コツメカワウソ

哺乳類

コツメカワウソは、世界でいちばん小さなカワウソです。短い爪と、人の手のように器用な前足を持ちます。東南アジアの水辺で、家族の群れをつくって暮らします。水族館やカフェの人気者ですが、野生では数を減らしています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目(ネコ目)Carnivora
  • 科:イタチ科 Mustelidae
  • 属:ツメナシカワウソ属 Aonyx
  • 種:コツメカワウソ Aonyx cinereus

和名・英名

  • 和名:コツメカワウソ(漢字で「小爪川獺」)
  • 英名:Asian small-clawed otter(アジアの小さな爪のカワウソ)

名前の由来

「コツメ」は、「小さな爪」という意味です。ほかのカワウソにくらべて爪がとても短く、指先からほとんど出ていません。この短い爪が、名前の由来になりました。カワウソは、イタチやテンと同じイタチ科の仲間です。長い胴に短い足という体つきも、イタチの仲間らしい特徴です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約45〜60cm・しっぽ 約25〜35cm・体重 最大3.5kgほど(カワウソで最小)
分布南アジア〜東南アジア(インド・東南アジア・スマトラ島・ボルネオ島など)。日本にはいない
生息環境川・湿地・水田・河口・海辺の潮だまりなど
食べもの肉食(カニ・貝・魚・カエル・昆虫など)
寿命飼育下で15〜20年ほど(野生ではより短いとされる)
保全状況IUCN: VU(危急)/ワシントン条約 附属書I

世界でいちばん小さなカワウソ

コツメカワウソの全身
岩の上にすわるコツメカワウソ(Jamie, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

体重3.5kgの小さな体

コツメカワウソは、13種いるカワウソの仲間のなかで、いちばん小さな種です。体重は、大きくても3.5kgほどしかありません。体は茶色の毛におおわれ、のどからほおにかけては白っぽくなります。大きな仲間には、体重30kgを超えるオオカワウソもいます。同じカワウソでも、大きさには10倍近い差があります。

短い爪と、器用な前足

コツメカワウソのいちばんの特徴は、短い爪と器用な前足です。ほかのカワウソの爪は、するどく長くのびています。いっぽうコツメカワウソの爪は、指先からほとんど出ていません。指のあいだの水かきも浅く、指を1本ずつ動かせます。そのため前足は、まるで人の手のように器用です。この手で小石をつまんだり、獲物をさぐったりします。

水の中を泳ぐ体

器用な前足を持つ一方で、体は泳ぎにも向いています。前足にも後ろ足にも水かきがあり、水中をすばやく進めます。細長い体と、太く力強いしっぽを、舵のように使います。水にもぐるときは、鼻の穴と耳を閉じて水の入るのを防ぎます。陸ではちょこちょこと歩き、水に入ると見ちがえるほど活発に動きます。

手を使う名ハンター

前足を使うコツメカワウソ
器用な前足で獲物をさぐる(Theo Kruse Burgers’ Zoo, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

カニや貝が大好物

コツメカワウソは、カニや貝を好んで食べます。魚のほか、カエルや昆虫、小さなヘビなども口にします。多くのカワウソが口で魚を追うのに対し、コツメカワウソは器用な前足で獲物をさぐります。川底の石の下や泥の中へ手を入れ、かくれたカニを手さぐりで見つけ出します。目でなく手の感覚をたよりに、えものを探すのが得意です。

貝を日なたで開ける

コツメカワウソは、かたい貝の食べ方にも工夫を見せます。飼育下では、とった貝を日なたに置いておくようすが観察されています。日ざしのあたたかさで貝が弱ると、殻が自然に開きます。すると、殻を割らずに中身を食べられます。ラッコは石を使って貝を割りますが、コツメカワウソは太陽の熱を利用するわけです。カワウソの仲間は、このように賢い一面を持っています。

昼も夜も活動する

コツメカワウソは、おもに昼から夕方にかけて活動します。潮の満ち引きに合わせて、えさをとる時間を変えることもあります。潮が引いた干潟は、カニや貝をさがす絶好の狩り場です。いっぽう、人の多い場所では、夜に動くことがふえるともいわれます。まわりのようすに合わせて、活動する時間を上手に変えています。

家族で暮らす、おしゃべりな群れ

群れで過ごすコツメカワウソ
巣にあつまる家族(eileenmak, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

一夫一妻の家族

コツメカワウソは、家族を中心とした群れで暮らします。群れの大きさは、多いときで15頭ほどになります。オスとメスはペアをつくり、長くつれそう一夫一妻です。親と、その年に生まれた子や前の年の子が、いっしょに行動します。単独で暮らすことの多いカワウソの仲間のなかでは、めずらしく社会性の高い種です。

12種類以上の鳴き声

コツメカワウソは、よく鳴く動物です。12種類以上の鳴き声を使い分けるといわれます。甲高い声やクゥクゥという声で、仲間とやり取りをします。危険を知らせたり、仲間を呼んだりと、声には役割があります。にぎやかに鳴き交わす群れは、水辺でもよく目立ちます。

