コイは、池や川に広く住む、身近な淡水魚です。目印は、丸みのある大きな体と、口もとの2対のひげ。庭の池を彩る色あざやかな錦鯉から、川底に潜む茶色の野生のコイまで、その姿はさまざまです。日本人にとっては昔からなじみ深く、絵や祭り、ことわざにも登場します。
コイは丈夫で、少しくらい汚れた水や、酸素の少ない水でも生きられます。何でもよく食べ、大きく育ち、長生きすることでも知られます。フナとの見分け方や、色あざやかな錦鯉が生まれたいきさつ、飼い方までを順に見ていきます。
分類と学名
分類階層
コイは、コイ目コイ科に入る魚です。学名は Cyprinus carpio といいます。金魚やフナも同じコイ科の仲間で、姿がよく似ています。観賞用の錦鯉も、もとをたどれば食用に飼われていたコイと同じ種類です。
同じコイ科の仲間には、身近な観賞魚の金魚もいます。

- 目:コイ目
- 科:コイ科
- 属:コイ属
- 種:コイ(Cyprinus carpio)
名前と別名
色や模様で選び育てられたコイは、「錦鯉(にしきごい)」と呼ばれます。「錦」は、美しい織物をさすことばです。その美しさから、海外でも「Koi」の名で親しまれています。一方、色のつかない野生のコイは「野鯉(のごい)」や「真鯉(まごい)」と呼ばれます。ふだん「コイ」というときは、この地味な野生の姿と、あざやかな錦鯉の両方をさしています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約60cm(大きいものは1mをこえる) |
|---|---|
| 分布 | ユーラシア原産。今では世界の広い地域に移入 |
| 生息環境 | 流れのゆるやかな川・池・湖・用水路 |
| 食べ物 | 水草・貝・虫・小さな生き物・底の泥の中のものなど(雑食) |
| 目印 | 口もとの2対(4本)のひげ、丸みのある大きな体 |
| 寿命 | およそ20〜40年(もっと長生きする例もある) |
フナとの違いはひげ
コイとフナは、どちらも同じコイ科で、見た目はよく似ています。けれども、口もとを見れば見分けられます。いちばんの決め手は、ひげのあるなし。コイはフナよりも大きく育ち、体つきもがっしりしています。とはいえ、若いコイと大きなフナは似ていて、まぎらわしいこともあります。

口もとの4本のひげ
ひげのはたらき
コイの口には、上くちびるのあたりに2対、あわせて4本のひげがあります。よく似たフナや金魚には、このひげがありません。ひげには、味やにおいを感じとるはたらきがあると考えられています。濁った水や、暗い川底でも、ひげを使って食べ物をさがせます。
底の泥をさぐる口
コイの口は、下へ向かって伸び縮みするようにできています。この口を管のように突き出して、川や池の底の泥をさぐります。泥ごと吸いこみ、食べられるものだけをより分けて、いらないものは吐き出します。底をかき回して食事をするため、水を濁らせることもあります。
観賞用に育てられた錦鯉
コイといって多くの人が思い浮かべるのは、赤や白、黒などの模様が美しい錦鯉でしょう。この色あざやかなコイは、自然に生まれたのではなく、人の手で長い時間をかけて育てられてきました。

色と模様が生まれるまで
山あいの村で生まれた
錦鯉は、今の新潟県の山あいの村々で生まれたと伝えられます。食用に飼われていたコイのなかに、ときどき赤や白の色がまじる個体が現れました。その色を持つコイどうしをかけ合わせ、長い年月をかけて美しい模様が作り出されていきました。今では新潟は、錦鯉のふるさととして世界に知られています。

さまざまな品種
錦鯉には、数えきれないほどの品種があります。白地に赤い模様の「紅白」、そこに黒を加えた「大正三色」や「昭和三色」などが、代表としてよく知られています。金色や銀色に光るものや、うろこの少ないドイツ生まれの系統など、変わった姿のものもいます。今も新しい品種が作り出されていて、その種類はますます増えています。色のあざやかさや模様のととのい方、体つきのよさによって、その値打ちは大きく変わります。

