ハイタカは、林に潜んで小鳥を狙う、小型のタカです。オオタカと同じなかまですが、ひとまわり小さく、生垣や薮のあいだをすばやく飛んで獲物を襲います。オスとメスで大きさが大きく違い、狙う獲物まで違うのが特徴です。冬には、市街地の公園や庭先にもやってきます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:タカ目 Accipitriformes
- 科:タカ科 Accipitridae
- 属:ハイタカ属 Accipiter
- 種:ハイタカ Accipiter nisus
和名・英名
- 和名:ハイタカ(灰鷹)
- 英名:Eurasian sparrowhawk
名前の由来
「ハイタカ」は、古くは「はしたか」と呼ばれ、「疾き鷹(はやきたか)」がなまったものといわれます。すばやく飛ぶ姿から名づけられたという説です。鷹狩の世界では、大きいメスを「ハイタカ」、小さいオスを「コノリ」と呼び分けてきました。コノリは「小鳥に乗りかかる」意味だとされ、小鳥を襲う習性をよく表しています。漢字では「灰鷹」と書き、灰色みをおびた姿にちなむとされます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 オス 約32cm/メス 約39cm(翼を広げた幅 約60〜80cm) |
|---|---|
| 分布 | ユーラシアの温帯〜亜寒帯。日本では本州以北に留鳥、一部は冬に暖地へ |
| 生息環境 | 山地や平地の林。冬は農地・河川敷・市街地の公園にも |
| 食べ物 | おもに小鳥。ときに昆虫やネズミなど |
| 寿命 | 野生でおよそ10年前後とされる |
| 保全状況 | IUCN:LC(軽度懸念)/日本:環境省レッドリスト 準絶滅危惧(NT) |

林に潜む小型のタカ
オスとメスで大きさが違う
メスはオスよりずっと大きい
ハイタカは、オスの全長が約32センチメートル、メスが約39センチメートルほどです。タカのなかまはメスのほうが大きいのがふつうですが、ハイタカはその差がとくに目立ちます。メスはオスよりひとまわり以上大きく、体重ではオスがおよそ150グラム、メスはその倍近くに達するともいわれます。小さなオスはキジバトほど、大きなメスはハトより大きく見えるほどで、同じ種とは思えないほどの差です。この大きさの差は、猛禽のなかでもとくに大きいことで知られています。
青灰色のオスと褐色のメス
オスは、背中や翼の上面が青みがかった灰色で、胸から腹には赤褐色の細かい横縞が入ります。メスは、上面が褐色がかった灰黒色で、下面には黒っぽい横縞が並ぶのが特徴です。オスとメスでは、色あいがはっきり異なります。若い鳥は全体が褐色で、下面にはハート形や涙形の大きな斑が並びます。目は黄色から橙色で、足の指は細長く、小鳥をつかむのに適しています。
短い翼と長い尾で林を飛ぶ
ハイタカは、幅の短い丸みのある翼と、長い尾をもちます。この体つきは、木々のあいだをすばやく方向を変えて飛ぶのに向いています。長い尾はかじの役目をはたし、こみ入った林のなかでも身をひるがえせます。開けた空を高く舞うより、林や生垣のきわを低く飛ぶのが得意な鳥です。数回の羽ばたきと滑空をまぜて進み、獲物を見つけると一気に加速します。その飛び方は、上空を悠々と舞うワシやノスリとは対照的です。こうした林向きの体つきは、同じ仲間のオオタカやツミにも共通します。

小鳥を狙う奇襲の名手
生垣沿いの奇襲
やぶに逃げこむ小鳥をつかむ
ハイタカの狩りは、待ち伏せと奇襲が基本です。生垣や林のきわを低く飛び、物かげからいきなり飛び出して小鳥を襲います。やぶに逃げこんだ小鳥を、長い足を伸ばしてつかみとる姿も知られています。獲物に気づかれないよう、木立や建物のかげを巧みに使います。速さと小回りを生かして、木立のなかでも獲物を追いつめます。小鳥の群れが集まる場所を覚え、くり返しおとずれる個体も知られています。
オスとメスで獲物が違う
体の大きさが違うため、オスとメスで狙う獲物も分かれます。小さなオスは、シジュウカラ・スズメ・アトリのなかまなど、小さな鳥を主に狩ります。大きなメスは、ツグミ・ムクドリ・ハトなど、ひとまわり大きな鳥もとらえます。つがいで獲物を分けあうことで、同じ場所でも食べ物が競合しにくくなると考えられています。
冬は市街地の庭にも
冬になると、ハイタカは平地や市街地にも下りてきます。小鳥が集まる公園や庭は、この鳥にとって格好の狩り場です。スズメやヒヨドリの群れがいっせいに逃げて騒ぐのは、近くにハイタカがいる合図とされます。餌台に来る小鳥を狙って、住宅地に姿を見せることもあります。ヨーロッパでも、庭の餌台に集まる小鳥を襲うタカとして、古くから知られてきました。夏は山の林で暮らし、冬は人の近くへ移る、季節で居場所を変える鳥です。

