マンボウは、体の後ろがないような、ふしぎな姿をした大きな魚です。まるい体で海面をただよう姿から、多くの人に親しまれています。「とても弱く、すぐに死んでしまう魚」として語られることもあります。しかし、それはインターネットで広まった作り話で、本当のマンボウは丈夫な魚です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:フグ目 Tetraodontiformes
- 科:マンボウ科 Molidae
- 属:マンボウ属 Mola
- 種:マンボウ Mola mola
和名・英名
- 和名:マンボウ(漢字で「翻車魚」)
- 英名:Ocean sunfish(海の太陽の魚。海面で日なたぼっこする姿から)
名前の由来
学名の Mola は、ラテン語で「石臼(いしうす)」という意味です。丸くて平たい姿を、石臼に見立てたものです。英語の Ocean sunfish は、海面で日なたぼっこをする姿からつきました。マンボウは、フグやハリセンボンと同じ「フグ目」の仲間です。ふくらんだりはしませんが、フグに近い仲間の魚です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 大型個体で全長・体高とも3m前後・体重2.3tに達した例も(平均は全長1.8mほど) |
|---|---|
| 分布 | 世界の暖かい海。日本の近海でも見られる |
| 食べもの | クラゲのほか、小魚・イカ・甲殻類など(雑食に近い) |
| 寿命 | 飼育下で10年ほど。野生ではさらに長いとされる |
| 保全状況 | IUCN: VU(危急) |
半分の魚のような、ふしぎな姿

尾びれのない体と「舵びれ」
マンボウは、まるで魚の前半分だけを切り取ったような姿をしています。ふつうの魚にある尾びれが、ありません。体の後ろのふちには、ひらひらとした部分があります。これは「舵びれ(かじびれ)」と呼ばれ、泳ぐときの舵の役目をします。尾びれのかわりにできた、マンボウならではの体のつくりです。
背びれと尻びれで泳ぐ
マンボウは、上下に大きくのびた背びれと尻びれを持ちます。この2枚のひれを、左右に羽ばたくように動かして泳ぎます。鳥が空をはばたくのに似た、変わった泳ぎ方です。ゆったり泳ぐイメージがありますが、思いのほか速く泳げます。深く潜ることもあり、見た目より活発な魚です。
世界でも、とくに重い魚
体重2tをこえる巨体
マンボウは、骨のある魚(硬骨魚)のなかで、とくに重い魚のひとつです。大きな個体は、体重が2tを大きくこえることもあります。ずんぐりとした体で、車1台ほどの重さになるのです。マンボウの仲間は、みな大きく育つ海の大型魚です。
いちばん重いのは「ウシマンボウ」
ただし、いちばん重い硬骨魚は、マンボウそのものではありません。ごく近い仲間の「ウシマンボウ」のほうが、さらに重くなるとされます。2.3tという記録も、このウシマンボウのものです。長いあいだ両者は区別があいまいで、まとめて「マンボウ」と呼ばれてきました。世界一の座は、正しくはウシマンボウにあります。
マンボウの仲間(種類)
今のところ知られる5種
「マンボウ」とひとくちに言っても、その仲間(マンボウ科)には、いくつかの種類がいます。今のところ、生きているのは5種ほどが知られています。姿はどれも似ていますが、体つきや尾のあたりに違いがあります。
- マンボウ……いちばんよく知られた種。海面での日なたぼっこでおなじみです。
- ウシマンボウ……もっとも重くなる種で、硬骨魚では最大級。頭がこぶのように出っぱります。
- カクレマンボウ……2017年に新種として発表された種。長いあいだ見つからず「隠れていた」ことが名前の由来です。
- ヤリマンボウ……舵びれの中央が、槍(やり)のようにとがって突き出ます。
- クサビフグ……全長1mほどの小型種。体がやや細長く、くさびのような形をしています。
種類の区別は、近年やっと整理された
長いあいだ、マンボウの仲間は種類の区別があいまいでした。近年の研究で、少しずつ整理が進んでいます。カクレマンボウのように、最近になって見分けられた種もあります。姿がよく似ているため、見分けは専門家でもむずかしいのです。
「弱くてすぐ死ぬ」は本当か