長生きする魚
何十年も生きる
コイは、魚のなかでも長生きするほうです。ふつうでも20年から40年ほど、大切に飼えば、それより長く生きることもあります。一説では、二百年以上生きたコイがいたとも伝えられますが、確かなことは分かっていません。よく世話をされたコイが、飼い主の家で代がわりを見守るように生き続けた話も、各地に残っています。長い年月を人とともに過ごせる点も、コイが親しまれてきた理由のひとつです。
丈夫で何でも食べる
コイは、とても丈夫な魚です。水温の変化に強く、少しくらい酸素が少なくても平気で、汚れた水にもよく耐えます。この強さが、世界の広い地域に広がっていった理由のひとつです。
水の底をさらう食事
コイは雑食で、水草・貝・虫・小さな生き物など、何でもよく食べます。底の泥の中にいる生き物も、口で吸い出して食べます。決まった胃を持たないため、少しずつ絶えず食べ続ける魚です。えさを求めて底をかき回すので、水草を根こそぎにしたり、水を濁らせたりすることもあります。

春にたくさんの卵を産む
水草に産みつける卵
コイは、水がぬるむ春から初夏にかけて卵を産みます。メスは、一度にたくさんの小さな卵を水草にまきつけるように産みつけます。その数は、大きなメスで数十万におよぶほどです。オスがそこに精子をかけて受精させ、卵は水草にくっついたまま育ちます。
卵は数日でかえり、小さな稚魚が泳ぎ出します。親は卵や稚魚の世話をしません。産みっぱなしにする魚です。たくさん産むぶん、多くは他の生き物に食べられますが、生き残ったものが育っていきます。丈夫でよく増えるこの性質が、コイが各地に広がる力にもなっています。
人とのかかわり
出世と縁起の魚
コイは、力強さや出世の象徴として、古くから大切にされてきました。中国には、コイが川の急な流れをのぼりきると龍になる、という言い伝えがあります。この話から、難しい関門を突破することを「登竜門」と呼ぶようになりました。日本で子どもの日にあげる「こいのぼり」も、子がたくましく育つようにとの願いがこめられています。滝をのぼるコイを描いた絵は、今も縁起のよいものとして親しまれています。
外来種としての一面
丈夫でよく増えるコイは、世界のあちこちに持ちこまれてきました。ところが、もともといなかった場所に住みつくと、底をかき回して水を濁らせてしまいます。水草や他の生き物を減らすこともあります。そのため、世界で問題になっている外来種のひとつに数えられています。飼っているコイを川や池に放すと、こうした問題につながる行いです。
飼い方
池で飼う魚
何を食べさせるか
コイは雑食なので、コイ用の人工の餌を中心に、さまざまなものを食べます。大きく育つ魚なので、それに見合った広さと、きれいな水を保つ設備が欠かせません。庭に池をつくって飼われることが多いのは、大きな体でのびのびと泳がせるためです。水の温度が下がる冬には、コイはあまり食べずに、じっとして過ごします。
錦鯉の値段
錦鯉の値段は、色や模様のできばえで大きく変わります。手ごろな値段で買えるものがある一方、品評会で高く評価される名鯉には、たいへんな高値がつきます。美しい一匹を求めて、海外から買いにくる人も少なくありません。錦鯉は、日本から世界へ広がった観賞魚として、今も高い人気を集めています。
どこで会えるか
コイは、身近な川や池、公園の水辺などでごくふつうに見られます。神社やお寺の池や日本庭園は、色あざやかな錦鯉に出会える場所です。えさやりができる池では、口を大きく開けて集まってくるようすを間近で見られます。水がすんだ川では、底のほうをゆっくり進む大きな影として見つかることもあります。野生の茶色いコイと、人が育てた錦鯉では、姿の違いがよく分かります。

関連ページ





参考
- Wikipedia「コイ」「Common carp」
- Encyclopædia Britannica「Carp」
- 新潟県・錦鯉関連資料 ほか
画像出典
- Bernard Spragg. NZ, CC0, via Wikimedia Commons
- Viridiflavus, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Martin Kammerer, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Asturio Cantabrio, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Arden, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- W.carter, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Bernard Spragg. NZ, Public domain, via Wikimedia Commons


