オランウータンは、ボルネオ島とスマトラ島の森に暮らす大型の類人猿です。長い腕を使い、一生の多くを木の上で過ごします。名前は「森の人」を意味し、アジアで唯一の大型類人猿でもあります。出産は6〜8年に一度ほどと、哺乳類の中でもっともゆっくりした動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:霊長目 Primates
- 科:ヒト科 Hominidae(大型類人猿)
- 属:オランウータン属 Pongo(現生3種)
和名・英名
- 和名:オランウータン
- 英名:Orangutan
ヒト科の一員
オランウータンは、ヒトやゴリラ、チンパンジーと同じヒト科に属します。これらをまとめて「大型類人猿」と呼びます。ただし、ゴリラやチンパンジーがアフリカにいるのに対し、オランウータンはアジアの森だけに暮らす種です。


大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約1.1〜1.4m・体重 約37〜75kg(オスが大きい) |
|---|---|
| 分布 | ボルネオ島・スマトラ島(インドネシア・マレーシア) |
| 生息環境 | 熱帯雨林 |
| 食べもの | おもに果実(ほかに葉・樹皮・昆虫など) |
| 腕 | オスは広げると約2m。脚より長い |
| 寿命 | 野生・飼育下とも30年以上(飼育下で50年前後の例も) |
| 保全状況 | IUCN: 3種とも近絶滅(CR) |
森の人 ― アジア唯一の大型類人猿

名前の意味は「森の人」
「オランウータン」は、マレー語で「森の人」を意味します。「オラン」が人、「ウータン」が森を指す言葉です。赤茶色の毛に覆われ、木の上でゆったり暮らす姿から、この名がつきました。ゴリラやチンパンジーがアフリカにいるのに対し、オランウータンはアジアに暮らす、ただ一つの大型類人猿。昔、現地では「このサルは話せるのに、働かされたくないので黙っている」と語り伝えられたといいます。
3種のオランウータン

オランウータンには、現在3つの種が知られています。もっとも数が多いのが、ボルネオ島に暮らすボルネオオランウータン。スマトラ島には、体つきがほっそりして毛の長いスマトラオランウータンがいます。3種目のタパヌリオランウータンは、2017年に新種と確かめられた種です。その数はおよそ800頭とされ、大型類人猿の中でもっとも希少とされます。いずれもインドネシアとマレーシアの森だけに暮らします。
木の上で暮らす

一生の多くを樹上で
長い腕での移動
オランウータンは、大型類人猿の中でもっとも木の上で暮らす種です。オスの腕は、広げるとおよそ2mに達します。この長い腕で枝から枝へぶら下がり、体を運ぶ暮らしです。脚より腕がずっと長いのも、木の上の生活に合った体つき。握る力が強く、木の上では両手両足の4本で体を支えます。
手も足も枝をつかむ
手には4本の長い指があり、親指は短めです。指を鉤(かぎ)のように曲げ、細い枝もしっかりつかみます。足も手のように、大きな親指が開いて枝を握れます。さらに脚のつけ根がよく回るため、腕と同じように後ろへも動かせます。地上におりることは少なく、食事も休息も、ほとんどが木の上での暮らしです。
単独で暮らす類人猿
大きな頬だこを持つオス
大人のオスは、顔の左右に大きな「頬だこ」と呼ばれる張り出しを持ちます。のどには大きな袋があり、遠くまで届く声を出すのに使う器官です。この声は「ロングコール」と呼ばれ、1kmをこえて森に響きます。メスを引き寄せたり、ほかのオスをけん制したりする合図です。頬だこの目立つオスは、群れを持たずとも広いなわばりを見張ります。
オスには2つのタイプ

オランウータンのオスには、姿の違う2つのタイプがあります。頬だこの大きな「フランジ型」と、頬だこのない小型の型です。頬だこのない型は、近くに強いフランジ型のオスがいると、その発達をおさえられます。強いオスがいなくなると、数か月のうちに頬だこが現れ、フランジ型へと変わります。大人のオスが、まわりしだいで二つの姿になることが知られています。
群れをつくらない暮らし
オランウータンは、大型類人猿の中でもっとも単独で過ごす動物です。群れで暮らすゴリラやチンパンジーとは、この点で大きく異なります。ふだんいっしょにいるのは、母親と、その子どもくらいです。果実が実る場所は森に点々と散らばり、大きな群れでは食べものが足りないからだと考えられています。大人は、それぞれが広い森に散らばって暮らします。
動物園でのスカイウォーク
日本の動物園でも、オランウータンに会えます。多摩動物公園では、高い柱の間に張ったロープを、来園者の頭上で渡る「スカイウォーク」が知られています。木の上で暮らす習性を、そのまま活かした展示です。地上におりない野生の姿を、間近で観察できます。
賢さと、巣づくり
高い知能と道具
オランウータンは、もっとも知能の高い霊長類の一つに数えられます。細い枝を道具にして、木のうろから虫やはちみつ、種を取り出します。雨の日に、大きな葉を傘のように頭へかざす行動も観察されています。手話に似た記号を覚えた個体も知られ、その学習の力は長く研究されてきました。果実がみのる木の場所を覚え、季節に合わせて森を回るとも考えられています。
毎晩つくる寝床
オランウータンは、夜ごとに新しい寝床(巣)を木の上につくります。枝を折り曲げて編み、その上に柔らかい葉を敷く、手のこんだ作りです。昼寝用の簡単な巣を、別につくることもあります。子どもは母親の巣づくりを見て覚え、3歳ごろには自分でつくれるようになります。巣づくりを覚えることが、独り立ちへ向かう一歩になります。
世界一ゆっくりな子育て

哺乳類で最もゆっくりな繁殖
6〜8年に一度の出産
オランウータンのメスは、6〜8年に一度ほどしか子を産みません。この出産の間隔は、哺乳類の中でもっとも長いとされます。一度に生まれるのは、ふつう1頭です。子育てにじっくり時間をかけることが、この動物の生き方になっています。
長く続く母子の時間
生まれたばかりの子は、はじめの数か月を、母親のおなかにしがみついて過ごします。木の登り方や、食べられる実の見分け方を、そばで学ぶ日々です。1歳半ごろには、ほかの子と手をつないで枝を渡る「バディ・トラベル」も見られます。母乳を飲む期間は8年ほどにおよび、これはどの哺乳類よりも長い記録です。長い時間をかけて、子は森で生きる力を身につけていきます。
寿命と、絶滅の危機
30年をこえる寿命
オランウータンの寿命は、野生でおよそ30〜40年です。飼育下では、50年前後まで生きた例もあります。ゆっくり産み、ゆっくり育つぶん、一生も長い動物です。長い寿命と遅い繁殖は、数が減ったときの回復を難しくもします。
3種とも絶滅危惧種
3種のオランウータンは、いずれも近絶滅(CR)に指定されています。パーム油を取るための森林伐採で、すみかが大きく失われてきました。密猟やペットとしての取り引きも、数を減らす原因です。ボルネオやスマトラには、親を失った子を育てて森へ返す、野生復帰の施設が置かれています。研究者ビルーテ・ガルディカスらの長い調査が、その保護を支えてきました。ヒトに近い森の住人が、いま最も危機にある大型類人猿の一つです。
参考
- Wikipedia(英語版)「Orangutan」― 分類・3種・樹上性・単独性・繁殖・保全の各節
- WWFジャパン「オランウータンの生態と、迫る危機について」― 森の人・分布・パーム油と絶滅の危機
- 日本オランウータン・リサーチセンター(おらけん)― 生態研究・動物園での飼育
画像出典
アイキャッチ画像:Rohitjahnavi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。


