センザンコウは、体じゅうが硬いうろこにおおわれた、めずらしい哺乳類です。歯をもたず、長い舌でアリやシロアリをなめとって暮らします。危険が近づくと、体を丸めてボールのようになって身を守ります。うろこや肉を目当てに狙われ、世界でもっとも密猟される動物ともいわれます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:鱗甲目(センザンコウ目)Pholidota
- 科:センザンコウ科 Manidae
- 現生:1科で8種(アジアに4種・アフリカに4種)
和名・英名
- 和名:センザンコウ(穿山甲)
- 英名:Pangolin
名前の由来
漢字では「穿山甲」と書きます。「山を穿つ(つらぬく)よろいの獣」という意味で、硬いうろこをまとって穴を掘る姿にちなむとされます。英名の Pangolin は、マレー語で「丸まるもの」を指す言葉がもとになったといわれます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 種によって幅があり、頭胴長 約30〜85cm。体重 約1〜33kg |
|---|---|
| 分布 | アフリカとアジアの熱帯・亜熱帯。森林やサバンナ |
| なかま | 現生8種(アジア4種/アフリカ4種)。日本にはいない |
| 食べ物 | おもにアリとシロアリ |
| 活動 | 多くは夜行性。地上でも樹上でも暮らす種がいる |
| 保全状況 | 8種すべてが絶滅危惧。ワシントン条約で国際的な取引が禁止 |

うろこに包まれた唯一の哺乳類
体をおおう角質のうろこ
うろこは爪と同じ成分
センザンコウの体は、頭から尾まで、硬いうろこでおおわれています。このうろこは、人のつめや髪の毛と同じ、ケラチンという成分でできています。全身がうろこにおおわれた哺乳類は、世界でセンザンコウだけです。魚類や爬虫類とはまったく別の系統でありながら、よく似たよろいを身につけた、めずらしい獣です。かたく重なりあったうろこは、外敵の歯や爪から体を守るよろいの役目をはたします。
腹だけは柔らかい
うろこは背中や尾、手足の外側をおおいますが、腹側と手足の内側には生えていません。そこだけは、柔らかい肌がむき出しになっています。だからこそ、身を丸めて腹を隠す姿勢が、身を守るうえで大切になります。うろこの一枚一枚は、体が大きくなるにつれて入れかわりながら育ちます。
歯がなく、長い舌でなめとる
センザンコウには、かむための歯がありません。そのかわりに、細長い舌をもち、これを使ってアリやシロアリをなめとります。飲みこんだ獲物は、砂や小石とともに、角質でおおわれた丈夫な胃の中ですりつぶされます。歯のかわりを胃がはたす、変わったつくりの動物です。

アリとシロアリを食べる暮らし
爪でアリ塚をこわす
体長より長い舌
センザンコウの舌は、驚くほど長く、体長をこえる種もいます。舌のつけ根は口の奥ではなく、胸の奥深くまでのびています。ねばりけのある舌をアリの巣穴に差しこみ、奥にいるアリやシロアリをからめとります。前足には強くて長い爪があり、これで硬いアリ塚や朽ち木をこわして、獲物を掘り出します。食べ終えると、長い舌は口の中にたたみこまれます。一晩に、数万匹ものアリやシロアリを食べることもあるとされます。
石を飲んで胃ですりつぶす
歯がないセンザンコウは、獲物をかまずに丸ごと飲みこみます。このとき、小石や砂もいっしょに飲みこみます。胃の中では、これらの石が獲物とすれ合い、すりつぶす役目をはたします。鳥が砂ぎもで種をすりつぶすのと、よく似たしくみです。
夜の森や地中で暮らす
多くのセンザンコウは夜行性で、昼は地中に掘った巣穴や樹洞で休みます。オオセンザンコウのように地上で暮らす種もいれば、オナガセンザンコウやキノボリセンザンコウのように木の上で暮らす種もいます。木にのぼる種は、長い尾を枝に巻きつけて体を支えます。同じなかまでも、暮らす場所は種によってさまざまです。

