アオジ

アオジのオス・胸腹の黄色と灰緑の頭 小型陸鳥

アオジは、体長14〜16cmのスズメより一回り小さいホオジロ科の小鳥です。学名は Emberiza personata(旧 Emberiza spodocephala personata の亜種扱いから近年独立種として区分される見解も出ています)。オスは頭が緑がかった灰色、胸から腹にかけて鮮やかな黄色に染まる姿で、日本の身近な野鳥の中でも黄色味の強い代表種として知られます。

本州中部以北の平地〜山地の林縁や藪で繁殖し、冬になると本州以南の平地・都市公園・河川敷にも降りてきて越冬します。地味な茂みの中でチッチッと地鳴きしながら草の実をついばむ姿がよく観察され、探鳥入門者にも見つけやすい鳥のひとつです。名前は「青」でも、実際の体色は黄色と灰緑が中心で、和名の「アオ」は古典語の広い意味での「アオ(青緑〜灰緑)」に由来しています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:ホオジロ科 Emberizidae
  • 属:ホオジロ属 Emberiza
  • 種:アオジ Emberiza personata(伝統的には Emberiza spodocephala personata の亜種扱い)

和名・英名

  • 和名:アオジ(青鵐)
  • 英名:Masked Bunting(マスクト・バンティング)/旧扱いでは Black-faced Bunting の亜種

別名と名前の由来

  • 和名「アオジ」:漢字表記は「青鵐」。「鵐(じ)」はホオジロ科の小鳥を指す古い漢字で、アオジ・クロジ・ノジコなど「◯ジ」の名で呼ばれる仲間の総称的な字です。「アオ」は古典日本語の色名で、現代の「青」より広く緑〜灰緑〜青緑を指すため、アオジの灰緑色の頭部と黄緑がかった羽色に付けられた名前と考えられます。
  • 英名「Masked Bunting」:オスの顔がやや黒っぽい”仮面”のように見えることに由来。かつては Black-faced Bunting(黒顔のホオジロ)の日本亜種扱いで、両方の英名が現在も並記されます。
  • 属名 Emberiza:ヨーロッパの古語でホオジロ類を指す言葉。ホオジロ科の学名の基準になっている属です。
  • 種小名 personata:ラテン語で「仮面をつけた」の意味。オスの顔が黒く縁取られる特徴に由来します。

大きさ・生息などの基本データ

大きさ全長 約14〜16cm(スズメより一回り小さい)/翼開長 約22〜24cm/体重 約16〜25g
体色オス(成鳥):頭部〜後頸が緑がかった灰色/目先とあごが黒っぽい/背は褐色に黒い縦斑/胸〜腹が鮮やかな黄色/脇腹に暗色の縦斑/メス:頭部の緑灰色が薄く全体に淡い黄褐色/眉斑が目立つ/若鳥:メスに似てさらに全体が地味
分布繁殖地:北海道・本州中部以北の平地〜山地/越冬地:本州以南の平地/東アジア広域(ロシア極東・中国東北部・朝鮮半島)
生息環境繁殖期:山地の林縁・草原・伐採跡地の藪/越冬期:低地の林縁・公園・河川敷・畑・住宅地の生け垣
食性植物食が中心/草の種子(イネ科・タデ科など)/繁殖期は昆虫・クモも捕える/地上で草の実をついばむのが主な採食スタイル
繁殖5〜7月に繁殖/地上や低木の根元に椀状の巣を作る/1腹4〜5個の卵/抱卵は主にメス(約12〜14日)/育雛は雌雄で行う
鳴き声さえずり:「チョッピーチョピチュルル」など複雑な澄んだ節回し/地鳴き:「チッ」「チッチッ」と鋭い一音
寿命野生で数年程度と推定される
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)/日本国内では広く安定的に見られる/越冬期は都市公園にも降りる
アオジのオス・胸腹の黄色が鮮やか
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(オスの成鳥・三重県)

オスとメスで大きく違う姿

オスは頭が灰緑・胸腹が黄色

「仮面」のような黒い顔

アオジのオスは頭部から後頸が緑がかった灰色(オリーブ灰色)で覆われ、その中で目先とあご付近だけが黒く染まります。この「仮面」のような黒い顔が英名 Masked Bunting および学名 personata(仮面をつけた)の由来です。首から下は褐色の背中と鮮やかな黄色の胸腹が対比を作り、林縁の茂みの中でも目につきやすい配色になります。

脇腹の縦斑もオスの目印

オスは脇腹に暗褐色の縦斑(縞模様)が入り、これも識別のよい手がかりです。頭の灰緑・胸腹の黄・脇腹の縦斑という3点セットが揃えば、ほぼ間違いなくオスと判断できます。

