アカミミガメは、目の後ろにある赤い模様が名前の由来となった北米原産のカメです。子ガメが「ミドリガメ」として縁日で売られてきた身近な存在ですが、野外に逃げ出して各地で野生化し、2023年からは法律で規制の対象になっています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:爬虫綱 Reptilia
- 目:カメ目 Testudines
- 科:ヌマガメ科 Emydidae
- 属:アカミミガメ属 Trachemys
- 種:アカミミガメ Trachemys scripta(亜種 ミシシッピアカミミガメ T. s. elegans)
和名・英名
- 和名:ミシシッピアカミミガメ(アカミミガメ)
- 英名:Red-eared slider
別名・名前の由来
「ミドリガメ」は、緑色をした子ガメを指す通称です。英名の slider は、危険を感じると岩や岸から水へすべり込む習性にちなみます。和名の「アカミミ」は、目の後ろに並ぶ赤い模様から付きました。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 甲長 オス約20cm・メス約28cm(メスが大型。体重は最大2.5kgほど) |
|---|---|
| 分布 | 原産は北米(ミシシッピ川流域など)。日本を含む世界各地に移入・野生化 |
| 生息環境 | 池・沼・川・水路など、流れのゆるい淡水域 |
| 食べ物 | 雑食(水草・小魚・昆虫・甲殻類・貝など) |
| 寿命 | 飼育下で20〜30年(40年に達することもある) |
| 日本での扱い | 条件付特定外来生物(2023年6月〜) |
赤い模様と緑の甲羅
目の後ろの赤い模様
名前の決め手になった特徴
アカミミガメの最大の目印が、目の後ろに左右一対で入る赤い模様です。頭から首にかけては黄色い細い線が何本も走り、緑がかった地の色によく映えます。この赤い部分が耳のように見えることが、和名「アカミミ」の由来です。近縁の別亜種にはこの赤い模様が無いものもいて、見分けの手がかりになります。

「ミドリガメ」は子ガメの姿
育つと色が変わる
縁日で売られる「ミドリガメ」は、甲羅も体も鮮やかな緑色をした子ガメの姿です。手のひらに乗るほど小さく、その愛らしさから人気を集めてきました。ところが成長すると緑色はしだいに濃く暗くなり、大きな個体では甲羅が黒ずんで見えます。買ったときと見た目が大きく変わる点も、飼いきれずに手放される一因です。
なんでも食べる水辺の暮らし
日光浴で体温を保つ
アカミミガメは変温動物で、自分では体温をつくれません。晴れた日には岸辺の石や倒木によじ登り、甲羅を広げて日光浴をします。体を温めると消化や活動が進み、甲羅に付いた菌や藻の繁殖もおさえるとされます。水辺の丸太に何匹も並んで甲羅を干す光景は、野生化した各地でおなじみの眺めです。

雑食でよく食べる
食べ物の幅が広い雑食性で、水草や落ち葉から小魚・水生昆虫・エビ・貝まで口にします。食べる中身は成長とともに変わり、子ガメは動物質が多め、育つと植物質の割合が増える傾向です。水辺の植物を大量に食べることもあり、田んぼやハスの葉が食い荒らされる被害も報告されています。丈夫で何でも食べる性質も、移入先で数を増やす強みです。
陸に上がって産卵する
繁殖期になると、メスは水辺を離れて陸に上がり、日当たりのよい土に穴を掘って卵を産みます。一度に産む卵は十数個ほどで、年に複数回産むこともあります。卵は土の中の温度で育ち、ふ化までの日数は温度しだいで変わります。よく卵を産んで増えやすいことも、野外に定着した理由の一つです。
卵の温度で性別が決まる
アカミミガメには性染色体がなく、卵が育つときの温度でオスとメスが決まります。低めの温度ではオスが、高めの温度ではメスが多く生まれるとされます。地球温暖化のような気温の上昇が、生まれてくる子のオスとメスの比率を変える可能性も指摘されています。カメの性別が親でなく環境の温度で決まる点は、ほ乳類や鳥とは大きく異なる特徴です。
縁日のカメが日本中へ
ペットから野外へ広がった
アカミミガメは、もともとペットとして大量に輸入されました。子ガメの「ミドリガメ」は安く手に入り、縁日の定番でもありました。ところが大きく育って飼いきれなくなった個体が、池や川に捨てられます。こうして各地で野生化し、今では日本の在来のカメを上回る数が住む水域も少なくありません。環境省の推計では、日本の野外にいるアカミミガメは800万匹を超えるとも言われ、在来のカメを大きく上回る規模です。

