ニホンジカ

鹿の子模様の若いニホンジカ 鯨偶蹄目(クジラ・ウシなど)

ニホンジカは、日本の森や里山に広く住む、大型の草食動物です。単に「シカ」と呼ばれることも多く、奈良公園のシカとしても親しまれています。オスだけが立派な角をもち、この角は毎年生えかわります。夏の毛には白い斑点が並び、「鹿の子模様」として知られています。

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分類と学名

ニホンジカは、哺乳綱の鯨偶蹄目(げいぐうていもく)のなかの、シカ科シカ属に含まれる動物です。学名は Cervus nippon といいます。ウシやカバと同じく、ひづめをもち、食べたものを反芻する仲間です。日本では北海道から九州まで、各地に亜種が分かれて住んでいます。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
  • 科:シカ科 Cervidae
  • 種:ニホンジカ Cervus nippon

和名・英名

  • 和名:ニホンジカ(シカ)
  • 英名:Sika deer

名前の由来

「シカ」という名の由来には、いくつかの説があります。古い言葉で鹿を指した「か」に由来するという説などが知られています。英名の Sika は、日本語の「シカ」がそのまま世界に広まったものです。学名の nippon も「日本」を指し、日本を代表するシカであることを表しています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長90〜190cm、体重25〜130kgほど(北ほど大型・オスが大きい)
分布北海道から九州まで日本各地、東アジアの一部
生息環境森林・草地・里山(山から人里の近くまで)
食べ物草・木の葉・どんぐり・樹皮など(草食)
寿命野生でおよそ10〜15年
保全状況IUCN: LC(軽度懸念)/国内はむしろ増加・食害が課題

ニホンジカはどんなシカか

ニホンジカは、すらりとした脚と、季節で変わる毛の色をもちます。オスとメスで、大きく見た目が違う動物です。

ニホンジカの母子と鹿の子模様
夏毛に並ぶ白い斑点が「鹿の子模様」。子ジカでとくにはっきりと目立つ

鹿の子模様と夏冬の毛

ニホンジカの夏毛は、明るい茶色に白い斑点が並びます。この斑点の模様は「鹿の子模様」と呼ばれ、木もれ日の下では体の輪郭をぼかす働きがあると考えられています。冬になると毛は灰色がかった褐色に変わり、斑点は目立たなくなります。季節によって毛の色と模様が変わる点が、ニホンジカの特徴です。

オスだけにある角

ニホンジカの角は、オスだけにあります。メスには角がなく、これがオスとメスを見分ける手がかりになります。角は頭の骨から伸びる骨質で、ウシの角とは違い、枝分かれするのが特徴です。この角は、繁殖期にオス同士が争うときの武器にもなります。

季節でめぐる角

ニホンジカの角の大きな特徴は、毎年生えかわることです。一年のなかで、角は落ちては生え直し、形を変えていきます。

春に落ちて生えかわる

ニホンジカの角は、春になると根もとから自然に落ちます。その後すぐに、新しい角が生えはじめます。生えかわる角は、季節を追って姿を変えていきます。

皮に包まれた袋角

生えはじめの角は、柔らかい皮膚におおわれています。この状態の角は「袋角(ふくろづの)」と呼ばれます。皮膚には血が通っていて、角はここから栄養を受け取って成長します。まだ柔らかく、傷つきやすい時期の角です。

袋角のニホンジカ
柔らかい皮膚におおわれた「袋角」。血が通い、ここから角が育つ

秋に硬くなる角

秋が近づくと、袋角をおおっていた皮膚がはがれ落ちます。中から、硬い骨質の角があらわれます。この硬い角で、オスは繁殖期に争います。角がもっとも立派になるのは、繁殖期を迎える秋です。

立派な角をもつニホンジカのオス
皮がはがれ、硬くなった秋の角。枝分かれの数は年齢とともに増える

年齢で増える枝分かれ

ニホンジカの角は、年齢とともに枝分かれの数が増えていきます。生まれて最初の角は、枝のない一本の棒のような形です。年を重ねるにつれ、二又・三又と枝が増えます。成獣では四つに分かれるのがふつうです。角の枝を数えると、そのオスのおおよその成長ぐあいが分かります。

秋の鳴き声と子育て

ニホンジカの繁殖期は、秋です。この時期のオスの鳴き声は、古くから日本の秋を告げる音として親しまれてきました。

秋に響くオスの声

秋の繁殖期になると、オスは高く細い声で鳴きます。メスを呼び、ほかのオスに縄張りを知らせるための声です。この「鹿の声」は秋の季語となり、百人一首にも「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の」と詠まれてきました。日本では古くから、秋を代表する音の一つとされてきました。

