フェネックは、体に対して大きすぎるほどの耳をもつ、世界でもっとも小さなキツネです。その大きな耳のはたらきや、砂漠を生き抜く体の工夫に特徴があります。ペットとしても人気ですが、飼うのは簡単ではありません。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:イヌ科 Canidae
- 種:フェネック Vulpes zerda
和名・英名
- 和名:フェネック(フェネックギツネ)
- 英名:Fennec fox
世界でいちばん小さなキツネ
フェネックは、イヌ科キツネ属に属する、世界でもっとも小さなキツネです。体長は35〜40cmほど、体重は1〜1.5kgしかなく、飼いネコよりも小さな体をしています。北アフリカのサハラ砂漠を中心に、乾いた砂の大地で暮らします。名前は、キツネを意味するアラビア語に由来するといわれます。同じキツネの近縁には、日本に住むキタキツネなどもいますが、大きさや暮らす場所はまるで違います。毛の豊かな尾は体長の半分ほどもあり、先が黒っぽくなるのはキツネの仲間に共通する特徴です。薄いクリーム色の体に大きな三角の耳と黒く丸い目という姿は、ほかのキツネと見間違えることのない目印になります。

大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約35〜40cm/尾 約20cm/体重 約1〜1.5kg |
|---|---|
| 耳の長さ | 約10cm(体に対してとても大きい) |
| 分布 | 北アフリカのサハラ砂漠とその周辺 |
| 生息環境 | 砂漠や乾いた草原。砂に巣穴を掘る |
| 食べもの | 昆虫・小動物・卵・果実・植物など(雑食) |
| 保全状況 | IUCN:軽度懸念(LC) |
大きな耳と砂漠の体
大きな耳の働き
体の熱を逃がすラジエーター
フェネックの耳は、長さ10cmほどにもなり、小さな体に対して不釣り合いなほど大きく見えます。この大きな耳の大切な役目の一つが、体にたまった熱を逃がすことです。耳の内側には細い血管がたくさん通っていて、暑い砂漠で体が熱くなると、耳の表面から熱を空気中へ放散します。汗をあまりかかないフェネックにとって、大きな耳は体温を下げる天然のラジエーターの役目をになう器官です。この耳で熱を逃がすしくみは、同じ砂漠に住む大耳のキツネの仲間にも見られます。

