シロハラ

シロハラの成鳥・全身と黄色アイリング 小型陸鳥

シロハラは、体長24〜25cmでツグミとほぼ同じ大きさの中型のツグミ属の鳥です。学名は Turdus pallidus。冬鳥として日本列島全域に渡来し、11月から翌年3月ごろにかけて都市公園・雑木林・河川敷などで観察されます。名前のとおり腹側が白く、地味な茶色の背中と対比する姿が特徴です。

落ち葉をひっくり返しながら地上を歩き回り、下の虫やミミズを探す独特の採食スタイルで知られます。ガサガサと落ち葉をかきわける音でその存在に気づくことも多く、藪の暗がりから林縁の芝生に出てくる姿がバードウォッチングの定番になっています。近縁のアカハラやツグミと混同されがちですが、腹の白さと目の周りのアイリングで見分けが可能です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:ヒタキ科 Muscicapidae(旧分類ではツグミ科 Turdidae)
  • 属:ツグミ属 Turdus
  • 種:シロハラ Turdus pallidus

和名・英名

  • 和名:シロハラ(白腹)
  • 英名:Pale Thrush(ペイル・スラッシュ)

別名と名前の由来

  • 和名「シロハラ」:腹側が白いことに由来する率直な命名。アカハラ(赤腹)・マミチャジナイ・トラツグミなどと同じく、ツグミ属の識別で「腹の色」が有力な特徴になるため、そこを直接名前にした形です。
  • 英名「Pale Thrush」:「淡い色のツグミ」の意味。全体的な体色が近縁種より淡くくすんだ印象であることに由来します。
  • 属名 Turdus:ラテン語で「ツグミ」の意味。ヨーロッパでも古くから馴染みの深い鳥で、この属名は世界中のツグミ類(マミチャジナイ・クロウタドリ・アメリカコマドリなど)に共通して使われます。
  • 種小名 pallidus:ラテン語で「淡い・青ざめた」の意味。腹の白さと全体のくすんだ色合いに由来する種名です。

大きさ・生息などの基本データ

大きさ全長 約24〜25cm(ツグミとほぼ同じ・ヒヨドリより一回り小さい)/翼開長 約39〜42cm/体重 約60〜90g
体色オス:頭部が暗い灰褐色/背〜翼が茶褐色/喉が黒っぽく灰色/胸〜脇腹はオリーブ褐色/腹の中央から下腹が白/目の周りに黄色いアイリング/メス:オスに似るが頭部の灰色が薄く全体的にやや淡い/喉の黒みも弱い
分布繁殖地:ロシア極東(沿海州・アムール地方)・中国東北部/越冬地:日本列島全域・朝鮮半島南部・中国南部・台湾/日本には冬鳥として渡来(一部が対馬・佐渡・北海道南部で繁殖する記録あり)
生息環境越冬期:低地の常緑広葉樹林・雑木林・都市公園・河川敷の林・住宅地の緑地・神社の森/地面に落ち葉が積もり下草が茂る場所を好む
食性雑食性/地上でミミズ・昆虫・クモを主に捕食/秋〜冬は木の実(ムクノキ・エノキ・センダン・ピラカンサ)もよく食べる/落ち葉をくちばしでひっくり返して下の生物を探す独特の採食行動
繁殖大陸の繁殖地では5〜7月に繁殖/樹上に椀状の巣を作る/1腹3〜5個の卵/日本国内では基本的に繁殖しない(渡来のみ)
鳴き声地鳴き:「ツィッ」「クワッ」「シー」など短く鋭い声/さえずり:「キョロン・キョロン・キーキョロキョロ」(大陸の繁殖地で聞かれる)/日本では越冬期はほぼ地鳴きのみ
寿命野生で数年程度と推定される
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)/日本の越冬個体数は安定/冬期の身近な野鳥として広く観察される
シロハラ・落ち葉の上を歩く姿
harum.koh, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(落ち葉の上を歩くシロハラ・神戸市)

白い腹と黄色いアイリングが特徴

腹の白さ─和名そのままの識別点

胸から下腹へのグラデーション

シロハラの最大の特徴は、腹の中央から下腹にかけての白さです。ツグミ属の鳥はどれも背中が茶褐色で似ていますが、シロハラは腹側の白が広く目立ちます。地上で立ち止まったときに正面からのぞきこむと、胸のオリーブ褐色から腹の白へのグラデーションがはっきり見えます。

飛び立つ瞬間に見える白い腹

藪の中や下草でじっとしている個体は背中の茶褐色ばかりが目立ち、シロハラと確信しづらいことがあります。しかし驚いて飛び立つ瞬間、胴体の下面が視野をよぎる形になり、腹の白さがチラッと見えるのが決定的な手がかりです。飛翔中の腹面はとくに白く目立ち、他のツグミ類と区別しやすくなります。

目の周りの黄色いアイリング

ノジコとは別の「アイリング」

シロハラは目の周りに細い黄色のアイリング(眼瞼輪)を持ちます。同じアイリングを持つ小鳥にホオジロ科のノジコがいますが、両者は大きさ(シロハラ25cm・ノジコ14cm)と体色(シロハラは腹が白・ノジコは腹が黄色)で全く別物と区別できます。アイリングは近距離で見えれば決定的な識別点で、双眼鏡で目の周りに黄色い縁取りが確認できたらほぼシロハラです。

くちばしの色も参考に

くちばしは基部が黄色く先端が黒っぽい2色構成で、これもシロハラらしさを添える特徴です。顔全体の暗い灰褐色の中で、黄色のアイリングと黄色いくちばし基部が明るく浮かび上がる配色になっています。

シロハラ・樹上で黄色いアイリングと腹の白が見える
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(樹上・愛知県)

似た近縁種との見分け方─アカハラ・ツグミとの違い

アカハラとの違い

腹側の色が決定的

シロハラと最もよく混同されるのが同じツグミ属のアカハラ(Turdus chrysolaus)です。両者は大きさ・体型・生息環境がほぼ同じで、動きも似ています。決定打は腹側の色です。

比較項目シロハラアカハラ
腹側の色白(下腹は真っ白)オレンジ色〜赤褐色(胸〜脇腹が鮮やか)
頭部の色灰褐色暗褐色(オリーブ色寄り)
日本での位置づけ冬鳥として全国に渡来本州中部以北で夏鳥として繁殖/冬は南に移動
アイリング明瞭な黄色薄い黄色

ツグミ・マミチャジナイとの違い

ツグミは同じくらいの大きさで冬鳥として一緒に観察されますが、胸から脇腹にかけて黒褐色の斑点が密に並ぶのが最大の特徴で、シロハラの単色の胸腹とは印象が大きく異なります。マミチャジナイはシロハラより一回り小さく(21〜22cm)、目の上に白い眉斑(まみ)が明瞭に走るのが決定的な違いです。「腹の斑点=ツグミ/白い眉線=マミチャジナイ/白い腹+黄色アイリング=シロハラ」で覚えると混同しにくくなります。

シロハラの成鳥・地上採食中の姿
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(成鳥・愛知県)

落ち葉をひっくり返す独特の採食

ガサガサ音でわかる

くちばしで落ち葉をひっくり返す

シロハラは地上で採食する時間が長い鳥で、くちばしで落ち葉を器用にひっくり返しながら、下に潜むミミズ・昆虫・クモを探します。この採食行動は「シロハラらしさ」の代表で、林床でガサガサと落ち葉をかきわける音が続いていたら、そこにシロハラがいる可能性が高いと判断できます。

姿より先に音で気づける

藪や下草の陰にいる個体は姿を見つけにくいものの、落ち葉をかき回す独特のリズムある音は遠くまで届きます。冬の雑木林で「動物にしては小刻みで、ネズミやトカゲにしては音が大きい」と感じたら、まずシロハラを疑ってみる価値があります。この音を頼りに双眼鏡を構えると、藪の縁にひょっこり出てくる姿を捉えやすくなります。

冬は木の実にも依存

秋から冬にかけては地面の虫が減るため、ムクノキ・エノキ・センダン・ピラカンサ・ネズミモチなどの果実もよく食べます。とくに公園や街路樹にセンダンやピラカンサが植えられている場所では、実の熟した季節にシロハラが集まる光景がよく見られます。ヒヨドリやツグミと同じ木で採食することもあり、冬の果実は多くの鳥にとって共通の重要資源です。

シロハラがミミズを捕食する場面
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(ミミズを捕食するシロハラ・愛知県)

鳴き声と季節─冬鳥としての行動

越冬期の地鳴き「ツィッ」「クワッ」

日本にいる11〜3月のシロハラは、基本的にさえずりを聞かせません。聞こえるのは短く鋭い地鳴きで、飛び立つときの「クワッ」「キャッ」、藪の中での「ツィッ」「シー」などが代表的です。とくに驚いたときの「クワッ」は独特な調子で、姿が見えなくてもこの声で存在に気づけます。単独行動が基本ですが、緩やかな群れで一斉に飛び立つ場面も観察されます。

繁殖地でのさえずり

春に大陸の繁殖地に戻ると、オスは「キョロン・キョロン・キーキョロキョロ」といった澄んだ節回しでさえずります。日本国内でこの声を聞ける機会は限定的ですが、春先の渡り前や、対馬・佐渡・北海道南部の一部繁殖記録地では観察例があります。

渡りの時期

本州以南への渡来は10月下旬〜11月上旬に始まり、春の北帰は3月下旬〜4月上旬にかけて起こります。ちょうど冬鳥のツグミ・ジョウビタキ・アオジと同じ渡り期で、これらの鳥と一緒に日本の冬を彩る代表種です。年によって渡来数に変動があり、木の実の豊凶(ムクノキ・エノキなどの結実状況)が個体数の集中に影響すると考えられています。

シロハラ・樹上で羽を休める姿
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(樹上・愛知県)

冬に会える場所

都市公園と神社の森が定番

シロハラは都市部でも観察しやすい冬鳥です。とくに次の環境がよく知られる観察地です。

  • 常緑広葉樹の生えた都市公園(皇居のお堀・明治神宮・新宿御苑・大阪城公園など)
  • 神社の森・寺の境内(下草と落ち葉が豊富)
  • 河川敷の林縁・雑木林
  • 住宅地の緑地・広めの庭
  • センダン・ピラカンサなど実のなる木がある公園

観察のコツ

シロハラは警戒心が強く、藪の中に隠れがちです。落ち葉の音を頼りに近づき、藪の縁でじっと待つと林床に出てくる姿を捉えやすくなります。急に飛び立つと「クワッ」と鳴いて木の枝に飛び移ることが多く、そこで双眼鏡を構えて腹の白さとアイリングを確認するのが定番の観察スタイルです。単独〜数羽の分散行動が基本で、ツグミのような密集した群れは作らないと考えられています。

シロハラ・センダンの実をくわえる姿
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(センダン Melia azedarach の実を採食するシロハラ・愛知県)

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