初夏に生まれる子ジカ

子ジカは、初夏のころに生まれます。ふつう一度に一頭を産み、生まれたときから鹿の子模様がはっきりと出ています。生まれてまもない子ジカは、草むらにじっと伏せて身を隠します。斑点の模様は、こうした草むらのなかで姿をまぎれさせるのに役立つと考えられています。

奈良のシカ

ニホンジカといえば、奈良公園のシカを思いうかべる人も多いでしょう。奈良のシカは、古くから特別な存在として守られてきました。

奈良公園のニホンジカ
奈良公園のニホンジカ。約1300頭が国の天然記念物として保護されている

春日大社の神の使い

奈良のシカは、春日大社の「神の使い(神使)」として、千年以上にわたり大切にされてきました。神が白い鹿に乗ってこの地にやってきたという伝承が、その由来と伝えられています。人をおそれず近づいてくるのは、長いあいだ人に守られてきた歴史があるためです。

白い鹿に乗ってきた神

言い伝えでは、春日大社の神が、遠くの鹿島(茨城県)から白い鹿に乗ってやってきたとされます。この伝承から、奈良では鹿が神の使いとして敬われるようになりました。神の使いであるため、かつては鹿を傷つけることが固く禁じられていました。奈良のシカが人のそばで暮らすのは、こうした歴史とつながっています。

天然記念物「奈良のシカ」

奈良公園とその周辺のシカは、1957年に国の天然記念物「奈良のシカ」に指定されました。現在、およそ1300頭が公園の一帯で暮らしています。野生の動物でありながら、人の観光とも深く結びついた、めずらしい存在です。ただし、あくまで野生動物です。鹿せんべい以外の食べ物を与えることは、健康を損なうため戒められています。

何を食べ、どこに住むか

ニホンジカは、植物を食べて暮らす草食動物です。日本各地の、さまざまな環境に住んでいます。

草を食べて反芻する

ニホンジカは、草や木の葉・どんぐり・樹皮などを食べます。一度飲みこんだ食べ物を口にもどし、もう一度かむ「反芻」をします。ウシと同じように、いくつもの部屋に分かれた胃で、硬い植物をゆっくり消化します。餌の少ない冬には、木の皮までかじって冬を越します。

北海道から九州までの亜種

ニホンジカは、日本各地で亜種に分かれています。北海道のエゾシカ・本州のホンシュウジカ・屋久島のヤクシカなど、地域ごとに大きさや毛色が少しずつ違います。北に住むものほど体は大きく、南の島のものほど小ぶり。同じニホンジカでも、地域によって姿に幅があります。

増えすぎるシカ

近年、ニホンジカは各地で数を増やし、農林業や自然への影響が問題になっています。身近な動物であると同時に、数のかたよりが課題となっています。

なぜ増えたのか

ニホンジカが増えた背景には、いくつかの理由が重なっていると考えられています。もともとの天敵が失われたことが、その一つです。

天敵オオカミの絶滅

かつて、ニホンジカの天敵はニホンオオカミでした。しかしニホンオオカミは、20世紀のはじめに絶滅したとされます。シカを襲う大型の天敵がいなくなったことが、数の増加につながったと考えられています。天敵の存在が、シカの数を抑えていたとみられています。

暖冬と人の暮らしの変化

近年は暖冬が増え、寒さや雪で死ぬ子ジカが減ったことも一因とみられています。加えて、山あいの畑が使われなくなり、狩る人も減りました。こうした人の暮らしの変化が、シカの増加を後押ししたと考えられています。複数の原因が重なっているため、対策も一つでは足りません。

農林業と自然への影響

数の増えたシカは、田畑の作物や、植えたばかりの木を食べてしまいます。森では、下草や若木が食べつくされ、山の植物が減る被害も起きています。植物が減ると、そこで暮らすほかの生きものにも影響がおよびます。各地では、数を調整する取り組みが続けられています。

シカの仲間

ニホンジカは、シカ科という大きなグループの一員です。この科には、世界に多くの仲間がいます。北の寒い地方のトナカイ、大きな体のヘラジカ、ヨーロッパのアカシカやダマジカ。いずれもシカ科の仲間です。なかでもトナカイは、シカ科では珍しく、オスとメスの両方が角をもちます。日本のニホンジカも、こうした仲間の一種です。

参考

  • ニホンジカ Cervus nippon(Wikipedia日本語版)分類・亜種・角・生態
  • 奈良のシカ/奈良県「奈良のシカ保護計画」神使の由来・天然記念物・頭数
  • 国立環境研究所 侵入生物データベース「ニホンジカ」分布・食害

画像の出典

  • アイキャッチ(鹿の子模様の若いシカ):Jakub Hałun, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
  • 母子と鹿の子模様:Daniel Lu(User:dllu), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 袋角:Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 硬くなった秋の角:Byrdyak, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 奈良公園のシカ:Martin Falbisoner, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
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