マルミミゾウ

長鼻目(ゾウ)

マルミミゾウは、アフリカ中西部の熱帯雨林で暮らすゾウです。サバンナのアフリカゾウより体が小さく、耳は丸く、牙はまっすぐ下を向きます。日本で会えるのは広島市安佐動物公園だけで、2025年には国内で初めて繁殖に成功しました。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:長鼻目 Proboscidea
  • 科:ゾウ科 Elephantidae
  • 属:アフリカゾウ属 Loxodonta
  • 種:マルミミゾウ Loxodonta cyclotis

和名・英名

  • 和名:マルミミゾウ(丸耳象)
  • 英名:African forest elephant

名前の由来

和名の由来は、丸みをおびた耳です。漢字では丸耳象と書きます。英名の African forest elephant は「アフリカの森のゾウ」の意味で、生息地に由来します。

学名 Loxodonta cyclotis は1900年に記載されました。長らくアフリカゾウの亜種として扱われてきましたが、DNAの解析が進み、今は別種とされています。この経緯はアフリカゾウのページで詳しく扱っています。

アフリカゾウ
アフリカゾウは、アフリカのサバンナで暮らすゾウです。現生の陸上動物では最も大きく、オスの肩の高さは3mを超えます。2021年には、森に住むマルミミゾウと別の種として評価されました。密猟の激しかった地域では、牙を持たないメスが半数を超えていま...

大きさ・分布などの基本データ

大きさ肩高 平均約2.16m(2015年の調査では成獣オスが平均2.2m、最大2.75m)
体重2015年の調査で成獣オス 平均約2t・最大3.5t(2.7〜6tとする資料もある)
分布アフリカ中西部の18か国(アンゴラ・ガボン・カメルーンなど)
生息環境熱帯雨林
食べもの葉・枝・樹皮・果実・種子など96種以上の植物。岩塩や泥も口にする
繁殖妊娠22か月/1回に1頭/初産は23歳ごろ/出産間隔5〜6年
保全状況IUCN:CR(近絶滅・2021年評価)
水に入るマルミミゾウ。下向きの牙が見える
水に入るマルミミゾウ。牙はまっすぐ下を向く。Matt Muir, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

サバンナゾウとの違い

森に合わせた体

丸い耳と、下向きの牙

マルミミゾウの耳は楕円形で、先が丸くなります。アフリカゾウ(サバンナゾウ)の耳とは形が違い、和名もここから付きました。

牙はまっすぐ下を向き、あまり湾曲しません。色はピンクがかり、サバンナゾウの牙より細く硬いとされます。

爪の数

マルミミゾウの爪は前足に5本、後ろ足に4本あります。サバンナゾウでは前足に4本、後ろ足に3本です。

マルミミゾウの肩高は平均2.16mほどで、サバンナゾウより一回り以上小さい体格です。

熱帯雨林の川を歩くマルミミゾウ
熱帯雨林の川を歩くマルミミゾウ。John P Friel, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

森を育てるゾウ

種子を運ぶ役目

1日346個の大型種子

マルミミゾウは96種以上の植物を食べます。果実を丸ごと食べ、消化されなかった種子は糞とともに出てきます。

調査では、1km²あたり1日平均346個の大型種子が運ばれていました。大型種子の約3分の1は、5km以上離れた場所まで届けられます。

種子散布に頼る樹木

コンゴ盆地のキュヴェット・サントラルでの調査があります。大型の樹木18種のうち14種が、マルミミゾウによる種子散布に頼っていました。

マルミミゾウは「森のメガガーデナー(大きな庭師)」と呼ばれます。

森の炭素を増やす歩き方

マルミミゾウは森を歩きながら小さな木を食べ、踏み倒していきます。この行動と森の炭素量の関係は、2019年の研究で調べられています。

小さな木が減ると、残った木は光や水や場所を取り合わずに済みます。結果として、本数は少なくても、幹の詰まった大きな木が育ちます。密度は1km²あたり0.5〜1頭が典型とされます。この場合、地上部のバイオマスは1ヘクタールあたり26〜60トン増える計算です。

