ツミは、日本でいちばん小さなタカです。ハトほどの大きさで、オスは赤い目とオレンジ色の胸をもちます。近ごろは、都市の公園や街路樹でも子育てをするようになりました。巣のそばにオナガが集まる、変わったつきあいでも知られます。体は小さくても、小鳥を狩る猛禽の一員です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:タカ目 Accipitriformes
- 科:タカ科 Accipitridae
- 属:ツミ属 Tachyspiza
- 種:ツミ Tachyspiza gularis
和名・英名
- 和名:ツミ(雀鷹)
- 英名:Japanese sparrowhawk
名前の由来
「ツミ」という名は、「スズメタカ」がちぢまってできたと考えられています。小さな鳥を狩る、小型のタカらしい名前です。もともとはメスをさす呼び名だったとも伝えられます。古くは、この小さな体を生かして鷹狩に使われたこともある鷹です。かつてはハイタカと同じ属に入れられていましたが、いまは別の属に分けられ、ハイタカ属とは別のグループとされています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 オス 約27cm/メス 約30cm(翼を広げた幅 約50〜63cm) |
|---|---|
| 分布 | 東アジアで繁殖。日本では温暖な地域に留鳥、寒い地域には夏鳥として渡来 |
| 生息環境 | 林。近年は都市の公園・街路樹・社寺林でも繁殖 |
| 食べ物 | おもに小鳥。昆虫(トンボ・セミなど)・トカゲ・小動物も |
| 繁殖 | 4〜6月に樹上へ営巣。卵は2〜5個 |
| 保全状況 | IUCN:LC(軽度懸念)/亜種リュウキュウツミは環境省レッドリスト 絶滅危惧IB類(EN) |

日本でいちばん小さなタカ
オスとメスで色が違う
大きさとメスの優位
ツミは、オスの全長が約27センチメートル、メスが約30センチメートルほどです。日本にいるタカのなかで、もっとも小さな種です。大きさはハトくらいで、猛禽とは気づかれずに見すごされることもあります。それでも飛ぶ姿は小回りがきき、木立のなかでもすばやく身をひるがえせます。タカのなかまと同じく、メスのほうがオスよりひとまわり大きめです。日本のタカのなかでは、群を抜いて小さな種です。
赤い目のオスと黄色い目のメス
オスは、背中が青みがかった灰色で、胸から体の横がオレンジ色をおびます。目は赤褐色で、成鳥のオスの大きな特徴です。短い翼と長い尾は、こみ入った林をすばやく飛ぶのに向いています。メスは、上面が灰褐色で、下面に暗い褐色の横縞が入ります。目は黄色をしています。オスとメスで、色も目の色も違う鳥です。若い鳥は上面が暗い褐色で、下面は淡い褐色をしており、成鳥とは見た目がずいぶん異なります。
ハイタカ・オオタカとの見分け
ツミは、よく似たハイタカやオオタカと見間違えられます。見分けの手がかりは、体の小ささです。季節や大きさが異なるため、実際には混同されにくいとされます。
| ツミ | 日本のタカでは最小。ハト大。都市の公園などでも繁殖する |
|---|---|
| ハイタカ | ツミより大きい。冬に平地や市街地へやってくる |
| オオタカ | いちばん大きい。ハトやカラスも襲い、都市にも進出 |
とても小さく、公園や街路樹で繁殖するのは、この三種のなかではツミにかぎられます。オオタカやハイタカは、そこまで人の生活圏の近くでは繁殖しません。

都市の公園で子育て
夏に渡ってくる小さなタカ
温暖な地域では留鳥
ツミは、東アジアの各地で繁殖するタカです。日本では、暖かい地域で一年じゅう暮らす留鳥ですが、寒い地域には夏だけやってくる夏鳥です。夏に子育てをして、寒くなると南へ移る個体も多くいます。中国東部や朝鮮半島でも繁殖し、冬は南の暖かい地方で過ごすとされます。地域によって、暮らし方が少しずつ違います。
都市の緑地で増える繁殖
もともとは林で暮らす鳥ですが、近年は都市の緑地でも繁殖するようになりました。巣をかけるのは、公園・街路樹・社寺の林など、木のまとまった場所です。街路樹や公園の一本の木でも、条件が合えば巣をかけます。都市の緑が増えたことや、街に小鳥がたくさんいることが、その背景にあると考えられています。都市の緑地での繁殖記録は、各地でしだいに増えています。神社の森や大きな公園は、こうした小型のタカにとって、街なかの大切なよりどころになっています。マンションのベランダから、巣立ちのようすが見られることもあるほどです。
松や街路樹の樹上の巣
ツミは、マツなどの針葉樹の樹上に、細い枝を組んだ巣をつくります。4〜6月ごろに、2〜5個の卵を産みます。卵をあたためるのはおもにメスで、オスは獲物をとって運ぶ役です。ヒナは1か月ほどで巣立ち、しばらくは親の近くで飛び方や狩りをおぼえます。子育ての時期には、巣に近づく人や動物を、親が鋭い声で威嚇することもあります。気に入った場所では、年をこえて続けて繁殖することもあります。都市の公園では、人のすぐ近くで子育てをする様子が観察されることも少なくありません。