在来のカメを追いやる
体が大きく気の強いアカミミガメは、日光浴の場所や餌をめぐって在来種と競合します。日本のニホンイシガメやクサガメは、すみかや甲羅干しの場所を奪われがちです。水草を大量に食べることで、水辺の環境そのものを変えてしまう影響も指摘されています。この種は、国際自然保護連合(IUCN)が挙げる世界の侵略的な外来種の一つです。
2023年からの法規制
条件付特定外来生物に指定
数の多さと被害の広がりを受けて、2023年6月1日からアカミミガメは「条件付特定外来生物」に指定されました。販売や購入、営利目的の譲り渡し、野外へ放すことは禁止されています。違反には罰則も設けられました。飼っているカメを勝手に川へ逃がす行為も、この規制の対象です。
今飼っている個体は飼い続けられる
一方で、すでに飼っている個体は、これまでどおり飼い続けることが認められています。少数のカメを無償で譲ることも、当面は許可なくできます。ふつうのペットとしての飼育を急にやめさせない形で、野外への流出だけをおさえる狙いの規制です。

在来のカメとの見分け方
日本の川や池では、在来のニホンイシガメやクサガメとまぎれて見えることがあります。次の点に注目すると見分けられます。
赤い模様と甲羅で見分ける
| アカミミガメ | ニホンイシガメ | クサガメ | |
|---|---|---|---|
| 目の後ろ | 赤い一対の模様 | 目立つ赤はない | 首すじに黄色い線 |
| 甲羅の背 | 比較的なめらか | 後ろのふちがぎざぎざ | 3本の筋(キール) |
| 最大の甲長 | 約28cm | 約20cm | 約25cm |
目の後ろの赤い模様で見分ける
いちばん確実なのは、目の後ろの赤い模様です。アカミミガメにははっきりした赤い一対があり、ニホンイシガメには見られません。クサガメは首すじに黄色っぽい線が入りますが、赤ではないため区別できます。ただし年をとった大きなオスは全身が黒ずみ、赤い模様が見分けにくくなりがちです。
甲羅の筋とふちの形
甲羅の形も手がかりになります。クサガメの背中には3本の筋がはっきり通り、「セスジガメ」の別名もあります。ニホンイシガメは甲羅の後ろのふちがぎざぎざと切れ込みます。アカミミガメの甲羅は比較的なめらかで、大きく育つと暗い緑色です。
ペットとしての飼育と課題
長生きで大きく育つ
アカミミガメの寿命は長く、飼育下では20〜30年、まれに40年生きる個体もいます。甲羅だけで20cmを超える大きさに育ち、成長に合わせた大きな水槽が必要になります。子ガメの小ささからは想像しにくい長い年月と大きさが、飼い続けるうえでの負担になりやすい動物です。
飼育に必要な環境
飼育下では、市販のカメ用の餌を中心に、小魚や野菜などが与えられます。水は汚れやすいため、ろ過器やこまめな水換えで清潔さが保たれます。甲羅を乾かす陸地と体を温める照明も、飼育に欠かせない設備とされます。紫外線が足りないと甲羅がうまく育たず、日光や専用のライトで補う飼い方が一般的です。
飼育放棄と野外放出の問題
規制のもとでも、家庭で最後まで世話をする飼い方は認められています。一方で、飼えなくなった個体を野外へ放すことは、法律で禁じられています。手放す場合は、引き取り手を探すなどの方法がとられます。逃がされた一匹が在来の生き物や水辺の環境に長く影響を残す点が、問題視されてきました。
関連ページ


参考
- 環境省「アカミミガメ/条件付特定外来生物アカミミガメ・アメリカザリガニの規制について」(外来生物法)
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「ミシシッピアカミミガメ」
- IUCN/ISSG Global Invasive Species Database「Trachemys scripta」
画像の出典
- アイキャッチ(アカミミガメ):Charles J. Sharp 撮影、CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
- 頭部(赤い模様):Diego Delso 撮影、CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
- 水中の個体:Grendelkhan 撮影、CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
- 甲羅干しの群れ:Brocken Inaglory 撮影、CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)


