ヒョウモンダコ

甲殻類・軟体動物

ヒョウモンダコは、手のひらにのるほど小さなタコです。しかし、フグと同じ猛毒テトロドトキシンを持つ、危険な種として知られます。刺激を受けると、体に青い輪の模様が浮かび上がります。もとは南方系のタコですが、近年は本州沿岸でも見つかり、各地で注意が呼びかけられています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 科:マダコ科 Octopodidae
  • 属:ヒョウモンダコ属 Hapalochlaena
  • 種:ヒョウモンダコ Hapalochlaena fasciata など

和名・英名

  • 和名:ヒョウモンダコ(漢字で「豹紋蛸」)
  • 英名:Blue-ringed octopus(青い輪のタコ)

名前の由来

「ヒョウモンダコ(豹紋蛸)」の名は、体に浮かぶ青い輪や線の模様が、ヒョウ柄を思わせることに由来します。英語名の「Blue-ringed octopus」も、青い輪のタコという意味です。ヒョウモンダコ属には4種ほどが知られ、日本で見られるものは Hapalochlaena fasciata とされます。ただし、日本産は正式には未記載の種である可能性も指摘されています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 10cmほど(手のひらにのる小型のタコ)
分布太平洋・インド洋の暖かい海。日本では南日本を中心に、本州沿岸へ北上中
生息環境岩場・磯・サンゴ礁の潮だまりなど、浅い海
食べもの肉食(カニ・エビ・小魚など)
テトロドトキシン(フグと同じ猛毒)
危険度非常に高い(噛まれると命に関わる)

手のひらサイズの、猛毒ダコ

青い輪の模様を出したヒョウモンダコ
Sylke Rohrlach, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

毒はフグと同じ「テトロドトキシン」

ヒョウモンダコの毒は、テトロドトキシンという神経毒です。これは、フグが持つ毒とまったく同じ成分です。毒を作るのは、口の奥にある唾液腺(だえきせん)。体内に共生する細菌が生み出していると考えられ、狩りにも防御にも使われます。

成人20人分ともいわれる強さ

小さな体に、桁外れの毒

体は小さくても、蓄えた毒の量は桁外れです。1匹の毒で、成人20人以上の命を奪うとも言われます。テトロドトキシンは神経の働きを麻痺させ、体を動かす筋肉を止めてしまいます。そのため、やがて呼吸に使う筋肉も動かなくなります。

効く薬(血清)がない

厄介なことに、この毒を直接中和する血清はありません。毒が抜けるのを、体の回復力で待つほかないのが現状です。ただし、テトロドトキシンは主に麻痺によって命を奪う毒です。裏を返せば、呼吸さえ維持できれば助かる例も多いと分かっています。だからこそ、噛まれたときの初動が生死を分けます。

噛まれたら ― 症状と応急手当

毒が回るまでの症状

痛みが少なく、気づきにくい

ヒョウモンダコの噛み傷は、ごく小さなものです。痛みも軽く、噛まれたこと自体に気づかない人も少なくありません。しかし、しばらくすると毒が回り始めます。初期の症状は、手足のしびれや口の周りの違和感です。

麻痺が進み、呼吸が止まる

毒が回ると、麻痺が全身へ広がります。言葉が出にくくなり、体に力も入りません。やがて呼吸を担う筋肉まで麻痺し、自力では息ができなくなります。この進行は、数分から数十分という速さで起こることもあります。

応急手当 ― 呼吸を助ける

まず119番、傷口の圧迫と安静

噛まれたら、まず救急(119番)を呼ぶことが第一です。到着を待つ間は、傷口を圧迫し、体を安静に保ちます。あわてて動きまわると、毒の回りを早めてしまいます。落ち着いて助けを待つことが、次の手当てにつながります。

人工呼吸で呼吸を支える

呼吸が止まった場合は、人工呼吸で息を送り続けます。テトロドトキシンは時間とともに体から抜けていく毒です。そのため、呼吸さえ維持して病院につなげれば、救命できる可能性は高まります。最初の危険な時間を周囲が支えること。それが何よりも重要です。

食べられる? 加熱すれば大丈夫?

「タコなら食べられるのでは」と考える人もいます。しかし、ヒョウモンダコを食べてはいけません。毒は唾液腺だけでなく、筋肉や皮膚にも含まれています。しかもテトロドトキシンは熱に強く、煮ても焼いても分解されません。「加熱すれば安全」という考えは誤りです。見つけても、決して口に入れないでください。

青い輪は「警告色」

青い輪を光らせるヒョウモンダコ
Jens Petersen, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons

ふだんは地味、興奮すると青く光る

ヒョウモンダコは、落ち着いているときは地味な体色をしています。茶色がかった体で、岩や海藻に紛れています。ところが、驚いたり興奮したりすると、体が鮮やかな黄色に変わります。同時に、青い輪や線の模様があざやかに光ります。その変化は、ほんの一瞬。およそ3分の1秒で起こるとされます。

青く光るのは、警告のサイン

この鮮やかな模様は「警告色」です。「自分は毒を持つ」と敵に知らせる信号で、派手な色によって捕食者を遠ざけます。裏を返せば、青く光っているのは、興奮・威嚇しているしるしでもあります。海辺で青く光る小さなタコを見かけても、決して触れてはいけません。

狩りと、命がけの子育て

岩場のヒョウモンダコ
Bernard DUPONT, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

くちばしで殻を割り、毒で麻痺させる

ヒョウモンダコのおもな獲物は、カニやエビ。口には硬い「くちばし」があり、これで獲物の殻を噛み割ります。そこへ毒を注ぎ込み、麻痺させて仕留めます。小さな体ながら、毒という武器で自分より大きな相手も倒す狩人です。

メスは半年、飲まず食わずで卵を守る

メスは秋の終わりごろに、50個ほどの卵を産みます。産んだ卵は腕に抱え、外敵から守り続けます。その間はほとんど餌をとらず、半年もの間、飲まず食わずで世話を続けます。そして卵がかえるころ、力尽きて一生を終えます。多くのタコに共通する、命がけの子育てです。

日本でも、北へ広がっている

ヒョウモンダコは、もともと南の暖かい海に暮らすタコでした。しかし近年、海水温の上昇にともない、分布が北へ広がっています。1999年には大阪湾で、その後は日本海側でも見つかるようになりました。今では、本州の広い範囲の磯で出会う可能性があります。潮だまりで生きものを探すときは、小さなタコにも警戒が必要です。素手でつかまず、見つけても触れないこと。それが最大の防御です。

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参考

  • Wikipedia(英語版)「Blue-ringed octopus」(毒・テトロドトキシン・応急手当・生態)
  • Wikipedia(日本語版)「ヒョウモンダコ」(分布の北上・毒の保有部位・繁殖)
  • 各自治体・水産研究機関の注意喚起(ヒョウモンダコへの注意・分布拡大)

画像出典

サムネイル画像: Julian Finn, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

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