ザリガニは、大きなハサミをもつ淡水の甲殻類です。子どもの遊びでもおなじみですが、日本の池や川で見かける赤いザリガニの多くは、外国から来たアメリカザリガニです。2023年からは、飼い方にいくつかの決まりが設けられました。
分類と学名
ザリガニは、エビやカニと同じ十脚目(じっきゃくもく)の甲殻類です。日本でふつうに見られるのはアメリカザリガニで、ここではこの種を中心に紹介します。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:節足動物門 Arthropoda
- 綱:軟甲綱 Malacostraca
- 目:十脚目 Decapoda
- 科:アメリカザリガニ科 Cambaridae
- 属:アメリカザリガニ属 Procambarus
- 種:アメリカザリガニ Procambarus clarkii
和名・英名
- 和名:アメリカザリガニ
- 英名:Red swamp crayfish
ロブスターとの違い
ザリガニは、エビ・カニ・ロブスターと同じ甲殻類の仲間です。大きなハサミをもつ姿はロブスターによく似ています。大きな違いは、住む場所です。ザリガニが川や池などの淡水に住むのに対し、ロブスター(ウミザリガニ)は海に住み、体もずっと大きくなります。
名前の由来
「ザリガニ」という名前の由来には、いくつかの説があります。後ろへ下がるように進むことから、「いざる(後ろへ進む)蟹」がなまったとする説などが知られています。地方によっては、エビガニと呼ばれることもあります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約6〜12cm |
|---|---|
| 分布 | 原産は北アメリカ南部。日本を含む世界各地に外来 |
| 生息環境 | 池・水田・用水路などの淡水 |
| 食べ物 | 水草・落ち葉・巻貝・水生昆虫など(雑食) |
| 寿命 | 5年ほど |
| 日本での位置づけ | 外来種(2023年から条件付特定外来生物) |
ハサミをもつ体
ザリガニのいちばんの特徴は、体の前に構えた大きなハサミです。このハサミは、餌をつかんだり、身を守ったりするのに使われます。ザリガニには左右あわせて10本のあしがあり、その名も十脚目といいます。いちばん前の一対が、大きなハサミになっています。長い二対の触角で、まわりの様子やにおいを探ります。大きなものは体長12cmほどで、ハサミを広げるとさらに大きく見えます。目は細い柄の先についていて、上下左右を広く見わたせます。ザリガニは、おもに夜に活動する生き物です。

大きなハサミ
オスの大きなハサミ
ハサミは、オスのほうがメスより大きくなります。ザリガニは、このハサミを持ち上げて相手を威嚇し、仲間と争います。餌をはさんで口へ運ぶのにも、ハサミが役立ちます。
取れても生えかわる
敵につかまれると、ザリガニは自分でハサミやあしを切り離して逃げることがあります。切れた部分も、脱皮をくり返すうちに、元の形へもどっていくとされます。一度に元どおりにはなりませんが、少しずつ大きくなって元の形に近づきます。危険がせまると、腹を強く曲げて後ろへ跳ぶように、すばやく逃げます。
赤い体と脱皮
アメリカザリガニの体は、赤いものが多いです。ただし、体の色は食べ物によっても変わり、餌によっては青っぽくなることもあります。ザリガニは、硬い殻に包まれた体を、脱皮してぬぎかえながら大きくなります。脱皮の直後は殻が柔らかく、敵におそわれやすい時期です。若いうちは何度も脱皮をくり返し、成長にあわせて殻を新しくします。呼吸は、あしのつけ根にある鰓(えら)でおこないます。子どものころは茶色っぽく、育つにつれて赤みが強くなります。
たくましい暮らし
アメリカザリガニが世界中に広がったのは、きびしい環境にも耐える強さをもっているためです。今では、世界でもっとも広がった外来の生き物の一つに数えられます。ヨーロッパやアフリカ、中国など、多くの国に定着しています。

