コサックギツネ

コサックギツネ 食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

コサックギツネは、中央アジアの草原や半砂漠に住むキツネです。アカギツネと同じキツネ属の一種で、体は小さく、冬には銀灰色の厚い毛に変わります。巣穴を分け合って暮らし、深い雪を避けて南へ移動する点で、ほかのキツネと違う暮らしを送っています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:イヌ科 Canidae
  • 属:キツネ属 Vulpes
  • 種:コサックギツネ Vulpes corsac

和名・英名

  • 和名:コサックギツネ(コルサックギツネ)
  • 英名:Corsac fox

別名・学名の由来

「コサック」や「コルサック」という名は、この動物を指す中央アジアの言葉に由来します。アカギツネやチベットスナギツネと同じキツネ属(Vulpes)の一員で、こちらは分類上もキツネ属の一員です。学名の corsac も、その現地名から付けられました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ頭胴長 約45〜65cm/尾長 約19〜35cm
体重約1.6〜3.2kg(アカギツネより小さい)
分布中央アジア(モンゴル・中国北部・カザフスタン・ロシア南部など)
生息環境草原(ステップ)・半砂漠。森林や高い山、耕作地は避ける
食べ物おもにネズミ類。ほかにナキウサギ・昆虫・鳥・植物など
寿命野生でおよそ6年ほど(正確にはわかっていない)
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)

IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅のおそれを評価した国際的なリストです。LC(軽度懸念)は、今のところ絶滅の危険が低いと判断された区分です。

コサックギツネの全身
全身の様子。小型で脚は短め。撮影:Kseniya Volyanskaya(CC BY 4.0)

中央アジアの草原のキツネ

コサックギツネは、木の少ない広い草原や半砂漠に暮らします。分布はモンゴルや中国北部、カザフスタン、ロシア南部などに広がります。森林や高い山、人の耕した土地は好みません。夏は暑く冬は厳しく冷えこむ、寒暖の差の大きい土地です。

小さな体と冬の毛

銀灰色になる冬毛

体の毛は、灰色から黄色みをおびた色をしています。冬になると毛は厚く柔らかくなり、藁(わら)のような銀灰色に変わります。背の中央には、色の濃い筋が通ります。厳しい寒さの草原で冬を越すための、しっかりした毛皮です。夏の毛は短く色合いも地味で、冬の毛とは見た目がかなり変わります。

銀灰色のコサックギツネ
銀灰色がかった体毛。撮影:Safina Rezeda(CC BY 4.0)

短い脚と白いのど

体はアカギツネよりひとまわり小さく、脚は短めです。口のまわりやあご、のどは白っぽくなります。視覚や聴覚、嗅覚(きゅうかく)がよく発達し、開けた草原で獲物や敵をいちはやく察します。走る速さはあまりなく、イヌや大型の猛禽(もうきん)に追われると捕まりやすいとされます。そのぶん、危険がせまると近くの巣穴へ逃げこみます。

草原と半砂漠に住む

すみかに選ぶのは、見通しのよい開けた土地です。低い草がまばらに生える草原や、乾いた半砂漠が中心になります。餌を捕るにも、巣穴を掘るにも都合のよい環境。

巣穴を分け合う暮らし

コサックギツネの暮らしは、巣穴と深く結びついています。多くのキツネが子育てのときだけ巣穴を使うのに対し、コサックギツネは一年を通して巣穴を利用します。地面の下は、夏の暑さや冬の寒さ、強い風からも身を守ってくれる場所です。

草原のコサックギツネ
ロシアの草原に住むコサックギツネ。撮影:Larisa Artemyeva(CC0)

巣穴の使い方

自分で掘り、ほかの動物の穴も借りる

巣穴は自分でも掘りますが、あまり深くはなく、たいてい1mより浅いものです。マーモットやジリス、アナグマといったほかの動物が掘った穴を、そのまま使うこともよくあります。一つの巣穴には、出入り口がいくつもあることがあります。浅い巣穴は、敵に追われたときの逃げこみ先にもなるとされます。

巣穴がつながった「コルサック・シティ」

コサックギツネの巣穴は、複数がまとまって作られることがあります。いくつもの巣穴と、それらをつなぐ穴が集まった様子は、英語で「コルサック・シティ(コサックの町)」と呼ばれます。こうした巣穴を、仲間どうしで分け合って使うことが観察されています。使われなくなった巣穴は、ほかの小さな動物のすみかになることもあります。

