ヒグマ

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

ヒグマは、世界でいちばん大きな部類に入るクマです。日本では北海道だけにすむエゾヒグマがこの仲間で、日本の陸にすむ動物のなかで最も大きな動物です。力はとても強いものの、食べものの多くは植物です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目(ネコ目)Carnivora
  • 科:クマ科 Ursidae
  • 属:クマ属 Ursus
  • 種:ヒグマ Ursus arctos

和名・英名

  • 和名:ヒグマ(漢字で「羆」)
  • 英名:Brown bear(北アメリカのものは Grizzly bear とも)

名前の由来

「ヒグマ」の名前の由来には、いくつかの説があります。毛の色が赤茶色っぽいことから、「緋(ひ/赤い色)のクマ」が縮まったとする説がよく知られます。漢字の「羆」は、一字でヒグマを表す古い字です。学名の Ursus arctos は、ラテン語とギリシャ語で、どちらも「クマ」を意味する言葉を重ねたものです。英語の Brown bear は「茶色のクマ」という意味です。

各地の亜種

ヒグマは北半球に広く分布し、地域ごとにいくつかの亜種に分かれます。北アメリカ内陸の「グリズリー」、アラスカにすむ最大級の「コディアックヒグマ」、ユーラシアの「ヨーロッパヒグマ」などが知られます。日本の北海道にすむのは「エゾヒグマ」です。同じヒグマでも、海ぞいでサケを食べる個体は大きく、内陸の個体はやや小さめになる傾向があります。グリズリーは、このうち北アメリカ内陸にすむ亜種を指す呼び名です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体重 約80〜600kg(地域差が大きい。海岸ぞいの大型個体はさらに重い)
分布ユーラシア・北アメリカの北部。日本では北海道のみ
生息環境森・山・川ぞいなど
食べもの雑食(およそ9割が植物。ほかに魚・昆虫・動物)
走る速さ時速 約50km(人より速い)
寿命野生で20〜30年ほど
保全状況IUCN: LC(軽度懸念。地域によっては危機)

日本最大の陸の動物

草地を走るヒグマ
大きな体で力強く走るヒグマ(Malene Thyssen, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons)

エゾヒグマは日本最大

北海道のエゾヒグマは、日本の陸にすむ動物のなかで最も大きな動物です。大きなオスは体重400kgを超えることもあります。世界に目を向けると、アラスカのコディアックヒグマはさらに大きく、700kgに達する個体も知られています。ホッキョクグマとならぶ、陸で最大級の肉食のなかまです。

掘る力と、するどい鼻

ヒグマの肩には、大きな筋肉のもり上がり(こぶ)があります。このこぶは、クマの仲間ではヒグマだけが持つ特徴です。こぶが生む力と、7cmを超える太いツメで、土を深く掘り返せます。この掘る力は、根や虫をほり出したり、冬眠の穴をつくったりするのに役立ちます。鼻もとてもよくきき、数km先の食べもののにおいをかぎ分けるといわれます。

力の強さと、走る速さ

ヒグマは、日本の陸にすむ動物のなかで、最も力の強い動物です。太い前足の一撃や、大きなあごのかむ力で、自分より大きな獲物をたおすこともあります。この力は、ふだんは固い木の根をほったり、倒木をひっくり返して虫を探したりするのに使われます。見た目は重そうですが、走ると時速50km近くに達します。人が走って逃げきれる速さではありません。ずんぐりして見えて、木登りや泳ぎも得意です。

北海道のヒグマ、本州のツキノワグマ

森の中のヒグマ
森の中で暮らすヒグマ(Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

ツキノワグマとの見分け方

日本には、ヒグマとツキノワグマの2種のクマがすんでいます。北海道にいるのがヒグマ、本州と四国にいるのがツキノワグマです。両者は津軽海峡をはさんで分かれ、たがいの分布は重なりません。この海峡は、北と南で生きものの顔ぶれが大きく変わる境目としても知られます。おもな違いを、下の表にまとめました。

ヒグマツキノワグマ
すみか北海道本州・四国
体重約100〜400kg超約60〜130kg
毛色茶色っぽい黒っぽい
胸の月の輪ないある

ツキノワグマは胸に三日月のような白い模様があり、体はヒグマよりずっと小さめです。日本で最も大きく力の強いクマが、北海道のヒグマです。北海道には、およそ2000〜3000頭のヒグマがすむと推定されています。

クマ【総合】
クマは、大きな体とするどいツメを持つ、食肉目クマ科の動物です。世界に8種がいて、日本にはツキノワグマとヒグマの2種がすんでいます。多くは肉も植物も食べる雑食で、寒い地方の種は冬に冬眠します。分類と学名分類階層界:動物界 Animalia門:...