汚れた水でも生きる
少ない酸素や乾燥に強い
アメリカザリガニは、酸素の少ない汚れた水の中でも生きられます。水が減っても、しばらくのあいだなら乾燥に耐えられます。ふつうの生き物が住みにくい場所でも暮らせることが、数をふやしてきた理由の一つです。
土に巣穴を掘る
ザリガニは、水辺の土に穴を掘って潜みます。水が減る時期や寒い冬には、この巣穴の中でじっとしてしのぎます。田んぼのあぜに穴を掘ると、水がもれる原因になることもあり、農業では厄介な存在とされています。
何でも食べる雑食
アメリカザリガニは、水草・落ち葉・巻貝・水生昆虫など、さまざまなものを食べる雑食です。水草を切りたおして食べるため、水辺の植物を大きく減らしてしまうこともあります。泥をまき上げて水をにごらせ、ほかの生き物の暮らす場所を変えてしまうこともあります。何でも食べる強さが、新しい土地で広がる力にもなっています。
卵と子を守る
腹に卵を抱く
メスは、産んだ卵をおなかのあしにくっつけて運びます。卵は、メスの腹の下で守られながら育ちます。まわりの危険から卵を守るための、母親のしくみです。
子ザリガニも連れて歩く
卵からかえったばかりの子ザリガニも、しばらくは母親の腹にしがみついて過ごします。やがて、少しずつ親からはなれ、自分で暮らし始めます。多くの子を守って育てることも、数をふやす力になっています。まれに、メスだけで卵を残せる場合もあると報告されています。
日本にやってきたザリガニ
今では身近なアメリカザリガニですが、もともと日本にはいませんでした。人の手で持ちこまれ、全国へ広がった生き物です。
ウシガエルの餌として来た
アメリカザリガニが日本に来たのは、1927年のことです。食用のカエルであるウシガエルの餌にするため、アメリカから神奈川県の大船に持ちこまれました。このとき運ばれたのはわずか20匹ほどでしたが、そこからふえて、今では全国の水辺で見られるようになりました。

2023年からの決まり
アメリカザリガニは、2023年6月から「条件付特定外来生物」に指定されました。ペットとして飼うことは、今までどおり認められています。ただし、池や川に放したり、逃がしたりすることは禁止されました。売ることや、お金をとって人にゆずることもできません。そのため、途中で飼えなくなっても、外に放すことはできません。
近縁のニホンザリガニ
日本には、もともとニホンザリガニという在来のザリガニがいます。北海道や東北地方の、冷たくきれいな水に住む小型のザリガニです。アメリカザリガニに追いやられたり、暮らす環境が悪くなったりして数を減らし、絶滅が心配されています。外から来たザリガニが運ぶ「ザリガニカビ病」という病気も、在来種を脅かす一因とされています。また、ウチダザリガニという別の外来のザリガニも、在来種をおびやかす問題になっています。
人とのかかわり
アメリカザリガニは、身近な生き物として親しまれてきました。スルメなどを糸につるして釣る「ザリガニ釣り」は、昔から子どもに親しまれてきた遊びです。いっぽうで、注意すべき点もあります。

食用と寄生虫
ザリガニは、世界の各地で食用にもされています。中国では、ゆでたザリガニが夏の名物として大量に食べられています。ただし、ザリガニの体には、肺に寄生する肺吸虫(はいきゅうちゅう)という虫が潜んでいることがあります。生や加熱の足りないまま食べると、この虫に感染する例が知られています。よく火を通したものでは、その心配は小さくなるとされています。
飼育下でのようす
飼育下では、専用の餌や小魚、野菜などが与えられます。たがいに共食いをすることがあり、水槽では一匹ずつ分けて飼われることも多い生き物です。放されたアメリカザリガニが在来種を減らす一因になっていることも、各地で報告されています。
参考
- Procambarus clarkii(en.wikipedia.org)分類・分布・生態・侵略性
- 環境省「条件付特定外来生物 アメリカザリガニ」規制の内容
- 環境省「アメリカザリガニ対策の手引き」導入の歴史・影響
画像出典
- アイキャッチ:gailhampshire, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Procambarus clarkii)
- ハサミの写真:Andrew C, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Red Swamp Crayfish)
- 水辺の写真:Bernard DUPONT, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(Procambarus clarkii)
- 水槽の写真:Fungus Guy, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Red swamp crayfish, Entomica)