丸まって身を守る
硬いボールになる
センザンコウは、走るのも速くなく、するどい牙ももちません。そのかわり、危険がせまると、頭を腹にうずめて体を丸めます。全身が、うろこの硬いボールになります。柔らかい腹を隠し、外側はうろこのよろいだけを見せる姿勢です。ライオンのような大きな肉食動物でも、この球を開くのは難しいとされます。英名 Pangolin の「丸まるもの」という語源も、この守り方に由来するといわれます。

いろいろなセンザンコウ
アジアとアフリカの8種
現生のセンザンコウは、全部で8種です。アジアには、インドセンザンコウ・ミミセンザンコウ・パラワンセンザンコウ・マレーセンザンコウの4種がいます。アフリカには、キノボリセンザンコウ・オオセンザンコウ・サバンナセンザンコウ・オナガセンザンコウの4種がいます。森林に暮らす種もいれば、名前のとおりサバンナで暮らす種もいます。大きさの幅は広く、体重1キログラムほどの小さな種から、30キログラムをこえるオオセンザンコウまでいます。なかでも中国や東南アジアで暮らすミミセンザンコウは、とくに多く密猟され、数を大きく減らしてきました。
アルマジロとの違い
よろいをまとった姿から、センザンコウはよくアルマジロとまちがえられます。しかし、この二つはまったく別のなかまです。アルマジロのよろいは骨からできた板ですが、センザンコウのよろいはケラチンのうろこです。遠くはなれた系統でありながら、どちらもアリを食べ、身を守るためによく似たよろいを身につけました。同じような暮らしから、似た姿が生まれた例だと考えられています。
世界一密猟される動物
うろこと肉を狙われて
センザンコウは、うろこと肉を目当てに、長いあいだ大量に捕られてきました。うろこは薬の材料として、肉は食材として、おもにアジアで高く取り引きされてきました。近年は、うろこを財布やベルトなどの革製品に使う動きもみられます。その数はぼう大で、世界でもっとも密猟される哺乳類とも呼ばれています。この10年ほどで、100万頭をこえるセンザンコウが密輸されたとの推計もあります。いまでは8種すべてが絶滅危惧とされ、ワシントン条約によって国際的な取引が禁じられています。
うろこに薬効はあるのか
センザンコウのうろこは、古くから薬になると信じられてきました。しかし、うろこの成分は、人のつめや髪と同じケラチンです。特別な薬の効き目を裏づける確かな証拠は、見つかっていません。それでも高値で売れるために密猟が続き、この動物を追いつめる大きな理由になっています。いっぽうで、各地の団体が、生息数の調査や保護区づくりに取り組んでいます。
センザンコウの豆知識
子を尾に乗せて運ぶ
センザンコウは、ふつう1回に1頭の子を産みます。生まれたばかりの子は、うろこがまだ柔らかく、母親が守りながら育てます。母親は、子を尾のつけ根や背中に乗せて運ぶことが知られています。危険がせまると、母親は子ごと丸まって、体でつつみこんで守ります。子は生まれてから数か月を母親とともに過ごし、やがて独り立ちします。
恐竜ではなく哺乳類
うろこにおおわれた姿から、恐竜や爬虫類のなかまと思われることもあります。しかしセンザンコウは、子を乳で育てる哺乳類です。アリを食べる哺乳類には、ほかにアリクイやツチブタもいますが、うろこをもつのはセンザンコウだけです。アリを食べる暮らしに合わせて歯を失い、うろこのよろいをまとった姿は、長い進化の積み重ねの結果です。日本の動物園で飼育されている例は、ほとんどありません。
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参考
- ウィキペディア「センザンコウ」(分類・8種・形態・食性・分布・保全)
- IUCN Red List(センザンコウ各種の保全状況)
- ワシントン条約(CITES)附属書I(国際取引の禁止)
画像出典
- アイキャッチ・枝の上:Manis javanica — Frendi Apen Irawan, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 全身のうろこ:Pangolin (Gir Forest, India) — Sandip kumar, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- 地上を歩く姿:Manis javanica — Piekfrosch, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- 丸まった姿:Manis javanica — E. Jones, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 木にのぼる姿:Javan pangolin (Manis javanica) — Ari hidayat99, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


