イイダコ

甲殻類・軟体動物

イイダコは、手のひらにのるほど小さなタコです。名前の「飯蛸(いいだこ)」は、メスの胴に詰まった卵が、米の飯のように見えることに由来します。波の穏やかな内湾の砂泥にすみ、貝殻を隠れ家にする習性で知られます。卵を持ったメスは「子持ちイイダコ」と呼ばれ、古くから食用として親しまれてきました。

スポンサーリンク

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 科:マダコ科 Octopodidae
  • 属:Amphioctopus(メジロダコと同じ属)
  • 種:イイダコ Amphioctopus fangsiao

和名・英名

  • 和名:イイダコ(飯蛸)/別名コモチダコ・イシダコなど
  • 英名:Webfoot octopus(水かきのあるタコ)

名前の由来

「飯蛸」の名は、産卵前のメスの胴に卵がぎっしり詰まり、米飯のように見えることに由来します。方言では「コモチダコ(子持ち蛸)」とも呼ばれます。学名にふくまれる ocellatus(旧学名)は「眼状紋のある」という意味です。腕のつけ根に、目のような丸い模様があることにちなみます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 最大30cmほど(手のひらサイズの小型ダコ)
分布日本・朝鮮半島・中国の沿岸(東アジアの内湾)
生息環境波の穏やかな内湾の砂泥底。貝殻を隠れ家にする
食べもの肉食(小さなカニ・貝・エビなど)
産卵期冬から春(この時期が食用の旬)
人との関わり古くからの食用ダコ。とくに子持ちが好まれる

名前の由来 ― 卵が「飯」のように

イイダコ
砂地のイイダコ(Totti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

米飯のように詰まった卵

マダコより大粒の卵

産卵が近づくと、メスの胴の中は卵でいっぱいになります。ふくらんだ胴を割ると、米粒のような卵がびっしり詰まっています。この見た目が、「飯蛸」という名前の由来です。イイダコの卵は、マダコの卵よりずっと大きく、ちょうど米粒ほどの大きさがあります。一つひとつが大きいぶん、卵の数はマダコより少なめです。大きな卵から生まれる子は、はじめから海底で暮らせる体つきをしています。海をただよう時期を持たず、小さな親のような姿で泳ぎ出します。

「子持ちイイダコ」の見分け方

卵を持ったメスは、「子持ちイイダコ」と呼ばれます。冬から春にかけて、胴が丸くふくらんだものが子持ちです。頭のように見える部分が、まるく張っているのが目印になります。この卵の詰まった胴が、イイダコの食用としての人気を支えてきました。産卵期のイイダコが、もっとも好まれる時期です。

眼状紋で見分ける

イイダコには、姿を見分ける手がかりもあります。腕と腕のあいだのひだに、金色の環のような模様が2つあります。また、両目のあいだには、四角い模様が見られます。この金の環と四角い模様が、よく似たほかの小型のタコと区別する目印です。眼のように見える模様には、敵を驚かせる役目があるとも考えられています。体の表面には、小さないぼのような突起が多く見られます。

貝殻を隠れ家にする暮らし

貝殻に隠れるイイダコ
二枚貝の殻に収まるイイダコ(Daiju Azuma, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons)

波の穏やかな内湾に

イイダコがすむのは、波の穏やかな内湾の砂泥底です。岩や石が点在する、浅い海を好みます。潮のよく通う海底で、群れをつくらず一匹ずつ暮らします。岩礁を好むマダコとは、暮らす場所が異なります。おもに海底の小さなカニや貝などを食べる、底ぐらしのタコです。マゴチやエソなどの大きな魚に、獲物として狙われる立場でもあります。

貝殻やゴミにひそむ

隠れ場所の少ない砂泥地で、イイダコは貝殻を隠れ家にします。二枚貝の殻や巻き貝のからに、体を丸めて入りこみます。海底に落ちた空き缶やビンも、格好のすみかです。見つけた貝殻は、のちに卵を産む産室としても使われます。同じ属には、ヤシの殻を運んで使うメジロダコがいます。ものを隠れ家に利用する習性は、この仲間に共通するもののようです。

命がけの子育て

貝殻の中で、卵を守る

石の間や、貝殻の中に

産卵期は、冬から春にかけてです。メスは、石のすき間や貝殻の中に卵を産みつけます。卵は半透明で、長いところで4mmほどの大きさです。これは、多くのタコの卵よりもずっと大きなものです。数は少なくても、大きな卵からしっかりした子が生まれます。

メスは食べずに、死をむかえる

卵を産んだメスは、そのそばを離れません。新しい水を送り、汚れを払いのけて卵を守り続けます。その間はほとんど餌をとらず、体を消耗させていきます。そして卵がかえるころ、メスは力尽きて一生を終えます。多くのタコと同じ、一度きりの命がけの子育てです。

食べられる? 古くからの食用ダコ

イイダコの料理
漁で捕らえられたイイダコ(松岡明芳, Public domain, via Wikimedia Commons)

たこ飯・おでん・子持ち

イイダコは、沿岸で古くから食べられてきたタコです。丸ごと煮つけたり、おでんの具にしたりして味わいます。とくに人気なのが、卵の詰まった子持ちイイダコです。ゆでると胴の卵が固まり、うずらの卵のような食感になるとも言われます。噛むと、卵のつぶつぶとした舌ざわりが広がります。小さな体を、頭から足まで丸ごと楽しめるタコです。瀬戸内海の沿岸などでは、冬から春の味覚として親しまれてきました。

変わった釣り方

貝殻好きを利用した漁

イイダコをとる方法にも、その習性が生かされています。貝殻に入りこむ性質を利用し、殻をつないだ仕掛けを海に沈めます。すると、イイダコが自分から殻の中に入りこみます。狭い場所に隠れたがる習性を、たくみに利用した漁のやり方です。堤防からのテンヤ釣りも、人気があります。

ラッキョウの球根で釣る

イイダコ釣りには、変わった仕掛けが使われてきました。白いラッキョウの球根や、肉の脂身をかぎに付けて誘うのです。白くて丸いものに、イイダコが抱きつく性質を利用しています。カニなどを模した疑似餌でも、よく釣れます。身近な海の堤防で楽しめる、親しみやすいタコ釣りです。

タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(英語版)「Amphioctopus fangsiao」(分類・分布・卵・生態)
  • Wikipedia(日本語版)「イイダコ」(名前の由来・眼状紋・繁殖・食用・漁)
  • 各水産研究機関・水族館の資料(生態・漁業)

画像出典

サムネイル画像: Totti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

タイトルとURLをコピーしました