ミズダコ

甲殻類・軟体動物

ミズダコは、世界でいちばん大きなタコです。腕を広げると3〜5mに達し、北の冷たい海に暮らします。その名は、柔らかく水っぽい身にちなむそうです。日本では北海道を中心に、刺身やたこしゃぶなどで親しまれる食材でもあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 科:エンテロオクトプス科 Enteroctopodidae
  • 属:エンテロオクトプス属 Enteroctopus
  • 種:ミズダコ Enteroctopus dofleini

和名・英名

  • 和名:ミズダコ(漢字で「水蛸」)/別名オオダコ(大蛸)
  • 英名:Giant Pacific octopus(太平洋の巨大なタコ)

名前の由来

「水蛸(ミズダコ)」の名は、その身の質感に由来するとされます。体が柔らかく、水っぽい印象があることから、この名がついたと言われます。その大きさから、「オオダコ(大蛸)」と呼ばれることもあります。英語名の「Giant Pacific octopus」は、太平洋の巨大なタコという意味です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ腕を広げて3〜5m・体重ふつう10〜15kg(世界最大のタコ)
分布北太平洋(本州中部以北〜アラスカ・北米西岸・ロシア極東)
生息環境冷たく酸素の多い海。潮間帯から水深2000mまで
食べもの肉食(カニ・貝・魚・イカ・小型のサメなど)
寿命3〜5年ほど(2〜3年とも。多くのタコより長い)
人との関わり水産上の重要種。刺身・たこしゃぶなどで食用

世界でいちばん大きなタコ

大きなミズダコ
岩の上を移動する大きなミズダコ(Bachrach44, CC0, via Wikimedia Commons)

腕を広げて3〜5m

ふだんの大きさ

ミズダコは、現在知られているタコのなかで最大の種です。8本の腕を広げれば、3〜5mにも達します。体重はふつう10〜15kgほど。大きいものは、数十kgに達します。1本の腕には、大きなもので直径6cmを超える吸盤が並びます。大きな吸盤は、1個で十数kgを支える力を持つとされます。

記録に残る、桁外れの個体

過去には、さらに巨大な個体の記録も残されています。体長9mあまり、体重270kg前後という数字です。ただし、この数字は古い記録で、正確さには慎重な見方もあります。それでも、タコとしては群を抜いた大きさであることは間違いありません。

なぜ、こんなに大きくなれるのか

ミズダコが大型化できる背景には、すむ海の環境があります。一説では、その鍵は餌の豊かさにあるとされます。冷たい北の海には、大きなカニや貝などの餌が豊富です。餌に恵まれることが、巨大な体を支えていると考えられています。低い水温も、体の消耗をおさえるうえで有利にはたらきます。冷たい海と、大きな体。この二つは深く結びついています。

冷たい海の、賢いハンター

岩場のミズダコ
腕と吸盤を広げたミズダコ(Cliff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

一日の大半を、巣で過ごす

大きな体のミズダコですが、活発に泳ぎ回るわけではありません。一日の多くを、巣に隠れて過ごします。岩の割れ目や、岩の下に掘った穴を、すみかにします。ときには、海底に沈んだビンやタイヤを巣に使うこともあります。餌の多い場所を選んで巣を構える、計算された暮らしぶりです。

貝からサメまで、貪欲な食性

くちばしで殻を割る

ミズダコは、カニ・エビ・貝・魚など、さまざまな獲物を食べます。腕の吸盤で獲物を捕らえ、口にある硬いくちばしで殻をかみ砕きます。カニの甲羅や貝の殻も、この強いくちばしで割ってしまいます。手当たり次第に捕らえる、貪欲なハンターです。

小型のサメも食べる

その食欲は、ときに小型のサメにまで及びます。巣に残された食べかすから、サメを襲った証拠が見つかっています。大きな体と器用な腕、そして毒を含む唾液が、この狩りを可能にします。海底では、上位の捕食者として君臨する存在です。

ビンを開け、道具を使う知能

タコは、無脊椎動物のなかでもっとも賢いなかまとされます。ミズダコも例外ではありません。簡単なパズルを解いたり、ふたの閉まったビンを開けたりする姿が観察されています。個体を見分け、相手ごとに反応を変えることさえあります。大きいだけでなく、知恵にも富んだ生きものです。

骨のない体と、3つの心臓

すき間に入りこむ、柔らかい体

ミズダコの体には、骨がありません。硬い部分は、口にあるくちばしだけです。そのため、体をつぶすように変形させ、驚くほど狭いすき間にも入りこめます。大きな体でも、くちばしさえ通れば、どこへでも入り込めます。この柔軟さが、狩りや身を隠すことに役立ちます。

3つの心臓と、青い血

タコの心臓は、3つ。血液は青みがかっていて、血の中に銅を含む成分があるためです。この青い血は、酸素を運ぶ効率があまり高くありません。そのため、ミズダコは酸素の多い冷たい水を好みます。冷たい海での暮らしは、こうした体のつくりと切り離せません。

命がけの繁殖

ミズダコの全身
巣で卵を守るミズダコ(Un-chan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

オスの「交接腕」

精子を渡す、特別な腕

オスのミズダコには、繁殖のための特別な腕があります。8本のうちの1本が「交接腕(こうせつわん)」で、その先には吸盤がありません。オスはこの腕を使い、精子の入った袋(精包)をメスに渡します。ふつうの腕とは役割が異なる、繁殖専用の腕です。

メスは受精まで精包を保管する

受け取った精包を、メスはすぐには使いません。体の中に大切にしまい、産卵の準備が整うまで保管します。水族館では、7か月ものあいだ保管した例も記録されています。準備が整うと、メスは精子を使って卵を受精させます。交尾から産卵まで、長い時間が空くこともあるのです。

メスは半年、卵を守って死ぬ

メスが産む卵は、12万〜40万個。米粒のような卵を、岩などの硬い面に房状に産みつけます。そして、およそ半年ものあいだ、卵に新しい水を送りながら守り続けます。その間、メスはいっさい餌をとりません。自分の体を切りくずして命をつなぎます。卵がかえるころ、メスは力尽きて一生を終えます。オスも交尾のあと、やがて死をむかえます。その短い一生の最後は、次の世代に捧げられます。

食べられる? 北の食卓の主役

刺身・たこしゃぶ・唐揚げ

ミズダコは、日本では重要な食用のタコです。とくに北海道では、蛸壺などで盛んに漁獲されます。名前のとおり、身は柔らかく水分が多いのが特徴です。刺身や寿司のほか、たこしゃぶ・おでん・唐揚げなど、幅広く料理されます。加熱するとうまみが増し、鍋物ともよく合います。

卵や内臓、旬とマダコとの違い

身だけでなく、卵や内臓も食べられます。北国では、肝臓や卵巣を「道具(どうぐ)」と呼び、珍味として味わう地域があります。旬は主に冬から春にかけてで、寒い時期に身がしまります。食卓でおなじみのマダコと比べると、ミズダコははるかに大型で、身も柔らかいのが特徴です。「大きくて柔らかい北のタコ」が、ミズダコの持ち味といえます。

タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(英語版)「Giant Pacific octopus」(大きさ・分布・食性・繁殖・知能)
  • Wikipedia(日本語版)「ミズダコ」(名前の由来・分布・食用・繁殖)
  • 各水族館・水産研究機関の資料(飼育・生態・漁業)

画像出典

サムネイル画像: NOAA/R. N. Lea [1], Public domain, via Wikimedia Commons

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