マダコは、日本でもっともなじみ深いタコです。刺身やたこ焼き、酢だこなど、食卓でおなじみの種です。岩場の巣穴にひそみ、体の色を変えて隠れる、賢く警戒心の強い生きものでもあります。3つの心臓や青い血など、タコらしさの詰まった代表的なタコです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:軟体動物門 Mollusca
- 綱:頭足綱 Cephalopoda
- 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
- 科:マダコ科 Octopodidae
- 属:マダコ属 Octopus
- 種:マダコ Octopus sinensis
和名・英名
- 和名:マダコ(真蛸)
- 英名:East Asian common octopus(東アジアのマダコ)
名前の由来と、近年の変化
「マダコ(真蛸)」の「真」は、代表的な・本来のという意味です。数あるタコのなかでも、基準となる存在であることを表します。かつて日本のマダコは、ヨーロッパのマダコ(Octopus vulgaris)と同じ種とされていました。しかし研究が進み、2017年ごろに別種として区別されました。姿はよく似ていますが、腕の吸盤の数などに違いがあります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約60cm・体重 2〜3kgほど(大きいもので数kg) |
|---|---|
| 分布 | 日本・朝鮮半島・中国の沿岸(温帯の浅い海) |
| 生息環境 | 岩場や砂れきの海底。岩のすき間や穴を巣にする |
| 食べもの | 肉食(カニ・貝・エビなど) |
| 寿命 | およそ1〜1.5年と短い |
| 人との関わり | 日本を代表する食用ダコ。旬は夏と冬 |
タコらしさが詰まった体

骨のない体と、8本の腕
狭いすき間に入りこむ
マダコの体には、骨がありません。硬い部分は、口にあるくちばしだけです。そのため体を自在に変形させ、驚くほど狭いすき間にも入りこめます。くちばしさえ通れば、どんな穴にも入れるといわれます。この柔らかさが、岩場での隠れ場所さがしに役立ちます。
吸盤で味わい、探る
8本の腕には、たくさんの吸盤が並びます。この吸盤は、ものに吸いつくだけの器官ではありません。表面には味やにおいを感じる細胞があり、触れたものの味を確かめられます。岩の割れ目に腕を差し入れ、見えない獲物を探り出すのも吸盤の働きです。腕は器用に動き、道具のように使われます。
3つの心臓と、青い血
マダコの心臓は、3つ。中心の1つが全身へ血を送り、残りの2つがえらへ血を送ります。血液は青みがかっていて、これは血の中に銅をふくむ成分があるためです。この青い血は、酸素を運ぶ力があまり高くありません。そのため、酸素の多い冷たい海を好みがちです。
色を変え、道具を解く賢さ
まわりに溶けこむ変色
マダコは、皮ふの色や模様をすばやく変えられます。岩や砂の色に合わせた、みごとな変わり身です。敵から身を隠すときも、獲物にしのび寄るときも、この変色が役立ちます。皮ふの表面には、色を出す小さな袋がびっしりと並びます。その袋を伸び縮みさせることで、一瞬で見た目が変わります。
ビンを開ける知能
マダコは、無脊椎動物のなかでもとくに賢い種として、よく研究されてきました。ふたの閉まったビンを開けて中のえさを取り出す姿も観察されています。タコの仲間には、簡単な迷路を解いたり、人の顔を見分けたりするものもいるとされます。巣のまわりに貝殻や石が集まることもあり、「タコの庭」と呼ばれます。この賢さを支えるのは、大きな脳と、腕に広がる神経です。
岩場の暮らしと、狩り

巣穴にひそむ狩人
マダコは、岩のすき間や穴を巣にして暮らします。昼は巣にひそみ、おもに夜に活動して獲物をさがします。えものは、カニやエビ、貝などです。大きなウツボなどに狙われる立場でもあり、巣は敵から身を守る場所にもなります。警戒心が強く、危険を感じると墨をはいて逃げます。
貝やカニを、くちばしで
殻を割り、毒で弱らせる
マダコは、腕で獲物をつかまえ、口のくちばしで殻をかみ割ります。硬いカニの甲羅や貝の殻も、この強いくちばしで砕きます。さらに、唾液には毒がふくまれ、獲物を弱らせる働きがあります。貝には小さな穴をあけ、そこから毒を注ぎこむこともあるとされます。力ずくと毒を、たくみに使い分ける狩人です。
食べかすで巣が分かる
マダコは、獲物を巣に持ち帰って食べることがよくあります。そのため、巣の入り口には食べかすがたまります。割れたカニの甲羅や貝殻の山は、そこにマダコがいる目印になります。この食べかすの山を、研究者は手がかりにして巣を見つけます。人が蛸壺で漁をするのも、巣にこもる習性を利用したものです。
一度きりの、命がけの繁殖
メスは卵を守って死ぬ
数珠状の卵を、巣の天井に
メスは、岩の下や巣穴の天井に卵を産みつけます。卵はひもでつながり、数珠のような形でぶら下がります。その数は、数万から十数万個。まとまった卵の房は、白い花のようにも見えます。メスは、この卵を安全な巣の中で守ります。
食べずに守り、力尽きる
産卵を終えたメスは、卵のそばを離れません。新しい水を送って酸素をとどけ、汚れを払いのけて世話をします。その間はほとんど餌をとらず、体を消耗させていきます。そして卵がかえるころ、メスは力尽きて一生を終えます。オスも交尾のあと、やがて死をむかえます。
短い一生
マダコの一生は、およそ1〜1.5年ほどと短いものです。生まれた稚ダコの多くは、大きくなる前に食べられてしまいます。生き残ったものだけが親となり、次の世代へ命をつなぎます。短い一生を全力で生きる、それがマダコの生き方です。
食べられる? 日本の食卓の主役

刺身・たこ焼き・酢だこ
マダコは、日本を代表する食用のタコです。刺身・寿司・たこ焼き・酢だこ・煮だこなど、料理は数えきれません。ゆでると身が赤くしまり、こりこりとした歯ごたえになります。旬は夏と冬の二回あるとされ、地域によって旬の時期が異なります。関西の明石だこなど、産地ごとのブランドも知られています。
蛸壺や釣りでとる
マダコをとる方法は、いくつかあります。古くからあるのが、巣にこもる習性を利用した蛸壺です。海底に沈めた壺に、マダコが自分から入りこみます。近年は、疑似餌を使ったタコ釣りも人気です。身近な海の岩場に、私たちのよく知るこのタコが暮らしています。
タコのなかまを、まとめて知る

関連ページ

参考
- Wikipedia(英語版)「Octopus sinensis」「Common octopus」(分類・体のつくり・知能・生態)
- Wikipedia(日本語版)「マダコ」(分布・繁殖・食用)
- 各水産研究機関・水族館の資料(生態・漁業)