この研究は、マルミミゾウが中央アフリカから完全に消えた場合の試算も出しています。森のバイオマスは7%減り、炭素にして30億トンが失われます。

森の空き地バイに集まるマルミミゾウの群れ
森の空き地「バイ」に集まるマルミミゾウ。Matt Muir, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

森の空き地「バイ」

ミネラル補給の場

泥と岩塩をなめる場所

熱帯雨林のなかには、木のない空き地が点在します。現地の言葉で「バイ(bai)」と呼ばれる場所です。地面や水にミネラルが多く含まれています。

マルミミゾウはこのバイに集まり、泥や岩塩を口にします。葉や果実だけでは足りない成分を補うためです。

集まっては離れる群れ

家族の群れは、ガボンのロペ国立公園では3〜8頭でした。ザンガ・サンガの保護区群では、20頭までの集まりも観察されています。

バイでは複数の群れが顔を合わせます。ただし群れは固定されていません。集まっては離れる離合集散(フィッション・フュージョン)の形をとります。

コンゴのオザラ・ココウア国立公園での観察では、ほかの群れが来ているときほど、ゾウはバイに長くとどまりました。

森を貫く道

マルミミゾウは、恒久的な道の網を森のなかに持っています。果実の木が生えた場所を通り、空き地とミネラルの供給地を結ぶ道です。

この道は、ほかの動物や人にも使われます。群れは1日に7.8kmほど移動し、行動圏は最大2,000km²におよびます。

マルミミゾウの母親と子ども
バイに現れた母子。Matt Muir, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

遅い繁殖と、回復の遅さ

繁殖のサイクル

初産年齢の差

メスが初めて子を産むのは23歳ごろです。妊娠期間は22か月で、その後も5〜6年に1頭しか産みません。生まれた子が乳離れするのは4〜5歳ごろです。マルミミゾウの寿命は60〜70年ほどです。

サバンナゾウは12歳ごろから産みはじめ、3〜4年に1頭を産みます。

回復にかかる時間

密猟などで数を減らした場合、回復には数十年が必要とされています。

日本で会える場所

安佐動物公園のメイとアオ

サバンナゾウとしての来園

日本でマルミミゾウを飼育しているのは、広島市安佐動物公園だけです。世界を見渡しても、飼育されている個体は3頭しかいません。

メスの「メイ」は2001年、推定2歳のときに西アフリカのブルキナファソから来園しました。当初はサバンナゾウとみられていました。マルミミゾウだと判定されたのは、10歳ごろになってからです。

オスの「ダイ」も、同じブルキナファソから山口県の秋吉台自然動物公園サファリランドへ渡ってきた個体です。繁殖のため、2022年に安佐動物公園へ移りました。

2025年8月5日の出産

2024年8月21日、メイの妊娠が確認されました。飼育下のマルミミゾウの妊娠が国内で確認されたのは、これが初めてでした。

2025年8月5日の早朝、メイはオスの子を産みました。日本で初めて生まれたマルミミゾウで、10月25日に「アオ」と名づけられました。繁殖の計画が始まってから、10年が経っていました。

飼育下でのマルミミゾウの出産については、海外を含めて記録した文献が1件もありませんでした。

マルミミゾウの分布図
マルミミゾウの分布(IUCN 2021年版にもとづく)。SanoAK: Alexander Kürthy, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

硬い象牙と、減り続ける数

個体数の減少

70万頭から3万頭未満への推移

マルミミゾウの数は、数十年のうちに約70万頭から10万頭を下回るまで落ちました。2013年までに、残るのは3万頭未満と見積もられています。

2021年の評価では、中央アフリカにかぎって直前の31年間に86%減ったとされました。IUCNレッドリストは2021年から、マルミミゾウを近絶滅(CR)としています。

硬い牙が狙われる理由

減少の理由は、象牙目当ての密猟と、生息地の消失です。マルミミゾウの象牙は硬いため彫刻に向き、闇市場で高い値が付きます。

日本の高級な撥(ばち)は、マルミミゾウの牙だけで作られてきました。

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参考

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