チンアナゴ

硬骨魚類

チンアナゴは、砂の中から上半身だけを出して揺れる、水族館でおなじみの魚です。犬の「狆」に似た顔つき、砂に潜って暮らす生態、よく似たニシキアナゴとの違いに特徴があります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:ウナギ目 Anguilliformes
  • 科:アナゴ科 Congridae
  • 属:チンアナゴ属 Heteroconger
  • 種:チンアナゴ Heteroconger hassi

和名・英名

  • 和名:チンアナゴ(狆穴子)
  • 英名:Spotted garden eel

名前の由来 ― 犬の「狆」に似た顔

チンアナゴという名前は、日本の愛玩犬「狆(ちん)」に顔つきが似ていることから付けられました。丸い目と、少し上を向いた短い鼻先が、狆の平たい顔を思わせます。漢字では「狆穴子」と書きます。名前のとおりアナゴの仲間で、ウナギに近い細長い体をもつ硬骨魚です。英名の「ガーデンイール(garden eel)」は、群れの姿が海底の庭に生えた草のように見えることに由来します。

チンアナゴの顔のアップ
チンアナゴの顔。丸い目と短い鼻先が、犬の狆に似ています。Hans Hillewaert, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約40cm/体の直径 約1.4cm
分布インド洋〜太平洋の熱帯・亜熱帯。南日本以南
生息環境水深15〜45mのサンゴ礁近くの砂底
食べもの潮に流れてくる動物プランクトン
寿命飼育下で数年とされる
分類ウナギ目アナゴ科(硬骨魚の仲間)

砂から体を出した姿

体の後ろ半分は砂の中

尾から潜って巣穴をつくる

チンアナゴは、全長40cmほどの細長い体の後ろ半分以上を、砂の中にうずめて暮らします。尾のほうから砂に潜り、皮膚から出す粘液で穴の内側を固めて、自分専用の巣穴をつくります。水面から見えるのは体の前3分の1ほどで、残りは砂の下に隠れています。砂から上半身だけが立ち上がって生えているように見えるのは、このためです。

穴から出ない暮らし

チンアナゴが巣穴から全身を出すことは、ほとんどありません。移動するときも、穴ごと少しずつ場所を変える程度で、泳ぎ回る姿はまれです。夜のあいだは穴に深く引っ込んで休むと考えられています。砂の中に隠れた下半身のほうが、外に出した上半身より長い、変わった体の使い方をする魚です。

流れてくるプランクトンを食べる

潮上へ体を向けて待つ

チンアナゴは巣穴から上半身を出し、体を潮上(潮の流れてくる方向)へ向けて待ちかまえます。目の前を流れてくる動物プランクトンを、一つずつ口で捕らえて食べます。餌になるのは、潮に乗って漂う小さな動物です。カイアシ類や小さなエビの仲間、魚や貝の卵などを口に運びます。多くの個体が同じ向きにそろって体を伸ばすのは、みなが同じ潮の流れに口を向けているからです。流れが強い日ほど、体を大きく伸ばして餌をとる姿が見られます。

目で一粒ずつ選ぶ

網ですくうようにまとめて食べるのではなく、チンアナゴは大きな目で小さなプランクトンを一粒ずつ見分けて口に運びます。餌が少ない日には体をあまり伸ばさず、流れが弱いと巣穴の近くにとどまります。じっとしているように見えても、上半身は絶えず小さく動き、流れてくる餌をとらえ続けています。砂に潜ったまま、目の前を通る餌だけで一生分の栄養をまかなう暮らしです。

危険が近づくと引っ込む

チンアナゴはとても臆病な魚です。魚やダイバーが近づくと、すばやく巣穴に引っ込んで身を隠します。硬いとげや毒をもたないチンアナゴにとって、砂の中に逃げ込むことがいちばんの防御手段です。敵が去るとまた顔を出しますが、警戒している間は砂の下からなかなか出てきません。大きな魚が群れの上を通ると、コロニー全体がいっせいに砂へ消え、庭のようだった景色が一瞬でただの砂地に変わります。この用心深さも、全身を見るのが難しい理由の一つです。

