カシパン

ウニ類(棘皮動物)

カシパンは、平たい円盤のような形をした、ウニの仲間です。とげはごく短く、体はビロードのような手ざわりをしています。浅い海の砂にもぐって暮らし、死んだあとの白い殻は、砂浜でよく拾われます。名前は食べ物のパンにちなみますが、食用にはなりません。

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分類と学名

カシパンは、ウニやヒトデと同じ棘皮動物(きょくひどうぶつ)の仲間です。ウニ綱のなかの、タコノマクラ目に含まれるウニの総称を、カシパンと呼びます。よく知られるハスノハカシパンは、学名を Scaphechinus mirabilis といいます。同じ仲間には、体に穴のあいたスカシカシパンやヨツアナカシパンもいます。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:棘皮動物門 Echinodermata
  • 綱:ウニ綱 Echinoidea
  • 目:タコノマクラ目 Clypeasteroida
  • 例:ハスノハカシパン Scaphechinus mirabilis

和名・英名

  • 和名:カシパン(菓子パン。カシパン類の総称)
  • 英名:sand dollar(サンド・ダラー=砂のコイン)

名前の由来

「カシパン」は、平たくふくらんだ姿が、食べ物の菓子パンに似ていることにちなむといわれます。ハスノハカシパンの「ハスノハ」は、体の裏側にある模様が、ハスの葉の葉脈に似ていることからきています。英語の sand dollar は、白い殻が砂の上のコインのように見えることに由来します。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ直径5〜7cmほど(ハスノハカシパンの場合)
分布北海道南部から九州。朝鮮半島・中国北東部
生息環境浅い海の砂地・砂泥底
食べ物砂の中の有機物(デトリタス)
体の特徴平たい円盤形。とげはごく短い
なかまウニ・ヒトデと同じ棘皮動物

平たいウニ、カシパン

カシパンは、まん丸でとげの長いふつうのウニとは、姿が大きく違います。薄い円盤のような形が、いちばんの特徴です。

砂にひそむカシパン
砂の上に半分うずもれた生きたカシパン。海草のあいだで暮らす

円盤のような体

ごく短いとげでおおわれる

カシパンの体は、上から押しつぶしたように平たい円盤形です。表面は、とても短くて細かいとげで、すきまなくおおわれています。生きているときは、ビロードの布のようになめらか。色は、濃い紫色や褐色をしています。ふつうのウニのような、長くて鋭いとげはありません。

上面の5枚の花模様

体の上の面には、5枚の花びらのような模様が広がります。これは、呼吸や動きに使う「管足(かんそく)」が並ぶ場所です。5つに分かれた形は、ヒトデの5本のうでと同じ、棘皮動物ならではのつくりです。裏側の中心には口があり、そこから5本の溝がのびています。

ウニの仲間である証拠

平たい姿でも、カシパンはまぎれもなくウニの仲間です。5つの方向に分かれる「五放射(ごほうしゃ)」のつくりと、細かな管足。これらが、ウニである証拠になります。体のなかには、ウニと同じような殻(骨格)があります。棘皮動物には、ウニやヒトデのほか、ナマコの仲間も含まれます。カシパンは、そのなかのウニのグループに入ります。

砂の中の暮らし

カシパンは、浅い海の砂の中にもぐって暮らします。平たい体は、砂にもぐるのに向いた形です。

砂にもぐって進む

短いとげで砂を動かす

カシパンは、体じゅうの短いとげを細かく動かして、砂の中を進みます。とげは、砂をかき分けたり、体を運んだりする役目をはたします。とげの表面には細かい毛(繊毛)が生えていて、砂の中を進むのを助けます。平たい体を砂にもぐらせることで、波や天敵から身を守ります。砂の上に、うっすらと体の形が見えることもあります。

砂の中の有機物を食べる

カシパンの食べ物は、砂の中に混じった小さな有機物です。落ち葉や生きもののかけらが分解した「デトリタス」を、砂ごと取りこんで食べます。口は体の裏側の中心にあり、小さな歯で餌をすりつぶします。種類によっては、体を少し立てて、水中をただよう有機物を集めるものも知られています。平たい体は、砂の中でも動きやすく、広い面で餌を集めるのに向いています。海底の掃除役として、砂をきれいにするはたらきもしています。ホッキ貝などが住む砂地に、いっしょに暮らしていることもあります。

