オオミミギツネ

大きな耳のオオミミギツネ 食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

オオミミギツネは、アフリカの乾いた草原に住むイヌ科の動物です。名前のとおり大きな耳を持ち、その耳で体温を逃がしながら、地中にいる虫の音を聴き取って餌を探します。餌の多くをシロアリが占める、虫を食べるキツネです。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:イヌ科 Canidae
  • 属:オオミミギツネ属 Otocyon
  • 種:オオミミギツネ Otocyon megalotis

和名・英名

  • 和名:オオミミギツネ
  • 英名:Bat-eared fox(コウモリの耳のキツネ)

別名・学名の由来

属名の Otocyon はギリシャ語の「耳」と「犬」を組みあわせた言葉で、種小名の megalotis は「大きな耳」を意味します。名前に「キツネ」と付きますが、アカギツネなどの真正キツネ(キツネ属 Vulpes)とは別の系統で、オオミミギツネ属にはこの一種だけが含まれます。英名の Bat-eared fox も、コウモリを思わせる大きな耳にちなみます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ頭胴長 約46〜66cm/尾長 約23〜34cm/耳 約11〜13cm
体重約3〜5.3kg(アカギツネより小さめ)
分布アフリカ東部と南部(二つの地域に分かれて住む)
生息環境乾いた草原・サバンナ・低木地
食べ物おもにシロアリ。ほかに甲虫・バッタ・クモなどの小さな生き物
寿命野生でおよそ6年/飼育下で13年ほど
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)

IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅のおそれを評価した国際的なリストです。LC(軽度懸念)は、今のところ絶滅の危険が低いと判断された区分です。

サバンナのオオミミギツネ
乾いた草原を歩くオオミミギツネ。撮影:Bernard DUPONT(CC BY-SA 2.0)

大きな耳の役割

オオミミギツネでまず目につくのは、体のわりに大きな耳です。耳の長さは11〜13cmほど。頭とほぼ同じくらいに見えます。この耳は、ただ音を聞くためだけのものではありません。

オオミミギツネの大きな耳
大きな耳は放熱と、地中の虫の音を聴くのに役立ちます。撮影:Joanne Goldby(CC BY-SA 2.0)

なぜこんなに大きいのか

放熱で体温を逃がす

耳の皮膚は薄く、内側にはたくさんの血管が通っています。暑いサバンナでは、この血管を流れる血液から熱を逃がし、体温が上がりすぎるのを防ぎます。大きな耳は、日差しの強い環境で暮らすための冷却装置のような働きをします。

地中の虫を聴く

もう一つの役割が、餌探しです。オオミミギツネは地面に耳を近づけ、土の中で動くシロアリや幼虫のかすかな音を聴き取ります。音のする場所を見つけると、前足で地面を掘って虫を捕らえます。目や鼻よりも、耳が餌探しの主役です。獲物を探すときは頭を低くし、耳を地面に向けながらゆっくり歩き回ります。

体つきと毛色

体はアカギツネより小さく、脚は細めです。毛の色は砂色から灰色がかった茶色で、耳のふち・脚の先・尾の先が黒くなります。顔には黒っぽい模様が入り、目のまわりが濃くなります。太い尾はふさふさとして、走るときや相手への合図として動かします。

虫を食べるキツネ

イヌ科の動物には肉を主に食べるものが多いなかで、オオミミギツネは虫を主食にする、珍しいキツネです。食べ物の中心はシロアリで、暮らし全体がこの小さな虫と結びついています。

主食はシロアリ

ハーベスターシロアリが多くを占める

オオミミギツネは、シロアリの塚を力ずくで壊すことはしません。地表や浅い土の中で動いているシロアリを、耳で探り当てて捕らえます。地域によって差はありますが、餌の8〜9割をハーベスターシロアリという一種のシロアリが占めるとされます。このシロアリが手に入らない時期には、甲虫(フンコロガシなど)・バッタ・クモ・サソリといったほかの虫も食べます。ときには果実や小さな動物を口にすることもあります。