オナガを用心棒に?
ツミの巣のそばに集まるオナガ
カラスから守ってもらう関係
ツミの巣の近くには、オナガという鳥が集まって巣をつくることが知られてきました。オナガは、卵やヒナをカラスに襲われやすい鳥です。そこで、猛禽であるツミの巣の近くを、あえて営巣の場所に選ぶと考えられてきました。ツミがカラスを追いはらう場所では、オナガも巣を襲われにくくなると考えられてきました。オナガは、天敵が近づくとさかんに鳴き立てる鳥で、その声はツミにも危険を知らせます。ツミの巣を中心に、オナガの巣がいくつも集まった例も観察されています。ツミにとっても、オナガが見張り役になり、たがいに助けあうような関係だと考えられてきました。
近ごろ変わってきた関係
ところが、この関係は近ごろ変わってきたようです。カラスの数が増え、ツミだけでは追いはらいきれなくなりました。そのため、ツミが強く防衛しなくなり、オナガもツミを頼らなくなってきたといいます。この移り変わりは、2000年代のなかごろから各地で伝えられています。とはいえ、いまでもツミとオナガが近くで営巣する例は、各地で見られます。

小鳥やトンボを狩る
すばやい奇襲
ツミの獲物は、おもにスズメやカラ類などの小鳥です。小さな体を生かして、木々のあいだをすばやく飛び、物かげから奇襲します。獲物を見つけると、枝のあいだをぬうように追いかけ、一気に仕留めます。小鳥のほかに、トンボやセミなどの昆虫、トカゲなどもとらえます。スズメの群れが急にいっせいに飛び立つとき、近くにツミがひそんでいることもあります。街なかでは、公園や庭に集まる小鳥を狙う姿も見られるようになっています。ときには、飛んでいるトンボを空中でつかまえることもあります。

ツミの豆知識
「キィキィ」と鳴く声
ツミは、繁殖期になると、「キィキィキィ」と早口の甲高い声で鳴きます。とくに、なわばりを守るときや、外敵が近づいたときによく鳴きます。都市の公園でこの声が続くと、近くでツミが子育てをしていることもあります。ふだんは、あまり声を立てません。巣立ったばかりの幼鳥が、親にえさをねだって鳴くこともあります。姿が小さいぶん、この声で存在に気づかれることも少なくありません。
南の島のリュウキュウツミ
南西諸島には、ツミの亜種であるリュウキュウツミが暮らしています。こちらは石垣島や西表島などの森で見られ、本土のツミとは別の亜種として扱われます。生息数が少なく、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IB類(EN)とされています。都市で数を増やしている本土のツミとは対照的に、南の島の亜種は限られた森だけに残る少数の鳥です。沖縄島から八重山にかけての森で暮らし、開けた場所ではあまり見られません。
関連記事



参考
- ウィキペディア「ツミ」(分類・大きさ・形態・食性・繁殖・オナガとの関係)
- サントリー「日本の鳥百科」ツミ(生態・都市での繁殖・見分け)
- 環境省レッドリスト(リュウキュウツミの保全状況)
画像出典
- アイキャッチ・オス:Accipiter gularis ツミ — Ian Dugdale, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 止まる姿:Accipiter gularis ツミ — Daniel S. Katz, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 巣とヒナ:Accipiter gularis ツミの雛 — mami_t_t, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 林の中:Accipiter gularis ツミ — 百香果 (kenghung), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔:Accipiter gularis ツミ — Zinogre, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 枝どまり:Accipiter gularis ツミ — Daniel S. Katz, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons


