アオダイショウは、全長1〜2mになる日本本土最大の無毒のヘビです。田んぼや民家の周辺で古くから「ネズミを捕るありがたい蛇」として親しまれ、地方によっては家の守り神として大切にされてきました。近年ペットとしても人気が高まっている、日本を代表する身近な大蛇です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:爬虫綱 Reptilia
- 目:有鱗目 Squamata
- 科:ナミヘビ科 Colubridae
- 属:ナメラ属 Elaphe
- 種:アオダイショウ Elaphe climacophora(Boie, 1826)
和名・英名・別名
- 和名:アオダイショウ(青大将)
- 英名:Japanese rat snake
- 地方名:サトメグリ(里回り)、ネズミトリ(鼠取り)
名前の由来
和名の「青大将」は、脱皮直後や北海道の個体で青みが強く見えることと、大型のヘビである点にちなむとされます。地方名の「サトメグリ」は里を巡って歩く姿から、「ネズミトリ」は主食のネズミを捕らえる習性から生まれた呼び名です。英名 Japanese rat snake は「日本のネズミ捕りヘビ」の意で、日本人が古くから親しんできたこの蛇の性格をよく表しています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 100〜200cm、胴の直径 約5cm。日本本土最大のヘビ |
|---|---|
| 分布 | 日本列島(伊豆・隠岐・対馬を含む)、ロシア・国後島。奄美・南西諸島には分布しない |
| 生息環境 | 森林・農地・人家周辺。木登りが得意で樹上でも活動する |
| 寿命 | 飼育下で17年7か月の記録あり |
| 保全状況 | IUCN:LC(低懸念)/無毒 |
姿と体のつくり

体色は個体差が大きい
青みの強い個体と褐色の個体
アオダイショウの体色は、暗い黄褐色からくすんだオリーブ緑色まで、個体差がかなり大きいとされます。「青」の名を持ちながら、実際には緑がかった褐色の個体が多く見られます。とはいえ北海道では青みの強い個体が多く報告されており、脱皮直後の個体では体色がぐっと青く冴えることも知られています。頭から尾にかけて背中に4本の薄い黒褐色の縦縞が入りますが、縞がほとんど見えない個体もあります。
角張った頭と大きな体
頭部はやや角張り、吻の先端は幅広い形をしています。胴の直径は約5cmと日本のヘビとしては太く、全長は最大2mに達します。日本本土で見られるヘビとしてはもっとも大きな種で、南西諸島のサキシマスジオやシュウダ、ハブを含めた日本のヘビ全体でも上位に入る大型のヘビとされます。

幼蛇はニホンマムシへの擬態
アオダイショウの幼蛇は、成蛇とは大きく異なる姿をしています。灰色の体に、はしご状の褐色の斑紋がはっきりと入り、模様だけを見るとまるで別種のヘビのようです。この模様はニホンマムシによく似ており、「毒ヘビへの擬態」だと考えられています。実際、アオダイショウの幼蛇はマムシと間違えられて殺されてしまう例が少なくないほど、姿がよく似ています。