強いにおいでなわばりを示す

コツメカワウソは、においでも仲間と情報をやり取りします。決まった場所にフンをして、なわばりのしるしにします。カワウソのフンやおしりの分泌物には、独特の強いにおいがあります。飼育下では、このにおいが飼い主を悩ませることもあります。においは、たがいの存在や縄張りを伝える大切な合図です。

天敵と身の守り方

体の小さなコツメカワウソには、身のまわりに多くの危険があります。大型のヘビやワニ、猛禽(もうきん)、大型のネコの仲間などにねらわれることがあります。とくに、まだ小さな子どもが、こうした天敵のえじきになりやすいとされます。群れで暮らし、たがいに鳴き声で危険を知らせ合うことは、身を守るうえでも役立ちます。危険を感じると、素早く水に飛びこんで逃げます。

子育てと赤ちゃん

コツメカワウソの親子
よりそう2頭(Animalculum, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

両親そろって育てる

コツメカワウソは、両親そろって子育てをします。1回のお産で、1〜7頭ほどの赤ちゃんが生まれます。父親も巣づくりや世話に加わり、家族みんなで子を育てます。上の年に生まれた子が、下の子の世話を手伝うこともあります。こうした助け合いが、群れのつながりを強くしています。

鶏卵ほどの大きさで生まれる

生まれたばかりの赤ちゃんは、体重50gほどしかありません。ちょうど、鶏卵1個くらいの小ささです。目は閉じたままで、しばらくは巣の中ですごします。生後2か月ほどで体は大きく育ち、水にも入るようになります。4〜5か月ほどで、ひとりでえさをとれるようになります。

ラッコ・ほかのカワウソとの違い

泳ぐコツメカワウソ
水辺で過ごすコツメカワウソ(Russel Wills, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

海のラッコ、川のカワウソ

「カワウソ」と「ラッコ」は、どちらもイタチ科の水辺の仲間です。ただし、暮らす場所や体つきは大きく違います。おもな違いを、下の表にまとめました。

コツメカワウソラッコ
おもな場所川・湿地(淡水)海(海水)
大きさ体重 最大3.5kg体重 約20〜45kg
貝の割り方手や日なたを使う石を使う
おもな過ごし方陸と水を行き来海にあおむけで浮かぶ

ほかのカワウソとの違い

カワウソの仲間は、世界に13種います。かつて日本にすんでいた「ニホンカワウソ」や、ヨーロッパにすむ「ユーラシアカワウソ」は、その一種です。これらはコツメカワウソより体が大きく、爪も長くのびています。コツメカワウソは、そのなかでいちばん小さく、爪の短い種です。

カワウソ【総合】
カワウソは、川や湖のほとりにすむ、イタチの仲間の動物です。水かきのある足でたくみに泳ぎ、器用な前足で魚や貝をとらえます。日本では、小さくて愛らしいコツメカワウソがよく知られています。分類と学名分類階層界:動物界 Animalia門:脊索動物...

会える人気者、飼えるのか

水辺のコツメカワウソ
動物園のコツメカワウソ(Katja Schulz, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

水族館やカフェで会える

コツメカワウソは、日本各地の水族館や動物園で見られます。愛らしい姿と、器用に手を使うしぐさで、高い人気を集めています。近年は、コツメカワウソとふれあえるカフェも各地にできました。餌やりや、手のひらに乗せる体験を行う施設もあります。その人気は、テレビや動画を通じてさらに広がっています。

人なつっこい? その性格

コツメカワウソは、好奇心が強く、遊び好きな性格です。飼育下では、世話をする人によくなつく個体も知られています。手をにぎったり、体をすり寄せたりするしぐさが、人気を集めています。ただし、あくまで本来は野生の動物です。気が立つと鋭い歯で噛みつき、なわばりを強い声とにおいで主張します。かわいい見た目の裏に、野生動物としての一面も持っています。

ペット人気と、密輸の影

人気が高まる一方で、大きな問題も起きています。ペットとして高値で取り引きされ、密輸が後をたちません。ある調査では、2016年から2017年にかけて、東南アジアのネット上で711頭ものコツメカワウソが売りに出されていました。乱獲や生息地の減少もあり、野生では数を減らしています。2019年にはワシントン条約で最も厳しい附属書Iに加えられ、国をまたいだ商業取引が原則禁止されました。かわいらしく見えても、本来は鋭い歯を持つ野生動物です。おどろくと強く噛みつくこともあり、飼うのは簡単ではありません。

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参考

  • Wikipedia(英語版)「Asian small-clawed otter」(分類・形態・食性・社会・繁殖)
  • IUCN Red List:Aonyx cinereus(VU・分布と脅威)
  • CITES(ワシントン条約)附属書I 掲載情報(2019年〜)
  • TRAFFIC ほかの調査(東南アジアでのペット取引・密輸の報告)
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