メスは全体が淡い黄褐色

メスはオスに比べて全体的に地味で、頭部の緑灰色は薄く、黄色味も淡く控えめに広がります。眉斑(目の上の白っぽい線)が目立つのがメスの特徴で、褐色系の体色にこの眉斑が浮かびます。若鳥もメスに似た色合いで、成鳥のオスに換羽する前は識別に時間がかかる場合があります。

アオジのメス・全体的に淡い黄褐色
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(メスまたは若鳥・愛知県)

似た小鳥との見分け方─ノジコ・ホオジロとの違い

最大の混同はノジコ

アイリング(目の周りの白い輪)で区別

アオジと最もよく混同されるのがノジコ(野路子・Emberiza sulphurata)です。両者は同じホオジロ属で、大きさも黄色い胸腹も似ています。決定的な違いは「目の周りの白いアイリング」の有無です。

比較項目アオジノジコ
目の周りアイリングなし白い明瞭なアイリングあり
脇腹の縦斑あり(オスで明瞭)なし(またはごく薄い)
分布広い(本州以北の平地〜山地)限定的(本州中部の一部・準絶滅危惧種)
全体の黄色味胸腹に集中全身がより一様に黄緑がかる

ノジコは環境省レッドリストで準絶滅危惧種(NT)に指定される希少種で、観察機会自体が少ない鳥です。「黄色い小鳥=アオジ」と考えて大きく外れることはありませんが、双眼鏡で目の周りにはっきりした白い輪が確認できたらノジコの可能性を疑ってください。

ホオジロ・カシラダカとの違い

同じホオジロ科のホオジロは、頬の白斑と黒い縦線が顔にはっきり出て、腹は黄色でなく赤褐色〜白です。カシラダカも同じ仲間ですが、頭に短い冠羽(三角の羽)が立つのが最大の特徴で、腹は白っぽく黄色味がありません。「黄色い腹=アオジ/ノジコ」「白い腹に頬の白斑=ホオジロ」「頭にとんがり=カシラダカ」で覚えると混同しにくくなります。

繁殖と鳴き声

5〜7月に繁殖・地上に椀状の巣

アオジの繁殖期は5〜7月です。地上や低木の根元、笹薮の中などに枯れ草・細根を組んだ椀状の巣を作り、1腹に4〜5個の卵を産みます。卵は淡緑色の地に暗褐色の斑があり、抱卵は主にメスが担当します。約12〜14日で孵化し、育雛は雌雄で分担します。

鳴き声のバリエーション

さえずり─繁殖期の複雑な節回し

繁殖期のオスのさえずりは「チョッピーチョピチュルル」や「チョッチョッ、ピーチュルル」のように、澄んだ音を複雑に組み合わせる節回しです。個体差が大きく、一羽ずつ聞き取ると微妙にパターンが違うことも観察されています。低木のてっぺんや電線に止まって長時間さえずり続けるため、繁殖期は姿を見つけやすい鳥です。

地鳴き─越冬期の「チッ」

越冬期の地鳴きは「チッ」「チッチッ」と短く鋭い一音で、藪の中から聞こえてきます。姿は見えないが地鳴きだけ聞こえる状況が多く、この一音を覚えると冬の公園や河川敷でアオジの存在に気づけるようになります。しばしば数羽が緩やかにまとまって行動し、藪の中を移動する声が続けざまに聞こえることがあります。

アオジのオス・採食する姿
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(採食するオス・愛知県)

冬に出会える場所

越冬期は都市公園・河川敷でも見られる

アオジは繁殖期には山地の林縁が中心ですが、越冬期(11月〜3月)には本州以南の低地に降りてきて、都市公園・河川敷・農耕地・住宅地の生け垣といった身近な場所でも観察できるようになります。とくに次の環境が定番の観察地です。

  • 都市公園の藪や下草がある一角(皇居のお堀・明治神宮・大阪城公園など)
  • 河川敷のヨシ原・低木のある水辺
  • 雑木林の林縁・落ち葉の積もった林床
  • 畑の畔や休耕田の草地
  • 公園の生け垣・住宅地の茂み

地面採食に注目

アオジは地上で採食する時間が長い鳥です。落ち葉をひっくり返しながら草の種子を探し、驚くと藪の中に飛び込みます。「藪から地面に出てくる小型の褐色〜黄褐色の鳥」を落ち着いて双眼鏡で追うと、胸腹の黄色や脇腹の縦斑が確認でき、アオジと判別しやすくなります。単独〜数羽の小群でいることが多く、大きな群れにはなりません。

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参考

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