タヌキは、日本の里山や、ときには街中にもすむイヌ科の動物です。顔つきや名前は似ていますが、アライグマの仲間ではありません。昔から「化ける」と言い伝えられ、信楽焼(しがらきやき)の置物としても親しまれてきました。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目(ネコ目)Carnivora
- 科:イヌ科 Canidae
- 属:タヌキ属 Nyctereutes
- 種:ニホンタヌキ Nyctereutes viverrinus ほか
和名・英名
- 和名:タヌキ(漢字で「狸」)
- 英名:Raccoon dog(アライグマ犬の意味)
イヌのなかま
タヌキは、イヌやキツネと同じイヌ科の動物です。英語では「アライグマ犬(Raccoon dog)」と呼ばれますが、アライグマとは別の科で、近い仲間ではありません。日本にすむのはニホンタヌキで、本州などのホンドタヌキと、北海道のエゾタヌキに分けられます。中国や朝鮮半島にすむタヌキは、ヨーロッパにも持ちこまれ、野生化しています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約50〜60cm・体重 3〜8kg(秋には太る) |
|---|---|
| 分布 | 東アジア(日本・中国・朝鮮半島など)。ヨーロッパにも外来種として広がる |
| 生息環境 | 森・里山・農地・都市の緑地 |
| 食べもの | 雑食(果実・昆虫・小動物・魚・人の出す生ゴミなど) |
| 寿命 | 野生で6〜8年ほど |
| 保全状況 | IUCN: LC(軽度懸念) |
アライグマ・アナグマとの違い

アライグマとの違い
タヌキとアライグマは、目のまわりの黒い模様がよく似ています。しかし、見分けるポイントがあります。アライグマのしっぽには黒い横しまがありますが、タヌキのしっぽには、しま模様がありません。また、アライグマは前足が器用で、木にもよく登ります。タヌキはイヌ科らしく、走って地上を移動するのが得意です。
「同じ穴のむじな」=アナグマ
タヌキは、アナグマともよく混同されてきました。「むじな」という古い呼び名は、地方によってタヌキを指したり、アナグマを指したりします。アナグマはイタチ科で、タヌキとは別の仲間です。両者は姿が似ているうえ、アナグマの掘った巣穴をタヌキが借りて使うこともあります。ここから、仲間のように見える者どうしを指す「同じ穴のむじな」という言葉が生まれました。
なんでも食べる里山の暮らし

イヌ科いちばんの雑食
タヌキは、イヌ科のなかでもとくに雑食です。木の実・果実・昆虫・小動物・魚など、口に入るものは何でも食べます。人の暮らしのそばにも入りこみ、畑の作物や生ゴミをあさることもあります。この何でも食べる力のおかげで、里山から都市の緑地まで、はば広い場所で生きていけます。ふだんは、オスとメスがつがいで行動します。大きな声で鳴くことは少なく、仲間とは「クゥーン」といった高い声などでやり取りします。
ためフンで伝え合う
タヌキには、決まった場所にふんをする「ためフン」という習性があります。仲間が同じ場所にふんを重ね、においをかぎ合って、たがいの情報を伝えていると考えられています。森の中で見つかるふんの山は、タヌキがそこで暮らしているしるしです。
冬ごもりする、めずらしいイヌ

寒い地方にすむタヌキは、冬になると活動をぐっと減らし、巣穴で「冬ごもり」をします。イヌ科の動物の中で、冬ごもりをするのはタヌキだけです。冬に備えて、タヌキは秋のあいだにたくさん食べ、体に脂肪をたくわえます。秋のタヌキがまるまると太って見えるのは、このためです。とくに寒さの厳しい北海道にすむエゾタヌキは、しっかりと冬ごもりをします。厳しい時期をやりすごし、暖かくなると再び活動を始めます。
「化ける」タヌキ ― 昔話と文化

昔話と、縁起物の置物
タヌキは、日本の昔話や言い伝えに、たびたび登場します。人や物に化ける「化けダヌキ」として描かれ、茶釜に化ける「分福茶釜」の話や、お腹をたたく「腹づつみ」でも知られます。映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の題材にもなりました。店先に置かれる信楽焼のタヌキの置物は、商売繁盛をねがう縁起物として親しまれています。
「タヌキ寝入り」の由来
「タヌキ寝入り」という言葉も、タヌキから生まれました。タヌキは強くおどろくと、その場でばったり倒れ、死んだように動かなくなることがあります。本当に眠っているのではなく、おどろきのあまり体がかたまってしまう反応です。しばらくすると起き上がり、何ごともなかったように逃げていきます。
天敵と、身近な危機

増える交通事故
タヌキの天敵は、かつてはニホンオオカミでした。しかしオオカミが絶滅した今、大人のタヌキをおそう野生動物はほとんどいません。いっぽうで、人の暮らしがもたらす危険が増えています。とくに多いのが、道路での交通事故です。夜に活動するタヌキは、車のライトにおどろいて動けなくなり、ひかれてしまうことがあります。
病気と、飼えない理由
近年は、「疥癬(かいせん)」という皮膚の病気も広がっています。小さなダニによって毛が抜け落ち、寒さに耐えられず弱ってしまう病気です。なお、タヌキは野生動物のため、許可なく捕まえたり飼ったりすることはできません。かわいらしい姿ですが、そっと見守るのがよい相手です。
参考
- Wikipedia(英語版)「Raccoon dog」(分類・食性・冬ごもり・分布)
- IUCN Red List:Nyctereutes viverrinus・N. procyonoides(LC・分布)
- 環境省・自治体の野生鳥獣情報(日本のタヌキと疥癬・交通事故)
画像出典
サムネイル画像: Ryzhkov Sergey, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


