フェレットは、野生のイタチを家畜にした動物です。細長いしなやかな体をもち、古くは巣穴のウサギを狩る相棒として飼われてきました。学名の一部「フーロ」は「泥棒」を意味し、これが英語名フェレットのもとになったとされます。現在は、さまざまな毛色をもつ愛玩動物として親しまれています。
分類と学名
フェレットは、哺乳綱の食肉目のなかの、イタチ科イタチ属に含まれる動物です。学名は Mustela putorius furo といいます。野生のヨーロッパケナガイタチを家畜にしたもので、野生の種ではありません。イヌやネコと同じように、人が長い時間をかけて飼いならしてきた動物です。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:イタチ科 Mustelidae
- 種:フェレット Mustela putorius furo(ヨーロッパケナガイタチの家畜型)
和名・英名
- 和名:フェレット
- 英名:Ferret(domestic ferret)
名前の由来
学名の Mustela putorius furo は、ラテン語で「イタチ」「悪臭」「泥棒」を意味する言葉からできています。最後の furo(泥棒)が、英名フェレットの語源になったとされます。獲物の隠れた巣穴に、こっそり忍びこむ姿から付いた名だと考えられています。「悪臭」の部分は、イタチ科がもつ独特のにおいを表しています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長35〜50cmほど、体重0.7〜2kg(オスが大きい) |
|---|---|
| 分布 | 野生には存在しない家畜(世界各地で飼育) |
| もとの種 | ヨーロッパケナガイタチ(ヨーロッパの森や草地) |
| 食べ物 | 肉(完全な肉食動物) |
| 寿命 | およそ6〜8年 |
| おもな毛色 | セーブル・アルビノ・シナモンなど |
フェレットはどんな動物か
フェレットは、イタチの仲間らしい細長い体をもちます。毛色には多くの種類があり、見た目の違いも楽しまれています。
細長くしなやかな体
フェレットの体は、細長くて胴が長く、脚は短めです。この体つきは、獲物を追って狭い巣穴に入るのに向いています。背骨が柔らかく、体をくねらせて、狭いすき間も通り抜けます。頭胴長は35〜50cmほどで、オスのほうがメスより大きくなります。
さまざまな毛色
フェレットの毛色は、品種改良によって多くの種類が生まれました。茶色っぽいセーブル、目が赤く体の白いアルビノ、明るい茶色のシナモンなどが知られています。同じフェレットでも、毛色によって見た目の印象が大きく変わります。もとになった野生のケナガイタチは、こげ茶と黄色みのまじった一色でした。

狩りの相棒だった家畜のイタチ
フェレットは、もともと愛玩用ではなく、狩りの道具として飼われてきました。その歴史は、数千年前までさかのぼるとされます。

野生のケナガイタチから
フェレットのもとになったのは、ヨーロッパケナガイタチという野生のイタチです。ステップケナガイタチという別の種も、家畜化にかかわった可能性が指摘されています。どちらにせよ、野生のイタチを人が飼いならしたのがフェレットです。
家畜化は三千年前とも
フェレットが飼われはじめた正確な時期は、はっきりとは分かっていません。一説では、およそ三千年前から飼育されてきたと考えられています。古代ギリシャの哲学者アリストテレスも、飼われたイタチらしき動物を書き残しています。長い歴史のなかで、人の手で少しずつ家畜へと変えられてきました。
エジプト起源説は確かめられていない
フェレットには、古代エジプトで飼われはじめたという説も、よく語られます。しかし、これを裏づける確かな証拠は見つかっていません。もとになったケナガイタチは、そもそもアフリカには住んでいない動物です。そのため、エジプト起源説は俗説の可能性が高いとみられています。飼育の始まりは、ヨーロッパやその周辺だったと考えるのが自然です。
ウサギ狩り「フェレッティング」
フェレットは、巣穴に潜むウサギやネズミを狩るために飼われてきました。細い体を生かして巣穴に入り、中の獲物を外へ追い出します。追い出された獲物を、人が網や犬で捕らえるしくみです。この狩りは「フェレッティング」と呼ばれ、イギリスやオーストラリアでは今も行われています。狩りの相棒としての役割が、フェレットの体つきをつくってきました。