群れで暮らすことも

多くのキツネが単独か、つがいで暮らすのに対し、コサックギツネは小さな群れをつくることがあります。決まったなわばりを強く守らず、巣穴を共にすることもあります。互いに激しく争うことは少なく、近い場所でおだやかに暮らすとされます。巣穴を分け合う仲間どうしは、互いに近い場所で子を育てることもあります。厳しい環境で身を守るうえで、こうした暮らし方が役立っていると考えられています。

雪を避けて移動する

コサックギツネの一年は、雪に大きく左右されます。獲物のネズミは雪の下にもぐるため、雪が深くなると狩りがむずかしくなるのです。

深い雪と冬ごし

雪の下の獲物を捕れない

コサックギツネは、深く積もった雪の中をかき分けて狩りをするのが得意ではありません。雪が深い時期には、巣穴にこもって寒さと雪をしのぐこともあります。雪の下にもぐったネズミを掘り出すには、大きな力と時間がかかります。餌が捕れない日が続くと、生き残りは厳しくなります。

南へ最大600km

分布の北のほうに住むものは、冬に南へ移動することがあります。その距離は、最大でおよそ600kmにおよぶとされています。雪の少ない土地へ移り、春になるとまた元の地域へ戻ります。多くの個体が一斉に南下する年もあり、古くから人の記録に残されてきました。決まったなわばりを持たない暮らしが、この移動を可能にしています。

何を食べるか

コサックギツネは、おもに小さな動物を食べる肉食寄りの雑食です。夜から薄明かりの時間帯にかけて、においや音を頼りに獲物を探します。食べ物の中心は、草原に多いネズミ類です。ほかにナキウサギや昆虫、鳥の卵やひな、ときには植物も口にします。水の乏しい土地では、獲物から水分を取って、水を飲まずに過ごすこともあります。

立つコサックギツネ
立ち姿。撮影:Wim Stam(パブリックドメイン)

繁殖と子育て

繁殖期は、冬の終わりごろとされます。つがいは巣穴で子を産み、一度の出産で生まれる子は、およそ2〜6頭とされます。多いときには、さらに増えることもあります。生まれたばかりの子は目が開いておらず、しばらくは母親の乳で育ちます。子は巣穴の中で育ち、両親が餌を運びます。生後2週間ほどで目が開き、やがて巣穴の外へ出るようになるとされます。夏のあいだに狩りを覚え、秋には親のもとを離れて独り立ちしていきます。

毛皮と数の移り変わり

毛皮のための狩り

コサックギツネの厚い冬毛は、古くから毛皮として利用されてきました。とくに冬毛の質が高く、かつては多くの数が毛皮のために捕らえられてきたと伝えられています。日本で飼育している施設はごく限られますが、海外の動物園では見られることがあります。IUCNのレッドリストでは軽度懸念(LC)とされ、種全体としては今のところ安定しています。

厳しい冬と数の変動

コサックギツネの数は、年によって大きく変わります。雪の多い厳しい冬が続くと、餌がとれずに数が減ります。多い年と少ない年では、数が十倍ほども違うことがあるとされています。毛皮のための狩りと厳しい冬の両方が、その数を大きく揺らしてきました。

ほかのキツネとのつながり

コサックギツネは、アカギツネやチベットスナギツネと同じキツネ属の仲間です。

アカギツネ
アカギツネは、北半球でもっとも広く分布するイヌ科のキツネです。日本ではキタキツネとホンドギツネの二亜種に分かれます。雑食の狩り・子育て、そして北海道のエキノコックスと予防まで、正確に図鑑としてまとめました。
チベットスナギツネ
チベット高原の高地に住むチベットスナギツネ。頬の毛が横に張り出した四角い顔と、主な獲物のナキウサギ、ヒグマと歩く狩りについて紹介します。
キツネ【総合】
キツネは、イヌ科に属する小型から中型の雑食の動物です。尖った鼻先と、ふさふさとした長い尾が目印。世界には約37種がいて、日本にはキタキツネやホンドギツネが住んでいます。古くから稲荷神の使いとされ、人を「化かす」動物としても語られてきました。...

参考

  • IUCN Red List: Vulpes corsac(Corsac Fox)評価ページ
  • Clark, H. O. Jr. ほか, “Vulpes corsac”, Mammalian Species(American Society of Mammalogists)
  • Animal Diversity Web(ミシガン大学): Vulpes corsac の解説
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