木登り上手な無毒のハンター

木登りを助ける腹板の側稜
アオダイショウはヘビのなかでもとくに木登りが得意な種です。腹面を覆う鱗(腹板)の両端には「側稜(そくりょう)」と呼ばれる隆起があり、これで木の樹皮のわずかな凹凸をとらえて登っていくことができます。完全な樹上性のヘビではありませんが、鳥の繁殖期には樹上の巣を襲うこともあり、木を苦もなく登る姿がよく観察されています。
巻きついて絞め殺す
無毒であるため、アオダイショウは獲物に毒を注入して仕留めることができません。そのかわり、大きな獲物には長い体を巻きつけ、締め上げて動けなくしてから飲み込みます。狩りの主な相手は、名前のとおりネズミなどの小型哺乳類が中心です。鳥類とその卵・カエル・トカゲも幅広く食べ、ネズミが減った時期には代わりの餌を狙う柔軟さも持っています。
卵を丸呑みして食道で割る
脊椎の突起で殻を潰す
ヘビの中でもアオダイショウは、鳥の卵を丸呑みする行動でよく知られています。丸ごと飲みこんだ卵は、食道のあたりで背骨の下側にある突起へ押し当て、外側からゆっくり潰していきます。中身を吸い取り、殻は後で吐き戻すという、この種ならではの食べ方です。
「殻を割るために木から落ちる」の真相
「卵を丸呑みしたアオダイショウは、殻を割るためにわざと高い木から落ちる」という話が知られていますが、これは俗説だと見られています。実際には木登り中に卵を飲みこむと、重心が変わって誤って落ちてしまう場面が多いようで、意図して落ちているわけではないと考えられています。
家の守り神とされた蛇
ネズミを捕るありがたい生き物
人家の周辺に住み着きやすい性質と比較的おとなしい気質を持ち、農作物を荒らすネズミを盛んに捕らえてくれることから、農村部ではアオダイショウを「家の守り神」として大切にする文化がありました。屋根裏や納屋に住み着いたアオダイショウをむやみに追い出さず、そっとしておく風習が各地に残っています。一方で、同じく縁起の良い鳥とされるツバメの巣を襲うこともあり、人にとっては功罪のある同居人でもあったといえます。
岩国のシロヘビ ―神の使いとされた白いアオダイショウ
まれに現れるアルビノ個体
アオダイショウにはまれに、色素を欠くアルビノの白い個体が生まれます。目が赤く、体は真っ白なこの個体は、古くから「神の使い」として崇められてきました。他の地域でも稀に発見されますが、集団として継続的に確認されるのは世界的にも珍しい存在です。
国の天然記念物「岩国のシロヘビ」
とくに山口県岩国市に集まる白いアオダイショウは「岩国のシロヘビ」として国の天然記念物に指定されており、地元では専用の飼育・繁殖施設まで設けられ大切に守られています。神社の祭神として祀られる例もあり、地域信仰と深く結びついた保全対象になっています。
マムシに間違えられる姿
頭・瞳孔・模様の違い
アオダイショウは無毒ですが、成蛇と幼蛇でそれぞれ別の毒ヘビと間違えられやすい種です。とくに幼蛇はニホンマムシに、成蛇の一部個体はヤマカガシに似ることが知られています。マムシとの間には、頭部の形・瞳孔・模様・牙の付き方など、いくつかの明確な違いがあります。
| アオダイショウ幼蛇 | ニホンマムシ | |
| 全長 | 成長すれば1〜2m | 成体で40〜60cm前後 |
| 頭の形 | 丸みのある楕円 | 三角形(毒腺が張り出す) |
| 瞳孔 | 丸い | 縦に切れ長 |
| 模様 | はしご状の縞 | ゼニ状の丸紋 |
| 牙 | 多数の細かい牙 | 一対の大きな毒牙 |
咬んだ跡の違い
咬まれたときに残る歯型も見分けの手がかりになります。アオダイショウは多数の細かい歯型が並ぶのに対し、マムシは大きな毒牙による一対の跡がはっきり残ります。ただしアオダイショウでも咬み方が浅い場合には一対の跡だけが残ることがあり、両者の区別が難しくなる場面もあるとされます。
繁殖と冬眠
春に交尾し夏に卵を産む
アオダイショウは卵生のヘビです。5〜6月に交尾し、7〜8月に4〜17個の卵を産みます。卵の大きさは長径7cm前後で、47〜63日ほどで孵化します。生まれたばかりの幼蛇は前述のとおりはしご状の模様を持ち、体色も成蛇とは大きく異なる姿をしています。
冬は集団で冬眠
冬になると土のなかや石積みの隙間、家屋の床下などで冬眠します。同じ場所に複数個体が集まって越冬することが知られており、春に暖かくなると次々に姿を現します。飼育下では17年7か月の飼育記録があり、野生でもうまく生き延びれば10年を超える長寿の蛇だとされます。
保全と人との関わり
身近な蛇の現状
アオダイショウは日本列島に広く分布し、IUCNレッドリストでも低懸念(LC)に分類される種です。ただし、農村部の減少や住宅地の変化により、屋根裏に住み着く古くからの「家の守り神」としての姿を目にする機会は減っています。都市化やロードキル、ヘビ全般への不安感からの駆除も、身近な蛇の個体数を静かに減らしていく要因になっています。
ペットとしての人気
穏やかな性質と丈夫さから、アオダイショウは近年ペットヘビとしての人気も高まっています。飼育下ではネズミなどを与えて長く飼うことができ、なつきはしないものの飼い主の手には慣れるとされます。とくに岩国産のシロヘビ系統や、アルビノの個体は美しさから愛好家に強く求められる存在です。
関連する生きもの


日本のヘビ全体の暮らしぶりや、他の種との比較は、本サイトの「ヘビ【総合】」ページにまとめられています。

参考
- Kidera, N. & Ota, H. 2017. Elaphe climacophora. The IUCN Red List of Threatened Species 2017(低懸念指定と分布の解説)
- 中村健児・上野俊一『原色日本両生爬虫類図鑑』保育社、1963年(分類・形態の一次資料)
- Gans, C. & Oshima, M. 1952. “Adaptations for egg eating in the snake Elaphe climacophora” American Museum of Natural History(卵を割る食性行動の古典論文)
- 岩国市「岩国のシロヘビ」公式ページ(国指定天然記念物としてのアルビノ集団の記録)