山で繁殖し、冬に平地へ
樹上の巣と子育て
ハイタカは、山地や平地の林の樹上に、木の枝を組んだ巣をつくります。1回に4〜5個の卵を産み、メスがおもに卵をあたためます。そのあいだ、オスは獲物をとってメスやヒナに運びます。同じ林で、前の年の巣に手を入れて使うこともあります。卵はおよそ1か月であたたまり、ヒナはさらに1か月ほどで巣立つとされます。子育ての時期には、小鳥をさかんに狩って巣へ運ぶ姿が見られます。
めったに鳴かない鳥
ハイタカは、繁殖期のほかは、ほとんど鳴きません。警戒したときには、「キィキィ」と早口の甲高い声をあげます。ふだんは声を立てずに、静かに林を飛びまわります。とくに秋から冬にかけては、鳴き声を耳にする機会がほとんどありません。声よりも、すばやく横切る影で気づかれることの多い鳥です。

オオタカ・ツミとの見分け
大きさでならぶ三種のタカ
ハイタカは、よく似たオオタカやツミと見間違えられます。もっとも分かりやすい手がかりは、体の大きさです。飛んでいると大きさの見きわめは難しいものの、獲物や飛び方もあわせて見ると区別しやすくなります。
| ツミ | 日本のタカでは最小。ハトより小さい。低地の林や公園で繁殖 |
|---|---|
| ハイタカ | ツミとオオタカの中間。小鳥を狙い、林や生垣を低く飛ぶ |
| オオタカ | いちばん大きい。ハトやカラスも襲い、都市にも進出 |
オオタカとの違い
オオタカは、ハイタカよりはっきり大きく、がっしりとした体つきです。狙う獲物も、ハト・ムクドリ・カラスなど、より大きな鳥が中心になります。かつてはハイタカと同じ属とされていましたが、いまは別の属に分けられました。飛ぶときの大きさと、獲物の大きさが、見分けの目安です。
ツミとの違い
ツミは、日本のタカのなかでもっとも小さい種です。ハイタカよりさらに小型で、市街地の公園などでも繁殖します。ハイタカは、ツミよりひとまわり大きく、冬に見かける機会が多い鳥です。大きさの順にならべると、ツミ・ハイタカ・オオタカとなります。

ハイタカの豆知識
鷹狩で使われたタカ
ハイタカは、古くから鷹狩に使われてきたタカです。小型で身近なことから、大きなオオタカとはまた別に、小鳥を狩る鷹として親しまれました。鷹狩ではメスを「ハイタカ」、オスを「コノリ」と呼び、獲物や役目によって使い分けたと伝えられます。とくにメスは力が強く、狩りに向いた鷹として重んじられたともいわれます。
林とともにある鳥
ハイタカは、日本では環境省のレッドリストで準絶滅危惧(NT)とされています。繁殖の場となる林が減ったことが、その一因と考えられています。ヨーロッパでは、かつて農薬の影響で大きく数を減らし、その後に回復した経緯も知られています。いっぽうで、冬に市街地へやってくる個体は、身近に観察されることもあります。繁殖にはある程度まとまった広さの林が必要とされ、生息数はその土地の林や、獲物となる小鳥の量に左右されると考えられています。
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参考
- ウィキペディア「ハイタカ」(分類・大きさ・形態・食性・分布・繁殖・名前の由来)
- サントリー「日本の鳥百科」ハイタカ(生態・雌雄差・見分け)
- 環境省レッドリスト(ハイタカの保全状況=準絶滅危惧)
画像出典
- アイキャッチ・オス:Eurasian sparrowhawk — Isiwal, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 止まる姿:Sparrowhawk on a branch — caroline legg, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 獲物をとらえたメス:Sparrowhawk female with prey (Hungary) — Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 卵:Egg of Eurasian Sparrowhawk — Didier Descouens, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔(オス):Male Eurasian sparrowhawk in flight — Alexis Lours, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 顔:Eurasian sparrowhawk (El Haouaria) — El Golli Mohamed, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


