クラゲは、体の大半が水でできた刺胞動物のなかまです。水族館の人気者ミズクラゲや猛毒のハコクラゲ、「不老不死」で話題のベニクラゲなど、姿も生き方もさまざまな仲間がいます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:刺胞動物門 Cnidaria
- 亜門:クラゲ亜門 Medusozoa
- 綱:鉢虫綱・ヒドロ虫綱・箱虫綱・十文字クラゲ綱 など
和名・英名
- 和名:クラゲ(水母・海月)
- 英名:Jellyfish
「クラゲ」は一つの分類群ではない
「クラゲ」という名前は、一つの科や目をまとめて指す言葉ではありません。刺胞動物門のうち、傘のような体で水中を漂う形になったものを、ひとまとめに「クラゲ」と呼んでいます。定番のミズクラゲは鉢虫綱、不老不死で知られるベニクラゲはヒドロ虫綱に入ります。猛毒のハコクラゲは箱虫綱で、所属する綱はばらばらです。同じ「クラゲ」でも、系統のうえでは遠く離れた仲間が混じっています。
大きさ・分布などの基本データ
| 分類 | 刺胞動物門クラゲ亜門(複数の綱にまたがる) |
|---|---|
| 大きさ | 傘の直径 数mm(ベニクラゲ)〜2m(エチゼンクラゲ) |
| 分布 | 世界中の海。淡水に住む種もわずかにいる |
| 体の成分 | 95%以上が水分 |
| 寿命 | 数か月〜1年ほどの種が多い(ベニクラゲは例外) |
| 食べもの | プランクトン・小魚・他のクラゲなど |
クラゲとは ― 体の95%が水
脳も心臓も骨もない
クラゲの体は、95%以上が水分でできています。人のような脳や心臓、骨や血液はもたず、傘の部分はゼリー状の層(中膠)でふくらんでいます。かわりに、体の表面に神経が網の目のように広がる「散在神経系」をもち、これで光や刺激を感じ取ります。ミズクラゲの傘のふちには「眼点」という小さな器官があり、明るさの方向をとらえています。中心となる司令塔がなくても、傘をリズミカルに縮めて泳ぎ、餌をとらえて暮らせる体のつくりです。
刺胞という毒の仕組み
クラゲの仲間に共通する武器が、触手にある「刺胞」です。刺胞は刺胞細胞の中にある極小のカプセルで、獲物や外敵がふれると、中の毒針が一瞬で飛び出して突き刺さります。プランクトンや小魚はこの毒でしびれさせて捕らえます。人が刺されると痛みやはれが出る種も多く、海水浴で問題になるのはこの刺胞のためです。刺胞は死んだクラゲや、ちぎれた触手の切れ端でも反応するため、浜に打ち上げられた個体でも刺されることがあります。
クラゲを食べる生きもの
体の大半が水のクラゲにも、それを主食にする天敵がいます。ウミガメの中でもオサガメはクラゲを専門に食べ、大きなマンボウもクラゲを好んで食べます。海に漂うレジ袋をクラゲと間違えて飲みこむウミガメが問題になるのは、クラゲが重要な餌になっているからです。栄養の少ないクラゲですが、大量に発生するため、海の食物網では無視できない役割を担っています。

危険なクラゲと刺されたとき
猛毒のハコクラゲ
クラゲの中でもとくに危険なのが、箱虫綱のハコクラゲの仲間です。オーストラリア近海に住むオーストラリアウンバチクラゲ(キロネックス)は、世界でもっとも毒が強い動物の一つとして知られ、人の命にかかわる事故も起きています。ハコクラゲは傘が立方体に近い形で、他のクラゲと違って像を結べる目をもち、障害物をよけて泳ぐこともできます。日本の沖縄などに住むハブクラゲも、この仲間の危険な一種です。

カツオノエボシは「クラゲ」ではない
強い毒で知られるカツオノエボシは、見た目こそクラゲそっくりですが、正確には1匹のクラゲではありません。小さな個体がたくさん集まって役割を分担する「群体」で、ヒドロ虫綱の管クラゲの仲間です。青い浮き袋を海面に出して風で流され、長い触手を海中に垂らします。英語では「ポルトガルの軍艦」と呼ばれ、刺されると強い痛みが走ります。打ち上げられた状態でも刺胞は生きており、浜辺で見つかる青いビニールのようなものが、この危険な生きものであることもあります。