分布と生息環境

ハスノハカシパンは、北海道南部から九州までの海に分布します。国外では、朝鮮半島や中国北東部にも見られます。すみかは、波のおだやかな浅い海の砂地です。砂泥底にもぐって、ふだんはあまり姿を見せません。

群れて暮らし、天敵から身を守る

カシパンは、柔らかい砂地に集まって、密集して暮らすことがあります。せまい範囲に、たくさんの個体がならぶこともあります。同じ場所に集まることは、繁殖のときにも役立つと考えられています。砂に潜る暮らしは、天敵から身を守るのにも役立ちます。カシパンは、タラやカレイなどの魚に食べられることが知られています。平たい体を砂にうずめることで、こうした敵に見つかりにくくなります。

ふえ方と一生

カシパンも、ウニやヒトデと同じように、海の中で子孫を残します。そのふやし方には、棘皮動物ならではの特徴があります。

海に卵と精子を放つ

カシパンには、オスとメスがいます。ふえるときには、卵と精子を海の中に放ち、水の中で受精します。たくさんの卵と精子を一度に放つことで、出会う機会を増やしています。親どうしが密集していることも、受精には役立ちます。

幼生から円盤形へ

受精した卵は、プランクトンとして海をただよう幼生になります。幼生は、何度か姿を変えながら、海の中で育ちます。やがて体に殻ができはじめると、海底の砂に降ります。そこから、親と同じ、砂にもぐる暮らしを始めます。

浜辺で拾う白い殻

カシパンは、生きた姿よりも、死んだあとの白い殻のほうがよく知られています。砂浜に打ち上げられ、拾われることも多い殻です。

カシパンの白い殻と1円玉
浜辺で拾ったカシパンの白い殻。1円玉(直径2cm)と比べると大きさがわかる

死ぬと白い殻が残る

とげが取れて白くなる

カシパンが死ぬと、短いとげが抜け落ち、中身もなくなります。あとに残るのは、白くて硬い円盤形の殻です。殻の上面には、5枚の花模様が、くっきりと残ります。砂浜には、この白い殻が打ち上げられていることがあります。

穴のあいた仲間もいる

カシパンの仲間には、体にいくつも穴があいた種もいます。スカシカシパンやヨツアナカシパンは、その名のとおり、殻に細長い穴をもっています。この穴は、砂の中で水や砂を通しやすくするのに役立つと考えられています。同じカシパンでも、種類によって殻の形はさまざまです。

穴のあいたカシパンの殻
ヨツアナカシパンの殻(博物館の標本)。細長い穴が4つあいている

人とのかかわり

カシパンは殻が厚く、食べられる部分もほとんどないため、食用にはなりません。漁で網にかかることはありますが、害をおよぼすこともない生きものです。

拾い集めて楽しむ殻

白い殻は、その整った形から、拾い集めて飾りにされることもあります。花のような模様をもつ殻は、古くから親しまれてきました。また、海の中では、カシパンの殻を利用する生きものもいます。海底のカニのなかには、貝殻などとともに、カシパン類を背中に背負って身を隠すものがいます。

ヘイケガニ
甲羅の凹凸が怒った武者の顔に見える小さなカニ、ヘイケガニ。壇ノ浦に散った平家の伝説、漁師の人為選択説とその反論、背中に貝殻を背負う習性まで、浮世絵もまじえて図鑑としてまとめます。

参考

  • ハスノハカシパン Scaphechinus mirabilis(Wikipedia日本語版)分類・形態・生態・名前の由来
  • カシパン(Wikipedia日本語版)カシパン類の分類・特徴
  • ハスノハカシパン(浅虫海洋生物学教育研究センター・東北大学)形態・生態

画像の出典

  • アイキャッチ(上面の花模様):harum.koh, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 本文(砂にひそむ生体):harum.koh from Kobe city, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
  • 白い殻と1円玉:harum.koh, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • ヨツアナカシパンの殻:Eric A. Lazo-Wasem(Yale Peabody Museum), CC0, via Wikimedia Commons
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