ダイオウグソクムシは、深い海の底に住む世界最大級のダンゴムシの仲間です。陸のダンゴムシやワラジムシと同じ等脚類が、深海で大きく育ったものにあたります。海に沈んだ生きものの死骸を食べる掃除屋で、何年も食べずに生きた記録でも知られます。鎧のような殻をまとった姿から、深海の人気者になっています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:節足動物門 Arthropoda
- 綱:軟甲綱 Malacostraca
- 目:等脚目 Isopoda
- 科:スナホリムシ科 Cirolanidae
- 属:オオグソクムシ属 Bathynomus
- 種:ダイオウグソクムシ Bathynomus giganteus
和名・英名
- 和名:ダイオウグソクムシ
- 英名:Giant isopod
名前の由来
「グソクムシ(具足虫)」は、体を覆う殻を武士の鎧(具足)に見立てた名です。「ダイオウ(大王)」は、その仲間のなかでもとりわけ大きいことをあらわします。英名の Giant isopod も、そのまま「巨大な等脚類」という意味です。日本近海には、ひとまわり小さいオオグソクムシも住んでいます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約20〜40cm(最大で50cm近く) |
|---|---|
| 分布 | 大西洋西部・メキシコ湾・カリブ海の深海 |
| 生息環境 | 水深 約170〜2100mの海底(多くは400〜700m) |
| 食べもの | おもに生きものの死骸(腐肉食) |
| 寿命 | およそ6〜8年と推定される |
| 仲間 | ダンゴムシ・ワラジムシと同じ等脚類 |
体のつくり ― ダンゴムシの巨大版

ダンゴムシ・ワラジムシの仲間
等脚類とは
ダイオウグソクムシは、等脚目という大きなグループに属します。等脚とは、よく似た形の脚がそろっていることをさす言葉です。その名のとおり、体の下には7対の脚が並んでいます。陸に住むダンゴムシやワラジムシ、海のフナムシも、この等脚類の仲間です。
名前に「ムシ」とつきますが、昆虫ではありません。エビやカニ、ダンゴムシと同じ甲殻類の一種です。昆虫の体が頭・胸・腹の3つに分かれるのに対し、この仲間は多くの節が連なった体をしています。海の底をゆっくりと歩き回る、深海の甲殻類です。
深海で大きくなった体
身近なダンゴムシは、体長わずか1cmほどです。同じ仲間でありながら、ダイオウグソクムシは40cm近くにまで育ちます。深海の生きものが陸や浅い海の近縁種より大きく育つ現象は、「深海巨大症」と呼ばれています。低い水温や餌の少ない環境が関わると考えられていますが、はっきりした理由は分かっていません。

鎧のような殻と大きな目
硬い殻と丸まる体
体は、いくつもの節に分かれた硬い殻に覆われています。人のような背骨はなく、体を支えるのは外側の硬い殻(外骨格)。この殻は、外敵や深海の高い水圧から身を守る鎧でもあります。成長のときには、古い殻を脱ぎ捨てる脱皮を繰り返します。危険を感じると、ダンゴムシと同じように体を丸めて身を守ります。薄紫や淡いピンクがかった体色も、この仲間の特徴です。
暗い海を見る複眼
頭には、左右に大きな複眼があります。複眼は小さな目が集まったつくりで、その数は4000近くにのぼるとされます。光のほとんど届かない深海で、わずかな明かりも捉えるための目です。落ちてきた餌をいち早く見つけるのにも、この大きな目が役立つと考えられています。頭の先には長い触角ものびています。暗闇のなかで匂いや水の動きを感じ取る、大切な感覚器です。
深海の掃除屋

死骸に群がる
海底の掃除屋
ダイオウグソクムシは、海に沈んできた死骸を主に食べます。クジラや魚、イカなどの死骸に、匂いをたどって集まります。深海では、餌が滅多に手に入りません。落ちてきた餌を見逃すことはありません。こうして死骸を片付ける姿から、「深海の掃除屋」とも呼ばれる存在です。死骸は、多くの深海の生きものを養う貴重な食べものになります。
一度にたくさん食べる
餌にありついたときには、腹いっぱいになるまで食べます。大きな胃に食べものをため込み、しばらくの飢えに備えます。動けなくなるほど食べた個体が見つかることもあります。いつ次の死骸が落ちてくるか分からない、深海ならではの食べ方です。
何年も食べない記録
ダイオウグソクムシは、驚くほど長いあいだ食べずに生きられます。日本の水族館では、5年以上も餌をとらずに生きた個体が記録されています。餌をとらない間も、体重があまり減らないことが観察されています。深海の低い水温のもとで、体の働きを抑え、少ないエネルギーで過ごすためと考えられています。ただし、なぜここまで飢えに耐えられるのかは、いまだ詳しく分かっていません。深海の暮らしに残された、大きな謎の一つです。
繁殖と、人とのかかわり
卵を腹で育てる
卵を守り育てるのは、メスの腹にある「育房」という袋です。卵は袋のなかでふ化し、親と似た姿の子として外へ出てきます。深海での詳しい暮らしぶりには、まだ分かっていないことも多く残されています。幼い個体が見つかることはまれで、その成長には今も多くの謎が残されています。
水族館の人気者
ダイオウグソクムシは、深海生物ブームの主役として親しまれてきました。ほとんど動かず、長く食べない不思議な姿が、多くの人の興味を引いてきました。ぬいぐるみや食玩などのグッズも、数多く作られています。東アジアでは、珍しい食材として食べられることもあるそうです。
日本のオオグソクムシ
日本の近海には、近縁のオオグソクムシが住んでいます。相模湾や駿河湾などの深海に住む、体長10〜15cmほどの種です。ダイオウグソクムシよりひとまわり小さく、日本の水族館でもよく見られます。産地の一部では唐揚げなどにして食べられ、その味はエビやカニにたとえられることもあります。同じ属の仲間として、姿もよく似ています。
参考
- Wikipedia(英語版)「Giant isopod」― 分類・形態・分布・食性・繁殖・絶食の各節
- 鳥羽水族館 生きもの図鑑「ダイオウグソクムシ」― 飼育記録(長期絶食)
- WoRMS(世界海洋生物種目録)「Bathynomus giganteus」― 分類・学名の確認


