マグロ

硬骨魚類

マグロは、海を高速で泳ぎ回る大型の魚です。サバの仲間で、口から入れた水をえらに送って呼吸するため、止まると息ができなくなります。刺身や寿司でおなじみで、なかでもクロマグロは「本マグロ」とも呼ばれ、高い値で取引されます。

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分類と学名

マグロは、サバ科マグロ属に含まれる魚のまとまりです。すべて海に住む大型の肉食魚で、なかでも代表的なのがクロマグロです。ここでは、クロマグロを中心に紹介します。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:スズキ目 Perciformes
  • 科:サバ科 Scombridae
  • 属:マグロ属 Thunnus
  • 種:クロマグロ Thunnus orientalis(代表種)

和名・英名

  • 和名:マグロ(代表種はクロマグロ)
  • 別名:クロマグロは「本マグロ」とも
  • 英名:Tuna(クロマグロは Pacific bluefin tuna)

名前の由来と呼び名

マグロの名は、目が黒いことから「目黒(まぐろ)」と呼ばれたのが由来とする説があります。クロマグロは成長にあわせて呼び名が変わり、若い魚はヨコワやメジマグロ、大きく育つと本マグロと呼ばれます。関東ではメジ、関西ではヨコワなど、地方によって呼び名が違います。市場では、大きさや部位ごとに細かく呼び分けられるのも特徴です。

マグロの種類

マグロには、いくつもの種類があります。おもなものは次のとおりです。

  • クロマグロ(本マグロ):もっとも大きく、味もよい高級種
  • ミナミマグロ(インドマグロ):南半球の海に住む
  • メバチ:目が大きく、刺身によく使われる
  • キハダ:ヒレが黄色く、世界で多くとられる
  • ビンナガ(ビンチョウ):ツナ缶によく使われる

クロマグロは、成長にあわせて味や値も変わります。同じマグロでも、種類によって大きさや脂ののり方が違います。なお、大西洋や地中海に住むクロマグロは、太平洋のクロマグロとは別の種とされています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさクロマグロは全長3m・体重400kgを超えることもある
分布世界の暖かい海(クロマグロは北太平洋)
生息環境外洋の表層から中層
食べ物小魚・イカ・甲殻類(肉食)
寿命クロマグロで20年以上
保全状況種によって異なる(太平洋クロマグロは近年回復)

止まれない魚

「マグロは止まると死ぬ」といわれます。これは、マグロの呼吸のしくみと深く関わっています。

水槽の中を泳ぐマグロの群れ
水族館を泳ぐマグロ。眠るときも泳ぎ続ける

泳ぎ続けて呼吸する

口から水をえらへ送る

多くの魚は、えらのふたを動かして水を取り込み、呼吸します。ところがマグロは、そのしくみがうまく働きません。かわりに、口を開けて泳ぎ、入ってきた水をえらに流して酸素を取り込みます。このやり方は、ラム換水(かんすい)と呼ばれます。泳ぎ続けるマグロは大量の酸素を必要とするため、えらが大きく発達しています。

止まると息ができない

泳ぐのをやめると、えらに水が流れなくなり、酸素を取り込めなくなります。そのためマグロは、眠るときでも泳ぎ続けなければなりません。「止まると死ぬ」といわれるのは、このためです。生まれてから一生、泳ぎをやめない魚だといえます。

高速で泳ぐ体つき

水の抵抗をおさえる形

クロマグロの全長3mは、大人が両手を広げた幅よりも大きく、魚のなかでも特に大型です。マグロの体は、先のとがった紡錘形(ぼうすいけい)をしています。泳ぐときは、ヒレを体の溝にしまい、水の抵抗を減らします。この体つきのおかげで、速いときには時速数十kmもの速さで泳げます。短い時間なら、時速80kmを超える速さを出すともいわれます。この速さをいかし、大きな目で見つけた獲物を、素早く追いかけて捕らえます。

三日月形の尾

尾ビレは、細く引きしまった三日月の形をしています。この尾を左右に強くふって、体を前へ押し出します。細く固い尾は、長い時間泳ぎ続けるのに向いた形です。マグロの身が赤いのは、酸素をたくわえるはたらきをもつ成分が、筋肉に多く含まれるためです。この赤い筋肉が、長時間泳ぎ続ける持久力を支えています。

水族館で泳ぐマグロ

泳ぎ続けなければならないマグロは、水族館で飼うのが難しい魚です。止まれないため壁にぶつかりやすく、運ぶだけでも大きな手間がかかります。それでも、東京の葛西臨海水族園や大阪の海遊館などでは、マグロの群れが飼われています。大きな水槽の中を絶えず泳ぎ回るようすを、見ることができます。

海水より温かい体

マグロには、ほかの多くの魚とは違う、体を温める特別なしくみがあります。これが、速く泳ぐ力を支えています。

水中を泳ぐクロマグロ
流線形の体をもつクロマグロ。冷たい海でも素早く泳ぐ

奇網のしくみ

熱を逃がさない血管

マグロの体の中には、「奇網(きもう)」と呼ばれる細かい血管のあつまりがあります。ここで、筋肉で温まった血の熱を、冷たい血へ移します。そうして体の熱を外へ逃がさず、体温を海水より高く保ちます。ときには、まわりの海水より20℃近く高くなることもあるとされます。温めるのは筋肉だけでなく、目や脳、内臓にもおよびます。いっぽうで心臓は、海水と同じくらいの冷たさのまま動いています。

