との雑種も含まれます。飼育や川への放流は、法律で規制されています。よく似た2種が混ざり合うことは、日本固有の宝を静かに危うくしています。
どこで会える?
生きたオオサンショウウオは、いくつかの水族館で見られます。京都水族館など、飼育・展示に力を入れる施設が知られています。夜行性なので、昼はじっと動かないことも多いものです。野生では、水のきれいな川の上流にすんでいます。特別天然記念物に指定されているため、見つけても捕まえたり傷つけたりすることは禁じられています。生息地であるきれいな川を守ることが、この生きた化石の保全につながります。
参考
- Wikipedia(英語版)「Japanese giant salamander」(大きさ・皮ふ呼吸・側線・繁殖とヌシの子育て・交雑)
- Wikipedia(日本語版)「オオサンショウウオ」(分布・産卵・寿命・特別天然記念物・特定外来生物)
- IUCN Red List:Andrias japonicus(保全状況 VU)/文化庁(特別天然記念物)
画像出典
サムネイル画像: Salamandra2021, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

