シャコ

色あざやかなモンハナシャコ 甲殻類・軟体動物

シャコは、海の砂や岩のあいだに住む、細長い甲殻類です。日本では、寿司ネタとしてなじみの深い生きものです。いっぽう仲間には、貝の殻も割るほどのパンチをくり出す種や、とても複雑な目をもつ種もいます。エビやカニとは、見た目が似ていても別のグループに属します。

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分類と学名

シャコは、軟甲綱のシャコ目(口脚目)に含まれる甲殻類です。寿司ネタになる日本の食用シャコは、学名を Oratosquilla oratoria といいます。エビやカニと同じ甲殻類ですが、それらの十脚目とは分類的に大きく離れた、独自のグループです。世界には、400種をこえるシャコの仲間がいます。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:シャコ目(口脚目)Stomatopoda
  • 科:シャコ科 Squillidae
  • 種:シャコ Oratosquilla oratoria

和名・英名

  • 和名:シャコ(蝦蛄)
  • 英名:Mantis shrimp(シャコの仲間の総称)

名前の由来

シャコは、漢字で「蝦蛄」と書きます。英名の Mantis shrimp は、「カマキリのようなエビ」という意味です。前あしを折りたたんだ姿が、カマキリの鎌を思わせることにちなみます。エビ(shrimp)の名がついていますが、実際のエビとは別のグループの生きものです。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ食用シャコで全長15〜20cmほど
分布日本各地の内湾(種によって世界の暖かい海)
生息環境砂や泥の底、岩やサンゴのすき間
食べ物ゴカイ・小魚・エビ・貝など(肉食)
寿命種によるが数年ほど
仲間食用シャコ・モンハナシャコなど400種以上

シャコってどんな生きもの

シャコは、細長い体に、たくさんの節をもつ甲殻類です。エビにもカニにも似ていますが、どちらとも違う独自の体をしています。

食用のシャコ(宮島水族館)
寿司ネタになる食用シャコ。砂泥の底で暮らす、日本で身近な種

エビでもカニでもない

シャコは、エビやカニと同じ甲殻類の仲間です。しかし、その中では早くに枝分かれした、古いグループに属します。エビやカニが含まれる十脚目とは、体のつくりが大きく違います。とくに、前あしが大きな捕脚(ほきゃく)になっている点が、シャコに特有の特徴です。

砂泥の巣穴で暮らす

食用シャコは、内湾の砂や泥の底に、U字形の巣穴を掘って暮らします。ふだんは巣穴の中に潜み、単独で生活します。夜や、水が濁ったときに巣穴から出て、獲物をとらえます。巣穴は、身を隠す場所であると同時に、獲物を待ちぶせる場所にもなっています。

二つの捕脚 — 刺す型と叩く型

シャコの狩りの主役は、大きく発達した前あし「捕脚」です。この捕脚には、大きく分けて二つのタイプがあります。

刺してとらえるスピアラー

寿司ネタの食用シャコは、「スピアラー(刺す型)」と呼ばれるタイプです。捕脚の先に、とげの並んだ鎌のような形をもちます。この鎌を一瞬でくり出し、ゴカイや小魚などの柔らかい獲物を刺してとらえます。カマキリが鎌で獲物をとらえるのと、よく似たしくみです。

殻を割るスマッシャー

もう一つは、「スマッシャー(叩く型)」と呼ばれるタイプです。捕脚の先が、丸くふくらんだこん棒のような形をしています。このこん棒で、貝やカニの硬い殻を叩き割って食べます。あざやかな色で知られるモンハナシャコが、この叩く型の代表です。

巣穴のモンハナシャコと捕脚
サンゴ礁の巣穴に潜むモンハナシャコ。折りたたんだこん棒状の捕脚で殻を割る

殻を割るパンチ

叩く型のシャコがくり出すパンチは、動物のなかでもよく知られた一撃です。水の中とは思えない、その速さと力。貝やカニの殻を割るほどの威力があります。

水中でもとくに速い一撃

モンハナシャコのこん棒は、ばねのようにためた力を、一瞬で解き放ちます。その動きは、水の中で行われる攻撃としては、もっとも速い部類とされます。ごく短い時間に、体の大きさからは考えられないほど大きな力が加わります。速さや力の数値には幅がありますが、いずれも水中の動きとしては際立った値とされます。