ネットで広まった作り話
マンボウには、「とても弱く、ささいなことで死んでしまう」という話があります。「朝日がまぶしくて死ぬ」「水のあわで死ぬ」といった、たくさんの死に方が語られてきました。しかし、これらの多くは、インターネットで面白おかしく作られた話です。科学的な根拠のない、いわば「ネタ」として広まったものです。マンボウが特別に弱いという証拠は、見つかっていません。
本当は丈夫で、長生き
荒れた海も泳ぐ、力のある魚
実際のマンボウは、コピペで語られるような、ささいなことで死ぬ魚ではありません。荒れた海を泳ぎ、深く潜ることもできる、力のある魚です。ある水族館では、若いマンボウが15か月ほどで、体重を26kgから約400kgまで増やした記録もあります。10年以上飼われた例もあり、けっして「すぐ死ぬ」魚ではありません。
ただし飼育はやさしくない
とはいえ、まったく無敵というわけではありません。皮膚が傷つきやすく、ストレスや寄生虫にも弱いため、飼育がやさしい魚ではありません。冷たすぎる水や、クラゲとまちがえて食べるビニール袋も、大きな危険になります。ネットの「作り話の弱さ」と、この「本当の弱さ」は、分けて見る必要があります。
日なたぼっこと、寄生虫

海面での「日なたぼっこ」
マンボウは、海面にごろりと横たわって浮かぶことがあります。まるで昼寝をしているように見える、この行動は「日なたぼっこ」と考えられています。深く冷たい海に潜ってえさをとると、体はすっかり冷えてしまいます。そこで海面にもどり、太陽で体を温め直しているのです。
寄生虫を落とすため、とも
マンボウの体には、たくさんの寄生虫がつきます。海面で体を横たえるのは、鳥や小魚に寄生虫を食べてもらうためとも考えられています。海面から体を高くジャンプさせることもあり、これも寄生虫をふり落とす行動ではないかとみられています。日なたぼっこには、体温と寄生虫の両方の理由がありそうです。
何を食べる?
マンボウは、長いあいだ「クラゲを食べる魚」と考えられてきました。たしかにクラゲも食べますが、それだけではありません。近年の研究では、小魚やイカ・甲殻類など、いろいろなものを食べると分かってきました。深い海にもぐって、そこにいる生きものを食べることもあります。クラゲ専門ではなく、はば広く食べる魚だったのです。
3億の卵と、トゲトゲの稚魚
おなかに3億個の卵
マンボウのメスは、一度にとてもたくさんの卵を持ちます。その数は、多いときで3億個にもなるとされます。これは、知られている生きもののなかでも、飛びぬけて多い数です。ただし、この「3億」は古い推定で、実際の数には幅があります。しかも、これはおなかの中にある卵の数です。すべてが産みつけられて、大人に育つわけではありません。
親と似ていない、トゲトゲの稚魚
生まれたばかりの稚魚は、2〜3mmほどの小ささです。まわりにトゲトゲの飾りを持ち、まるで金平糖のような姿をしています。あの大きな親とは、似ても似つきません。多くの卵のなかから、ごくわずかだけが、あの巨体へと育っていきます。大量の卵は、きびしい海を生きぬくための工夫なのです。
食べられる? 天敵は?

地域によっては食べられる
マンボウは、日本の一部の地域などで、食用にされています。白身は、刺身や煮つけなどで食べられます。水分が多く、あっさりとした味だといわれます。いっぽうヨーロッパでは、安全のため、マンボウの販売が禁じられている国もあります。地域によって、食べ方や考え方が大きく違う魚です。
大人のマンボウにも天敵がいる
大きなマンボウにも、おそってくる天敵がいます。シャチやアシカ、大型のサメなどです。分厚くて丈夫な皮が、体を守るのに役立っています。数を減らしている面もあり、IUCNは危急(VU)に分類しています。日本では、大阪の海遊館などの大きな水族館で、泳ぐ姿を見られます。ふしぎな姿と丈夫な体を持つ、海の人気者です。
参考
- Wikipedia(英語版)「Ocean sunfish」(分類・大きさ・食性・繁殖・俗説)
- IUCN Red List:Mola mola(VU・個体数の減少)
- マンボウの研究・水族館の飼育記録(食性・成長・生態)
画像出典
サムネイル画像: Per-Ola Norman, Public domain, via Wikimedia Commons