冷たい海でも速く動ける

ふつうの魚は、水温が下がると体も冷えて、動きが鈍くなります。体を温められるマグロは、冷たい海でも筋肉をよく働かせ、速く泳げます。この力によって、広い海を長い距離にわたって泳ぎ回れます。体温を高く保つこうした魚は、中温性(ちゅうおんせい)の魚と呼ばれます。

大海原を回遊する暮らし

マグロは、外洋を大きく回遊する魚です。えさを求め、また産卵のために、長い旅を続けます。

太平洋を渡る大回遊

クロマグロは、生まれた海から遠くはなれた海まで泳ぎ、また戻ってきます。日本の近くで生まれた個体が、太平洋をこえて北アメリカの近海まで行き来することも知られています。近年は、体に小さな記録器を付けて回遊を調べる研究も進み、マグロが深さ数百mまで潜ることも分かってきました。マグロは、同じくらいの大きさどうしで群れをつくって泳ぐことが多い魚です。えさとなる小魚やイカの群れを追って、広い海を移動します。海の食物網では上位の捕食者にあたり、小魚の数を通じて海のバランスにも関わっています。大きく育ったマグロを襲う相手は多くありませんが、シャチや大型のサメが天敵となります。若い魚や卵は、多くの生き物に食べられます。上位の捕食者が大きく減ると、えさとなる魚がふえるなど、海全体のつり合いに影響することもあります。

数百万の卵を産む

クロマグロは、日本の近海やフィリピン海などで産卵します。メスが一度に産む卵は、数百万から数千万にもなるとされます。多くの卵は他の生き物に食べられますが、大量に産むことで、少しでも多くを生き残らせています。海の中で育つうちに、天敵に食べられる数はしだいに減っていきます。生まれたばかりの稚魚は、海の表層で小さな生き物を食べて育ちます。えさが足りないときは、稚魚どうしで食べ合うことも知られています。生き残った稚魚の成長は速く、数年で大人の大きさに近づきます。

人とのかかわり

マグロは、日本の食卓に欠かせない魚です。とりすぎによる資源の減少や、その回復への取り組みも、大きな話題になってきました。

マグロの寿司
マグロの寿司。赤身から脂ののったトロまで、部位で味が違う

高級魚としてのマグロ

マグロは、刺身や寿司の材料として親しまれています。とくにクロマグロは味がよく、高い値で取引されます。世界で水あげされる太平洋・大西洋のクロマグロは、その多くが日本で食べられているとされます。市場の初競りでは、一匹に高い値が付くことでも知られています。マグロは部位によって味が違い、あっさりした「赤身」、脂ののった「中トロ」「大トロ」などに分けられます。刺身で食べる魚のため、寄生虫のアニサキスが問題になることもあります。冬にとれる脂ののったクロマグロは、特に味がよいとされます。マグロは、はえ縄や巻き網などでとられ、遠くの海でとれたものは冷凍して運ばれます。キハダやビンナガは、ツナ缶の原料としても使われます。

下魚から高級魚へ

今でこそ高級なマグロですが、江戸時代には価値の高くない魚とされていました。傷みが早く、江戸まで運ぶ間に鮮度が落ちてしまったためです。とくに脂の多いトロは劣化が早く、当時は捨てられたり、畑の肥料にされたりしていました。

やがて、赤身を醤油につけた「ヅケ」という保存法が広まり、寿司だねとして使われるようになりました。トロが好まれるようになったのは、冷蔵や冷凍の技術が進んだ1960年ごろからです。市場の初競りで高い値が話題になったのは、2000年ごろからのことです。

資源を守る取り組み

人気の高さから、クロマグロはとりすぎで数を減らした時期がありました。漁のとりきめが定められ、太平洋クロマグロの数は近年になって回復してきたとされます。マグロは国をこえて回遊するため、とる量は国どうしの話し合いで決められています。漁のできる量や、釣った小型魚を海へ戻す取りきめもつくられています。また、卵から親までを育てる「完全養殖」も進められ、近畿大学が2002年に世界で初めて成功させた「近大マグロ」が知られています。マグロの養殖には、天然の幼魚をつかまえて生けすで太らせる「畜養(ちくよう)」もあります。卵から育てる完全養殖なら、天然の数を減らさずにすみます。近畿大学の研究は、成功までに30年以上かかりました。海の資源を守りながら食べ続けるための工夫が、今も続けられています。

参考

  • Pacific bluefin tuna(en.wikipedia.org)分類・大きさ・温血性・回遊・繁殖・資源・養殖
  • クロマグロ(ja.wikipedia.org)呼び名・分布・完全養殖
  • 水産庁「太平洋クロマグロ」資源状況と管理

画像出典

  • アイキャッチ:aes256, CC BY 2.1 JP, via Wikimedia Commons(Pacific bluefin tuna)
  • 泳ぐマグロ:CasinoKat, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(葛西臨海水族園)
  • 水中のクロマグロ:Stephane-bdc, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Thunnus orientalis)
  • 寿司の写真:RuinDig/Yuki Uchida, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
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