ハリセンボン

ハリセンボン 硬骨魚類

ハリセンボンは、体中にトゲを持つ海の魚です。危険が迫ると水を飲んで体をふくらませ、トゲを立てて球のようになります。フグの仲間ですが、トラフグのような強い毒は、ふつう持たないとされます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:フグ目 Tetraodontiformes
  • 科:ハリセンボン科 Diodontidae
  • 属:ハリセンボン属 Diodon
  • 種:ハリセンボン Diodon holocanthus

和名・英名

  • 和名:ハリセンボン(針千本)
  • 英名:Long-spine porcupinefish

名前の由来

和名の「針千本」は、体を覆うたくさんのトゲにちなんだ名前です。ただし、実際のトゲの数は千本もなく、数百本ほどとされています。英名の porcupinefish は、トゲを持つ動物ヤマアラシ(porcupine)にたとえた呼び名です。世界には近い仲間が数種おり、それらをまとめてハリセンボンと呼ぶこともあります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約30〜50cm
分布世界の暖かい海。日本では本州中部より南
生息環境サンゴ礁・岩場・藻場など、浅い海
食べ物貝・ウニ・カニ・ヤドカリなど、硬い殻を持つ生き物
寿命飼育下でおよそ10年前後とされる
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)

フグ目とは、フグやハリセンボン、マンボウなどを含む魚のグループです。体をふくらませたり、歯が融合したりする種が多く見られます。

岩かげのハリセンボン
岩かげで休むハリセンボン。トゲはふだん寝ています。撮影:Diego Delso(CC BY-SA 4.0)

体中のトゲ

ハリセンボンの体は、たくさんのトゲで覆われています。体の色は茶色っぽく、濃い色の斑点が散らばり、目が大きいのも特徴です。このトゲが、身を守るための備えになります。

トゲの正体

うろこが変わったトゲ

ハリセンボンのトゲは、うろこが形を変えたものです。ふつうの魚のうろこが平らなのに対し、ハリセンボンではとがった針の形になりました。このトゲには毒はありません。敵を近づけないのは、この硬くとがった形です。トゲの長さや太さは種類によって差があり、長いものでは数cmにもなります。

ふだんは寝ている

トゲは、いつも立っているわけではありません。ふだんは体にそって寝ており、なめらかに泳げる状態です。危険を感じて体をふくらませたときにだけ、トゲがいっせいに立ち上がります。ひれは小さく、はねを動かすようにゆっくり泳ぎ、速く泳ぐのは得意ではありません。

「針千本」という名前

「針が千本」という名前は大げさで、実際のトゲは数百本ほどです。それでも、体中を数百本の針で覆われた姿は、名前のとおりです。トゲの数は種類によっても差があります。

ふくらんで身を守る

ハリセンボンの身の守り方は、トゲと「ふくらみ」の合わせ技です。敵に襲われそうになると、体を大きくふくらませて、トゲだらけの球になります。

膨らんだ姿の標本
膨らんだ姿の標本。トゲが総立ちになります。撮影:রূপক পাল(CC BY 3.0)

水を飲んで球になる

どうやってふくらむのか

ハリセンボンは、口から海水をいきおいよく飲みこみ、胃に水をためて体をふくらませます。よく伸びる胃のおかげで、体はもとの何倍もの大きさになります。水面近くでは、水のかわりに空気を吸いこんでふくらむこともあります。ふくらむのにかかる時間は、ほんの数秒ほどです。危険が去ると、ためた水を吐き出して、もとの大きさへ戻ります。何度もふくらむことは体への負担が大きいとされ、むやみに刺激されると弱ってしまいます。

敵ものみこめない

体がふくらむと、それにつれてトゲが外へ向かって立ち上がります。トゲだらけの大きな球になった魚は、口に入れるのも難しく、多くの敵はあきらめます。飲みこもうとした大きな魚が、のどにつまらせてしまうこともあるとされています。それでも、大きなサメや大型の魚に食べられることはあります。ふくらんだままでは速く泳げないため、これは敵をやりすごすための、いわば最後の手段です。

貝も割る歯

見た目とは違い、ハリセンボンは硬い殻を割って食べる力強い口を持っています。

ハリセンボンの顔と口
顔のアップ。大きな目と、貝を割る丈夫な口。撮影:Diego Delso(CC BY-SA 4.0)

融合した丈夫な歯

何を食べるか

ハリセンボンの上下の歯は、それぞれくっついて、丈夫な一枚の板のようになっています。この歯で、貝・ウニ・カニ・ヤドカリなどの硬い殻をかみ割ります。ほかの魚が食べにくい、殻の硬い獲物を利用できる点が強みです。かむ力は強く、飼育下では指をはさまれると危ないともいわれます。かみ割った殻のかけらは、口の中でさらに細かく砕かれます。

夜に活動する

活発になるのは、おもに夜です。昼は岩やサンゴの陰でじっとして休み、暗くなってから餌を探しに出ます。多くは単独で行動し、決まった範囲を回りながら獲物を探します。

卵と成長

ハリセンボンが卵を産むのは、海の中です。卵やかえったばかりの稚魚は、しばらく外洋を漂って過ごします。小さな稚魚のうちからトゲのもとがあり、育つにつれてトゲが長くのびていきます。やがて浅い海のサンゴ礁や岩場にたどり着き、そこをすみかとします。産卵は、水温の高い季節に多いとされます。外洋を漂う稚魚は、海流に乗って遠くまで運ばれることもあります。稚魚のころは、親とはずいぶん違う姿をしています。

フグとの違い

同じフグ目の仲間

ハリセンボンは、フグやマンボウと同じフグ目の仲間です。体をふくらませることや、歯が融合していることなど、共通する特徴が多く見られます。どちらも泳ぎはゆっくりで、すばやく逃げるより、ふくらんで身を守る方にたよります。それでも、トゲや毒のあり方には、はっきりした違いがあります。

トゲと毒の違い

いちばんの違いは、体を覆う長いトゲです。フグのトゲは小さいか、ほとんど目立ちません。もう一つの違いは毒です。トラフグなどのフグには強い毒を持つ種がいますが、ハリセンボンはそうした強い毒を、ふつう持たないとされます。

ハリセンボン体全体に長いトゲがある。トラフグのような強い毒はふつう持たないとされる
フグ(トラフグなど)トゲは小さいか、ほとんど目立たない。種によっては強い毒を持つ

ハリセンボンが身を守るのは、毒ではなく、トゲとふくらみです。そのため沖縄などでは、ハリセンボンを食用にし、みそ仕立ての「アバサー汁」などにする地域もあります。

どこに住み、どこで会える

暖かい海の浅場

ハリセンボンが分布するのは、世界の暖かい海です。日本では、本州の中部より南の海で見られます。サンゴ礁や岩場、藻場など、隠れ場所の多い浅い海を好みます。

サンゴ礁のハリセンボン
サンゴ礁の岩かげに潜むハリセンボン。撮影:Diego Delso(CC BY-SA 4.0)

水族館の人気者

大きな目とふくらんだ姿から、水族館でも人気の魚です。多くの水族館で飼育され、ふくらむ前ののんびりとした泳ぎを間近で見られます。海が荒れた日には、浜へ打ち上げられる姿も見られます。ふくらんだ体を干した「置き物」やランプが、南の地方の土産物として売られることもあります。その姿は、キャラクターの題材にもなりました。

参考

  • IUCN Red List: Diodon holocanthus(Long-spine Porcupinefish)評価ページ
  • Florida Museum: Porcupinefish(Diodon holocanthus)species profile
  • Animal Diversity Web(ミシガン大学): Diodon holocanthus の解説
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