ベニクラゲは本当に不老不死か
若返る「分化転換」の仕組み
ベニクラゲは、「不老不死のクラゲ」として話題になる、直径数mmの小さなクラゲです。ふつうの動物は年をとって死にますが、ベニクラゲは弱ったり傷ついたりすると、大人のクラゲの体を子ども(ポリプ)の姿に戻すことができます。細胞が別の種類の細胞へ作り変わる「分化転換」という現象で、理論上はこの若返りを何度も繰り返せるとされています。
不死身の生きものではない
ただし、本当に永遠に死なないわけではありません。若返る前に魚などに食べられたり、病気になったりすれば、そこで一生は終わります。自然の海で実際に若返るところはまだ観察されておらず、確認されているのは主に飼育下の実験です。「条件がそろえば老いをリセットできる」という点が特別なのであって、不死身の生きものではない、と考えるのが正確です。
卵から大人へ ― 変わった一生
多くのクラゲは、ふだん目にする傘の姿(メデューサ)だけで一生を過ごすわけではありません。受精卵はまず「プラヌラ」という幼生になり、海底の岩などに付着して「ポリプ」というイソギンチャクに似た姿へ変わります。ポリプはやがて体を横じまに分け(ストロビラ)、そこから小さな「エフィラ」が皿を重ねたように次々と離れて泳ぎ出します。このエフィラが育ったものが、見なれたクラゲの傘の姿です。固着する世代と漂う世代が入れ替わる、変わったライフサイクルといえます。
光るクラゲとノーベル賞
クラゲには、光を放つ種も少なくありません。中でも有名なのが、北米の海に住むオワンクラゲです。この種がもつ緑色蛍光タンパク質(GFP)は、日本の研究者・下村脩さんによって発見されました。GFPは、生きた細胞の中で特定のタンパク質を光らせて観察する道具として、生物学や医学の研究に欠かせないものになっています。この業績により、下村さんは2008年にノーベル化学賞を受賞しました。海を漂うクラゲの研究が、現代の生命科学を支える技術につながった一例といえます。



日本とクラゲ
巨大なエチゼンクラゲと大量発生
日本近海には、世界最大級のエチゼンクラゲが住んでいます。傘の直径は最大で2m、重さは150〜200kgに達する巨大なクラゲです。数年おきに大量発生することがあります。大群が定置網に入りこんで魚を傷めたり網を破ったりと、漁業に大きな被害をもたらします。なぜ周期的に大発生するのか、その理由はまだはっきり分かっていません。海の環境の変化が関係するとみられていますが、確かなことは分かっていない、というのが現状です。

食べられるクラゲ
クラゲは、日本や中国で古くから食材として利用されてきました。中華料理の前菜でおなじみの「クラゲの酢の物」は、ビゼンクラゲなどの傘を塩とミョウバンで処理したもので、コリコリとした独特の歯ざわりが特徴です。厄介者のエチゼンクラゲも、食用や肥料などへの活用が各地で試みられています。刺胞をもつクラゲを、下ごしらえで安全な食材に変えてきた点は、人とクラゲの長いつき合いを物語ります。
どこで会える ― クラゲの水族館
水中をゆっくり泳ぐクラゲは、水族館の人気者です。山形県の鶴岡市立加茂水族館は、クラゲの展示に特化した施設として知られ、多くの種類のクラゲを見られることで有名になりました。定番のミズクラゲは、円形の水槽でライトに照らされ、多くの館で目玉の展示になっています。飼育の難しいクラゲを安定して見せる技術が、こうした専門的な水族館を支えています。
参考
- Wikipedia「Jellyfish」(分類・体のつくり・刺胞・生活史・遊泳)https://en.wikipedia.org/wiki/Jellyfish
- Wikipedia「Turritopsis dohrnii」(不老不死のクラゲ=分化転換と留保)https://en.wikipedia.org/wiki/Turritopsis_dohrnii
- 鶴岡市立加茂水族館 公式(クラゲ展示・エチゼンクラゲ)https://kamo-kurage.jp/
- ノーベル財団「The Nobel Prize in Chemistry 2008」(下村脩・GFP)https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2008/summary/
画像出典
MartinThoma, CC0, via Wikimedia Commons | https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Aurelia-aurita-3.jpg