完全な肉食動物
フェレットは、肉だけを食べて生きる完全な肉食動物です。野生のイタチと同じく、体は肉を食べることに合わせてできています。

肉を食べるための体
フェレットの口には、獲物をとらえるためのとがった歯が並びます。腸は短く、肉を手早く消化するつくりになっています。植物を消化する力は弱く、野菜や果物はうまく栄養にできません。この体は、野生で小動物をとらえて食べてきた名残です。
高たんぱく・高脂肪の食事
フェレットには、たんぱく質と脂肪の多い食事が向いています。飼育下では、フェレット専用に作られた餌が与えられます。もともと肉を食べてきた動物なので、肉に近い成分の餌を必要とします。栄養の偏りは、体調に響きやすいとされます。
炭水化物が苦手
いっぽうで、フェレットは炭水化物や食物繊維の消化を苦手とします。穀物の多い餌や甘いものは、体に負担をかけることがあります。腸が短く、こうした栄養を分解するしくみが十分でないためです。肉食に特化した体は、その分だけ食べられるものが限られています。
一日の大半を眠る
フェレットは、一日のうち14〜18時間ほどを眠って過ごします。もともとは、朝夕の薄暗い時間に活発になる動物です。起きているあいだは、よく遊び、活発に動きまわります。長い眠りと、活発な遊び。その差の大きさも、フェレットの特徴です。
イタチ特有のにおい
フェレットは、イタチの仲間らしい独特のにおいをもちます。このにおいは、体のしくみと深くかかわっています。
肛門腺から出るにおい
フェレットのにおいは、体の一部にある分泌のしくみから生まれます。イタチの仲間は、こうしたにおいを仲間との合図や身の守りに使ってきました。
においの正体
強いにおいのもとは、肛門の近くにある肛門腺です。イタチやスカンクのなかまは、この腺から、においの強い液を出します。驚いたときや、身を守るときに使われるものです。加えて、皮膚の脂もにおいのもとになります。
臭腺を除いた個体
欧米では、この肛門腺を手術で取り除いたフェレットが多く流通してきました。日本で売られている個体も、その多くが臭腺を除いた状態です。臭腺を取っても、皮膚の脂によるにおいは残ります。強いにおいはおさえられても、まったく無臭になるわけではありません。
ニュージーランドで野生化したフェレット
家畜のフェレットも、外に逃げ出せば野生の暮らしにもどることがあります。その代表的な例が、ニュージーランドで起きています。
逃げ出して増えたフェレット
ニュージーランドでは、かつて増えすぎたウサギを減らす目的で、フェレットが持ちこまれました。ところが放されたフェレットは野生化し、在来の鳥を襲うようになりました。ニュージーランドには、地上で暮らす飛べない鳥が多く、こうした鳥が狙われます。もともと天敵の少なかった島の鳥にとって、フェレットは大きな脅威となっています。日本でも、逃げたフェレットが自然に入りこむことが心配され、侵入生物として記録されています。
人とのかかわり
フェレットは、狩りの相棒から、しだいに愛玩動物へと役割を変えてきました。日本でも、イヌやネコとは違う魅力をもつ動物として飼われています。

人になれる愛玩動物
フェレットは、人によくなれる動物として知られています。好奇心が強く、遊び好きな性格をしています。飼育下での寿命は6〜8年ほどで、イヌやネコよりは短めです。日本では、臭腺と生殖の手術を済ませた個体が、多く売られています。
飼育で気をつけたいこと
フェレットは肉食動物なので、専用の餌をそろえる必要があります。また、年をとると、副腎の病気やすい臓の腫瘍などにかかりやすいことが知られています。細い体を生かして、思わぬすき間から逃げ出すこともあります。飼うには、こうした習性や体の特徴を、あらかじめ知っておくことが欠かせません。
参考
- フェレット Mustela putorius furo(Wikipedia日本語版)家畜化の歴史・学名・エジプト説・フェレッティング
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「フェレット」野生化・在来種への影響
- 各獣医・動物病院の解説(完全肉食・臭腺・寿命・かかりやすい病気)
画像の出典
- アイキャッチ(顔):Aurélien Mora, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 野生のヨーロッパケナガイタチ:Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 頭骨の標本:Wagner Souza e Silva / Museum of Veterinary Anatomy FMVZ USP, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 白いフェレット(アルビノ):Electo84, CC0, via Wikimedia Commons
- 飼育されるフェレット:David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