歯が多いという特徴

虫を主食にすることと関わって、歯にも特徴があります。オオミミギツネは臼歯(奥歯)の数がふつうのイヌ科より多く、あごを速く動かして虫をすりつぶすのに向いた作りとされています。大きなあごの力で獲物をかみ砕くよりも、たくさんの小さな虫を手早く処理する方向に体ができています。あごをすばやく動かせるのも特徴で、見つけた虫を次々とかみ砕きます。

草食動物の群れとフンコロガシ

オオミミギツネは、シマウマやレイヨウといった草食動物の群れの近くで見かけることがあります。草食動物のふんにはフンコロガシが集まり、その周りにはシロアリも多いためです。餌の多い場所を追って移動する、効率のよい暮らし方といえます。草食動物が増えて草が短く保たれた場所は、シロアリも見つけやすくなります。

アフリカの草原の暮らし

オオミミギツネは、アフリカ東部と南部の乾いた草原に、二つの地域に分かれて住んでいます。この分かれ方をもとに、二つの亜種に分けられています。

ナミビアの乾いた草原
ナミビアの乾いた草原。撮影:Hans Hillewaert(CC BY-SA 3.0)

活動と巣穴

夜と昼の使い分け

活動する時間は季節で変わります。暑い夏はおもに夜に動き、日中の暑さを避けます。寒い冬には昼に活動することが多くなり、日ざしのぬくもりを利用します。環境の暑さ寒さに合わせて、動く時間帯を変えていると考えられています。

巣穴と天敵

休むときや子を育てるときには、地面に掘った巣穴を使います。天敵はジャッカルや大型のネコの仲間、猛禽(もうきん)などです。オオミミギツネは走るのが速く、急な方向転換も得意で、追われると鋭く向きを変えて逃げます。

オスがよく世話をする子育て

オオミミギツネの子育てには、ほかの多くの動物と違う特徴があります。子の世話の多くを、オスが引き受けるのです。

南アフリカのオオミミギツネ
アフリカ南部の個体。撮影:Dave Brown(CC0)

父親が守り、母親が食べる

ふだんは雌雄のつがい、または小さな家族で暮らします。子が生まれると、オスは巣に残って子を見張ります。毛づくろいをしたり、外敵から守ったりするのもオスの役目です。そのあいだメスは餌をとりに出かけ、乳を出すための栄養を補うとされています。虫を主食にするオオミミギツネでは、メスが十分に食べられるかどうかが子の育ちを左右するため、オスの見張りが大切だと考えられています。

群れでの合図

家族のあいだでは、耳や尾の動き、体の向きといった見た目の合図でやり取りをします。鳴き声はあまり多くありません。おたがいに毛づくろいをし合うことも、群れのつながりを保つのに役立ちます。

ほかのキツネとの違い

オオミミギツネは「キツネ」と呼ばれますが、アカギツネなどの真正キツネとは別の系統です。見た目や暮らしにも、はっきりした違いがあります。

オオミミギツネ別属(Otocyon)。耳が非常に大きい。主食は虫。アフリカの草原
アカギツネキツネ属。耳は中くらい。肉食寄りの雑食。世界に広く分布
フェネックキツネ属。耳が大きい。砂漠に住む最小級のキツネ
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オオミミギツネはIUCNのレッドリストで軽度懸念(LC)とされ、広い範囲に住み、多くの保護区にも分布しています。シロアリを食べることから、害虫を減らす役に立つ動物として見られることもあります。一方で、地域によっては数を減らす原因もあります。毛皮をとるための狩りや、家畜を襲うという誤解にもとづく駆除、車との事故などです。虫を主食とするその暮らしは、草原に虫が豊かにいることの上に成り立っています。日本国内でも複数の動物園で飼育されており、頭と同じくらい大きな耳を間近で見られる園もあります。

参考

  • IUCN Red List: Otocyon megalotis(Bat-eared Fox)評価ページ
  • Clark, H. O. Jr., “Otocyon megalotis”, Mammalian Species(American Society of Mammalogists)
  • Animal Diversity Web(ミシガン大学): Otocyon megalotis の解説
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