貝やカニの殻を割る

この一撃は、硬い貝やカニの殻を割ってしまいます。飼育された水槽では、ガラスにひびを入れた例も伝えられています。硬い殻をもつ獲物も、この一撃の前では、殻だけで身を守るのが難しくなります。強い殻を割るために、専用の道具のような捕脚が発達したと考えられています。

水が泡立つキャビテーション

パンチがあまりに速いため、こん棒の周りの水の圧力が急に下がります。すると、水が一瞬だけ泡になる「キャビテーション」という現象が起こります。この泡がはじけるときにも衝撃が生まれ、獲物は二重に打撃を受けます。こぶしが当たらなくても、この泡の力で獲物を弱らせることがあるとされます。

「シャコパンチ」の由来

強い一撃を打つことのたとえに、「シャコパンチ」という言葉が使われることがあります。素早く鋭いパンチを、このシャコの捕脚になぞらえた言い回しです。身近な食用シャコも、刺す型ながら素早い捕脚をもっています。シャコの一撃の速さは、昔から人にも知られてきたものです。

世界一複雑ともいわれる目

シャコは、パンチだけでなく、その目でも注目されています。とくにモンハナシャコの目は、動物のなかでも変わったつくりをしています。

モンハナシャコの複眼のクローズアップ
左右に動く大きな複眼。人より多くの種類の光を受け取る細胞をもつ

人より多い光の受容体

ものの色は、目のなかにある「光の受容体」で受け取られます。人の目には、この受容体が3種類あります。いっぽうモンハナシャコの目には、その何倍もの種類がそなわっています。左右の目はそれぞれ別々に動き、まわりを広く見わたすことができます。

12種類ほどの受容体

モンハナシャコの目には、色を受け取る受容体が12種類ほどあるとされます。3種類しかもたない人とくらべると、その多さは目を引きます。これほど多くの種類をもつ目は、動物のなかでもめずらしいものです。

紫外線や円偏光も

モンハナシャコの目は、人には見えない光もとらえます。紫外線や、光の波のねじれである「円偏光」も感じ取れるとされます。円偏光を見分けられる動物は、ほかにほとんど知られていません。仲間どうしの合図に、この光を使っているという見方もあります。

「たくさんの色が見える」は本当か

受容体の多さから、「モンハナシャコは無数の色を見分けられる」とよく語られます。しかし、近年の研究では、この見方には疑問も投げかけられています。ある実験では、色を細かく見分ける力は、人ほど高くないという結果が出ました。多くの受容体は、細かい色分けよりも、色をすばやく大まかに見分けるのに向いているとも考えられています。目のしくみのすべてが、まだ分かっているわけではありません。

寿司ネタとしてのシャコ

強いパンチや複雑な目で知られるシャコですが、日本ではやはり食べ物としてなじみ深い生きものです。とくに食用シャコは、古くから親しまれてきました。

シャコの握り寿司
シャコの握り寿司。ゆでると赤むらさき色になり、江戸前ずしの定番とされてきた

食べ物としてのシャコ

食用シャコは、東京湾など各地の内湾でとられてきました。人とのかかわりの深い、身近な海の幸です。

江戸前ずしの定番

シャコは、ゆでると赤むらさき色になります。この姿は、古くから江戸前ずしの定番のネタとされてきました。産卵前のメスは、卵を「かつぶし」と呼び、とくに好まれます。独特の風味とあまみが、シャコの味わいとして知られています。

減っているシャコ

近年、食用シャコの漁獲量は、大きく減っています。かつてたくさんとれた海でも、数が減った地域が知られています。原因には、海の環境の変化などが考えられていますが、はっきりとは分かっていません。身近だったシャコは、いまでは値の張るネタになりつつあります。

参考

  • シャコ Oratosquilla oratoria/シャコ目(Wikipedia日本語版)分類・生態・食用
  • モンハナシャコ Odontodactylus scyllarus(Wikipedia)捕脚・パンチ・目
  • 複眼の色覚に関する研究(Thoen et al. 2014 ほか)光受容体と色の見分け

画像の出典

  • アイキャッチ(モンハナシャコ):Jens Petersen, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons
  • 食用シャコ(宮島水族館):Totti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 巣穴のモンハナシャコ:Diego Delso, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • モンハナシャコの複眼:Cédric Péneau, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • シャコの握り寿司:Lombroso, Public domain, via Wikimedia Commons
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