砂の下の音を聞き分ける
大きな耳がもう一つ担うのが、すぐれた聴覚です。フェネックは、この耳を使って、砂の下を動く昆虫や小動物のかすかな足音まで聞き取ります。獲物のいる場所を音でつきとめると、素早く砂を掘り返して捕らえます。耳の向きは気分によっても変わり、警戒したり不安を感じたりすると、耳をうしろに倒すしぐさを見せます。反対に落ち着いているときは、耳をまっすぐ立てて周りの音を集めています。生まれたばかりの子は耳がまだ小さく、育つにつれて体のわりに大きな耳へと変わっていきます。
砂漠を生きる体
足の裏の毛と砂色の毛皮
フェネックの足の裏は、柔らかい毛で覆われています。この毛が、焼けるように熱い砂から足を守り、柔らかい砂の上でもすべらずに歩く助けになります。全身を覆うクリーム色の毛は、砂漠の景色に溶けこんで敵から身を隠すと同時に、日ざしをはね返して体が熱くなりすぎるのを防ぎます。砂の色によく似た毛皮は、砂漠で生きるための備えです。
夜に動いて暑さを避ける
フェネックは夜行性で、日中の強い日ざしを避けて活動します。昼のあいだは自分で掘った涼しい巣穴で休み、日が沈んで涼しくなってから外へ出て餌を探します。顔に対して大きな目は、光の乏しい夜の砂漠でも周りをよく見るのに役立ちます。砂漠の昼と夜では気温が大きく変わるため、暑い時間帯を巣穴でやり過ごす暮らし方は、体力と水分をむだにしない工夫になっています。
砂漠での暮らし
水をほとんど飲まずに生きる
食べ物から水分をとる
水の乏しい砂漠では、水をどう確保するかが生死を分けます。フェネックは、餌となる小動物や昆虫、果実に含まれる水分から必要な水の多くをまかないます。腎臓が水を無駄なくため込むように働くため、ほとんど水を飲まなくても生きていけます。この体のおかげで、水場から遠い砂漠の奥でも暮らせる体をもっています。
巣穴を掘って暮らす
フェネックは、砂地に自分の巣穴を掘って生活します。巣穴にはいくつもの出入り口があり、広いものでは畳数枚分ほどの広さになります。地中の巣穴は昼でも涼しく、強い日ざしや暑さから身を守る安全な住まいです。砂漠の日中は40度を超える暑さになる一方、夜は冷えこむことも多く、フェネックはこの寒暖の差を巣穴でしのいでいます。ワシやジャッカルなどの天敵がせまると、フェネックはすばやく巣穴に逃げこみます。
雑食の小さな狩人
フェネックは、小さな体ながらさまざまなものを食べる雑食動物です。バッタなどの昆虫やトカゲ、鳥の卵や小さなネズミの仲間を狩る一方で、果実や植物の根なども食べます。砂漠では餌がいつも豊富とは限らないため、手に入るものを幅広く食べることが、生き抜くうえで役立ちます。獲物を追うときの跳躍力は高く、小さな体からは思いがけないほど高く跳ぶことができ、その場から60cmほども跳び上がるといわれます。素早く向きを変える身のこなしも得意です。
家族で暮らす夜のキツネ
フェネックは一頭で暮らすのではなく、家族で群れをつくる動物です。オスとメスは、つがいになると生涯連れ添うとされます。親と子、きょうだいが同じ巣穴で暮らします。メスはおよそ50日の妊娠を経て、春に2〜5頭の子を産むとされます。生まれた子はしばらく巣穴の中で育てられ、親が運ぶ餌で大きくなります。仲間どうしでは、甲高い声で鳴き交わし、鳴き声を使って気持ちを伝え合います。小さな体で群れをつくり、鳴き声で結びついて砂漠に暮らします。寿命は野生でおよそ10年、飼育下では14年ほど生きた例も知られています。

人とのかかわりとペット
エキゾチックペットとしての人気
大きな耳と丸い目をもつフェネックは、その見た目から高い人気を集めています。海外では古くから毛皮のために捕らえられ、近年はエキゾチックペットとして飼うための繁殖も行われています。日本でも人気の動物ですが、飼うのは簡単ではありません。値段が高いうえ、夜行性で運動量も多いためです。警戒心が強く臆病な一面もあり、慣れるまでには時間がかかります。においが気になる、しつけが難しいといった点もあり、気軽に飼える動物ではありません。飼育には相応の設備と手間がかかります。国際的にはワシントン条約の付属書に載せられ、輸出入には制限が設けられています。

野生の状況とどこで会える
野生のフェネックはサハラ砂漠に広く分布し、絶滅の心配は今のところ小さいとされています。ただし、ペットや毛皮を目的とした捕獲は各地で続いており、地域によっては数の変化が心配されています。日本では、東京の井の頭自然文化園をはじめ、いくつかの動物園でその姿を見ることができます。夜行性のため昼間は寝ていることも多く、活発に動く姿は開園直後や夕方に見られることが多い動物です。砂を敷いた展示では、巣穴を掘るようすや、大きな耳を動かすしぐさを間近で観察できます。砂漠で耳をまっすぐ立てるフェネックは、日本の動物園でも人気の高い展示動物の一つです。
参考
- Wikipedia「Fennec fox」(学名・大きさ・耳の役割・砂漠適応・食性・繁殖)https://en.wikipedia.org/wiki/Fennec_fox
- IUCN Red List「Vulpes zerda」(保全状況)https://www.iucnredlist.org/species/41588/46173447
- 東京ズーネット(井の頭自然文化園のフェネック)https://www.tokyo-zoo.net/
画像出典
Drew Avery, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons | https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Fennec_Fox_Vulpes_zerda.jpg