群れでつくる「海の庭」

海底に広がるコロニー

数十匹から数百匹の群れ

チンアナゴが一匹だけで暮らすことは、ほとんどありません。潮通しのよい砂地に、数十匹から数百匹が集まってコロニー(群れ)をつくります。たくさんの個体が砂から体を出して同じ向きに揺れる様子は、遠くから見ると海底に草が生えた庭のようです。英名の「ガーデンイール(庭のウナギ)」は、この光景から付けられました。

砂から並んで体を出すチンアナゴの群れ
砂から並んで体を出すチンアナゴのコロニー。海底の庭のように見えます。Sonse, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

互いの間隔を保つ

コロニーの中では、一匹ずつの間隔がほぼ決まっています。体を伸ばしてもとなりとぶつからない距離を保ち、互いの巣穴を荒らしません。群れで暮らすことには利点もあります。多くの目があるぶん外敵を早く見つけられ、繁殖の相手も近くに見つかります。砂地にまばらに散らばるのではなく、適度な密度で寄り集まる点に、この魚の暮らしの工夫があらわれています。

チンアナゴとニシキアナゴの違い

色と顔つきで見分ける

水族館ではチンアナゴと並んで、ニシキアナゴがよく展示されます。チンアナゴが白っぽい体に黒い斑点をちらした地味な色合いなのに対し、ニシキアナゴは黄色と白(またはオレンジ)の鮮やかな横じま模様をもちます。「錦」のように華やかな体の色が、その名前の由来です。顔つきもニシキアナゴのほうが面長で、丸顔のチンアナゴと見比べると違いが分かります。

黄色と白の横じま模様のニシキアナゴ
ニシキアナゴ。黄色と白の鮮やかな横じま模様が、チンアナゴとの見分けの目印です。opencage, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

分類は「属」から違う

見た目が違うだけでなく、チンアナゴとニシキアナゴは分類のうえでも別の仲間です。チンアナゴはチンアナゴ属、ニシキアナゴはシンジュアナゴ属と、種の一つ上の「属」の段階で分かれています。イラストやグッズではセットで描かれることが多い二種ですが、近い親戚というより、同じアナゴ科の別グループにあたります。同じ砂地で群れをつくる暮らし方が似ているため、いっしょに紹介されることが多い組み合わせです。

巣穴から出ない繁殖

穴を近づけて産卵する

ほとんど巣穴から出ないチンアナゴは、繁殖のときも砂の中にとどまったまま相手を探します。繁殖期になると、オスとメスは巣穴どうしが近づくように少しずつ位置をずらしていきます。やがて隣り合った穴から上半身を伸ばし、互いに体をからませて産卵と放精を行います。全身を砂の外にさらす危険をおかさずに繁殖できる、巣穴暮らしに合ったやり方です。

葉のような幼生の時期

産み出された卵は海中を漂って育ちます。ふ化した子は「レプトケファルス」という、透明で平たい葉のような姿の幼生になります。ウナギやアナゴの仲間に共通する形で、しばらく海を漂って過ごしたのち、細長い稚魚の姿に変わります。やがて砂地に降り立った稚魚は、親と同じように尾から砂へ潜り、自分の巣穴をつくって暮らし始めます。

会える水族館とチンアナゴの日

11月11日はチンアナゴの日

11月11日は「チンアナゴの日」として、日本記念日協会に登録されています。砂から体を出したチンアナゴの姿が数字の「1」に似ていて、群れで縦に並ぶ様子が「1」の最も多く並ぶ日を思わせることにちなみます。東京のすみだ水族館が申請し、2013年に認定されました。毎年この日には、各地の水族館でチンアナゴにちなんだ催しが行われます。

各地の水族館で会える

チンアナゴは、日本各地の水族館で見られる定番の人気者です。砂から体を出す姿と、近づくとすばやく引っ込むしぐさがよく知られています。ぬいぐるみや文房具などのグッズも数多くつくられ、水族館を代表する生きものの一つになっています。飼育もさかんで、専用の砂を敷いた水槽で群れごと展示されることが多い魚です。物音や振動に敏感なため、水槽のまわりが静かなときほど、砂から体を長く伸ばした姿があらわれます。

参考

画像出典

Aneta Pawska, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons | https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Heteroconger_hassi,_ZOO_Wroc%C5%82aw.jpg

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