力持ちでも、9割は植物食

川べりのヒグマ
川べりで魚をねらうヒグマ(Robert F. Tobler, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

季節でかわる食べもの

強そうな見た目に反して、ヒグマの食べものは、およそ9割が植物です。木の実や草、木の根などを、季節に合わせて食べます。太いツメで土を掘り、根や虫を探し出すのも得意です。ときには大きな動物をおそうこともありますが、ふだんは植物を中心に食べる動物です。

夜にも動く

ヒグマは、本来は昼間に活動する動物です。ただし、人の多い場所の近くでは、人を避けて夜に動くことがふえます。えさの多い季節には、日中も夜も、こまめにえさを探して歩きまわります。ふだんは1頭で広い範囲を歩き、なわばりを強く守ることはありません。えさの豊富なサケの川などでは、複数のヒグマが近くで漁をすることもあります。

秋はサケをとる

秋になると、川をのぼってくるサケをつかまえます。浅瀬で待ちかまえ、次々にサケを捕らえて、脂肪をたっぷりたくわえます。この秋にためた脂肪が、長い冬眠を支えるエネルギーになります。サケの多い川には、あちこちからヒグマが集まり、めいめいに漁をする姿も見られます。実りの多い年と少ない年で、冬に向けての太り方も変わってきます。

冬眠と、小さな赤ちゃん

子グマを連れたヒグマの母子
子グマを連れた母ヒグマ(Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

飲まず食べずの数か月

ヒグマは、冬になると穴にこもって冬眠します。冬眠のあいだは、飲まず食べず、ふんもしないまま数か月をすごします。秋にためた脂肪だけを、少しずつエネルギーに変えて生きのびます。冬眠の穴には、木の根もとのくぼみや、みずから掘った土の穴が使われます。長い冬を、この穴の中でじっとやりすごします。

眠りの中で育つ赤ちゃん

メスは、この冬眠中に子を産みます。生まれたばかりの赤ちゃんは、体重350〜500gほどしかなく、大きな親からは想像できない小ささです。母グマは、まだ眠りの中で子に乳をあたえて育てます。ふつう1〜3頭が生まれ、母親のそばで2年ほどをすごし、生きるすべを学びます。母親は、子が独り立ちするまで次の子を産みません。そのため、ヒグマがふえる速さはとてもゆるやかです。

人とのかかわり

森を歩くヒグマ
森の中を歩くヒグマ(Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

天敵のいない、北の頂点

大人のヒグマには、自然界でおそってくる天敵がほとんどいません。北海道の自然のなかでは、食物連鎖の頂点に立つ動物です。かつては同じ北海道にエゾオオカミもいましたが、こちらは明治のころに絶滅しました。

まれに起きる事故と、備え

ヒグマは基本的に人を避けますが、まれに人里へおりて人をおそう事故も起きています。近年も、農地や市街地の近くにヒグマが現れる例が増えており、人とヒグマの距離をどう保つかが課題になっています。過去の大きな事故は、本や映画の題材にもなってきました。

三毛別の事件と小説『羆嵐』

1915年(大正4年)に北海道の三毛別(さんけべつ)で起きた事件では、一頭のヒグマによって7人が亡くなりました。日本の獣害の歴史で、最も大きな被害とされています。この事件は、作家の吉村昭が小説『羆嵐(くまあらし)』に書き、広く知られるようになりました。1970年には、日高山脈でヒグマに登山者がおそわれ、3人が亡くなる事故も起きています。

音で存在を知らせる

山でヒグマと出会わないために、登山者は鈴やラジオで音を出し、早めに存在を知らせてきました。多くのヒグマは、先に人に気づけば自分から離れていきます。とうがらしの成分でクマを追いはらう「クマ撃退スプレー」も使われます。走って逃げても、時速50km近い足の速さには追いつかれてしまいます。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Brown bear」(分類・亜種・食性・冬眠)
  • IUCN Red List:Ursus arctos(LC・分布と脅威)
  • 北海道・環境省のヒグマ情報(エゾヒグマの生態と事故の記録)
  • 吉村昭『羆嵐』(三毛別のヒグマ事件をもとにした小説)
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