トラフカラッパは、ヤシの実を半分に割ったような、丸い甲羅をもつカニです。大きなはさみを顔の前でたたむと、体はなめらかな卵形になります。缶切りのようなはさみで巻貝を割って食べることや、砂にもぐって隠れる暮らしで知られます。
分類と学名
トラフカラッパは、エビやカニと同じ十脚目のなかの、カラッパ科に含まれます。カニのグループである「カニ下目(かにかもく)」に属する、本当のカニの仲間です。カラッパ科には、世界に約100種が知られています。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:節足動物門 Arthropoda
- 綱:軟甲綱 Malacostraca
- 目:十脚目 Decapoda
- 下目:カニ下目 Brachyura
- 科:カラッパ科 Calappidae
- 種:トラフカラッパ Calappa lophos
和名・英名
- 和名:トラフカラッパ(虎斑カラッパ)
- 英名:Box crab/Shame-faced crab(箱ガニ・恥ずかしがりのカニ)
名前の由来
「カラッパ」は、インドの言葉で「ヤシの実」を意味するといわれます。その名のとおり、ヤシの実を半分にしたような丸い甲羅が由来です。「トラフ(虎斑)」は、はさみに入る虎のような黒い筋模様にちなみます。英名の Box crab は箱のような形から、Shame-faced crab は顔を隠すような姿からついた名です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 甲羅の幅10〜15cmほど(カラッパ類では大型) |
|---|---|
| 分布 | インド洋西部から西太平洋。日本では東京湾以南 |
| 生息環境 | 水深30〜200mの砂底・砂泥底 |
| 食べ物 | 巻貝・甲殻類・魚の死がいなど(肉食) |
| 活動 | 夜行性(日中は砂にもぐる) |
| 近い仲間 | ヤマトカラッパ・メガネカラッパなど(カラッパ類) |
ヤシの実のような体
トラフカラッパの見た目は、ほかのカニとはずいぶん違います。丸くふくらんだ甲羅と、体の前をおおう大きなはさみが、この仲間ならではの姿をつくっています。

丸いドーム状の甲羅
甲羅は、半球形のドームのように丸くふくらんでいます。表面はなめらかで、全体は横に広い形です。甲羅には放射状のうねが走り、内側の体を守る丈夫なつくりになっています。体の色は茶褐色で、はさみには虎のような黒い筋が入ります。この筋模様が、和名「トラフ」のもとになりました。
顔を隠すたたむはさみ
前面をふさぐ平たいはさみ
左右のはさみは大きく、平たい形をしています。このはさみを体の前でぴったりとたたむと、顔や口のあたりがおおわれます。すると、体の前面が一つの面のようになり、全体がなめらかな卵形に見えるのです。丸い甲羅と合わさって、石ころのような姿になります。
英名の由来
はさみで顔を隠したような姿から、英語では「シェイムフェイスト・クラブ(恥ずかしがりのカニ)」と呼ばれます。両手で顔をおおっているように見えることが、その名のもとになりました。この姿は、はさみで体を守り、目立たなくするためのものと考えられています。平たいはさみは、柔らかい体の前をおおう盾の役目もはたします。標本になっても、はさみをたたんだままの姿で展示されることが多いです。丸い体は、砂の上で外敵に気づかれにくくもしています。
缶切りのようなはさみで貝を割る
トラフカラッパは、硬い殻をもつ巻貝を割って食べます。そのために、片方のはさみが特別な形をしているのが特徴です。

右のはさみの突起
缶切りのような突起
右のはさみのつけ根には、缶切りの刃のような、歯状の突起があります。巻貝を捕まえると、この突起を殻の入り口にひっかけます。そして、殻のふちを少しずつ削るように割っていきます。硬い殻をもつ巻貝も、この道具のようなはさみで開けてしまいます。左右のはさみは役割が違い、右で殻を割り、左で身をおさえて食べるといわれます。
殻をらせんに割る
巻貝の殻は、らせんを描いて巻いています。トラフカラッパは、その巻きに沿って、ふちを少しずつ割り開いていきます。まるで缶切りで缶を開けるように、殻をらせん状にむいていきます。こうして中身をとり出して食べる、器用な食べ方をします。
肉食のカニ
トラフカラッパの食べ物は、巻貝だけではありません。ほかの甲殻類や、海底に沈んだ魚の死がいなども食べる肉食のカニです。なかでも、殻をもつ巻貝は大切な餌の一つとされます。夜になると、砂の中から出てきて、餌となる巻貝などを探し回ります。硬い獲物を割る力と道具をもつことが、この暮らしを支えています。ほかのカニが手を出しにくい硬い貝を食べられることは、この仲間の特徴の一つです。
砂に潜む暮らし
トラフカラッパは、昼と夜で暮らし方が大きく変わります。日中は砂に隠れ、夜になると活動する、夜行性のカニです。
日中は砂に潜る
体を半分うめて隠れる
明るいうちは、トラフカラッパは砂の中に体を半分ほどうめて隠れています。丸い甲羅だけが、砂の上にわずかに出ている状態です。平たいはさみと丸い体は、砂にもぐるのにも都合のよい形です。平たい歩脚で砂をかき、体をしずめるようにして、すばやくもぐりこみます。こうして敵の目をのがれ、じっと夜を待ちます。
夜に貝を探す
日が暮れると、砂から出てきて活動します。目当ては、砂の中や海底にいる巻貝などです。これらを探して、海底を歩き回ります。昼は隠れ、夜に動くことで、天敵に見つかりにくくしていると考えられています。餌をとるのも、外敵をさけるのも、この夜の時間が中心です。
どこに住むか
トラフカラッパは、インド洋の西部から西太平洋にかけての、暖かい海に分布します。日本では、東京湾より南の海で見られます。住みかは、水深30〜200mほどの、砂や砂泥の海底です。同じ砂底には、ヤマトカラッパなど、近い仲間のカラッパ類も暮らしています。カラッパ類はどれも丸い甲羅とたたむはさみをもちますが、甲羅やはさみの模様で見分けられます。トラフカラッパは、はさみに入る虎斑の筋で、ほかの種と区別されます。
人とのかかわり
トラフカラッパは、漁でとられることはありますが、あまり知られていないカニです。その変わった姿から、目にすると印象に残る一種です。
底引き網と食用
トラフカラッパは、砂底を引く底引き網などで、ほかの魚とともにとられます。食用として広く出回ることは少ないものの、毒はなく、身は甘くて味がよいとされます。産地では、地元で味わわれることもあります。底引き網には、まとまって入ることもあるといいます。また、丸くて変わった甲羅は、飾りや工芸品に使われることもあります。水族館では、砂にもぐるようすや、丸い姿を観察できる人気者の一つです。
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参考
- トラフカラッパ(市場魚貝類図鑑・ぼうずコンニャク)分類・生態・食味
- トラフカラッパ(沖縄美ら海水族館 生き物図鑑)形態・名前の由来・生態
- トラフカラッパ(Zoobrary)外見・はさみの特徴
画像出典
- アイキャッチ:(c) TonyT, CC BY 4.0, via iNaturalist
- 本文の写真(博物館の標本):SSR2000, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- はさみの写真(博物館の標本):SSR2000, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


