チンパンジーは、アフリカの森にすむ大型の類人猿です。ヒトにもっとも近い動物として知られ、枝や石を道具に使います。オスを中心とした群れで暮らし、ときに100頭をこえる仲間が集まります。腕の力は人を上回り、力の強さでも知られる動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:霊長目 Primates
- 科:ヒト科 Hominidae(大型類人猿)
- 種:チンパンジー Pan troglodytes
和名・英名
- 和名:チンパンジー
- 英名:Chimpanzee
ヒト科の一員
チンパンジーが属するのは、ヒトやゴリラ、オランウータンと同じヒト科です。これらはまとめて「大型類人猿」と呼ばれます。もっとも近い仲間は、同じチンパンジー属のボノボ。

大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約64〜94cm・体重 約26〜60kg(オスが大きい) |
|---|---|
| 分布 | アフリカ中部・西部の赤道付近 |
| 生息環境 | 熱帯林・サバンナ |
| 食べもの | 雑食(果実・葉・昆虫・小動物など) |
| 群れ | 15〜150頭。日中は小集団に分かれて行動 |
| 寿命 | 野生で約30〜40年/飼育下で50年以上 |
| 保全状況 | IUCN: 絶滅危惧(EN) |
サルではなく「類人猿」

尾のない大型のサル類
尾がなく、大きい体
チンパンジーは、ニホンザルのような「サル」とは区別されます。区別の目印は、尾がなく体が大きいこと。長い腕を持ち、木の上でも地面でもよく動きます。尾のない大型のサル類を「類人猿」と呼び、ゴリラ・オランウータン・テナガザル、そしてヒトがふくまれます。
ヒトにもっとも近い動物
チンパンジーとボノボは、ヒトにもっとも近い現生の動物です。遺伝子(DNA)はヒトと非常によく似ており、全体の98%あまりが共通するとされます。ヒトとチンパンジーが共通の祖先から分かれたのは、およそ650万〜700万年前。顔つきや手の形、表情の豊かさにも、ヒトとの近さが表れています。
ゴリラとの違い
同じヒト科でも、チンパンジーとゴリラは暮らしぶりが対照的です。チンパンジーは中型で動きがすばやく、道具を使う知恵者。果実や昆虫、ときには小動物まで食べる雑食です。いっぽうゴリラは体が大きく力が強い、おだやかな種で、おもに植物を食べます。同じ森にすむ近い仲間でも、体つきや食べ物で見分けられるほど、暮らしぶりは異なります。
道具を使う賢さと、群れの暮らし

道具を使う知恵
枝でのシロアリ釣り
よく知られるのが、細い枝を使ったシロアリ釣りです。枝を巣穴に差しこみ、かみついたシロアリごと引き出して食べます。葉を丸めて水をすくうなど、身のまわりの物も道具に変えます。とがらせた枝で小動物を突く、槍のような使い方まで確かめられています。道具を使う動物は多くありませんが、その中でもとりわけ器用な部類です。
石を使った木の実割り
硬い木の実を割るときは、石を台に使います。台石の上に実を置き、別の石をハンマー代わりに打ちつける方法です。こうした道具の使い方は、群れごとに少しずつ異なります。親から子へ受けつがれるため、群れの「文化」とも呼ばれます。使う道具や割り方には、地域ごとの「やり方」があります。
数字を覚える賢さ
チンパンジーの賢さは、記憶の実験でもよく知られています。京都大学の研究では、画面に一瞬だけ映る数字の位置を、正しい順に覚える課題が行われました。アユムという名のチンパンジーは、9個の数字が0.2秒ほどしか映らなくても、その並びをほぼ正確に当てます。同じ課題では、訓練を積んだ大学生でも及ばないという結果でした。少なくとも一瞬の記憶では、人を上回る力を持つ動物です。
オスを中心とした群れ
15〜150頭の群れ
チンパンジーがつくる群れは、15頭から150頭ほど。オスを頂点とした順位で成り立っています。争いごとの多くは、力ずくではなく順位でおさまります。仲間どうしで毛づくろいをし合い、きずなを深める姿もよく見られます。
小さな集団での行動
大きな群れも、日中は数頭ずつの小集団に分かれて行動します。食べ物のある場所へ、めいめいに散らばって移動する日々です。夜になると、また集まって木の上に寝床をつくります。この離れたり集まったりする暮らしが、離合集散と呼ばれるものです。なわばりを守り、となりの群れとはげしく争うこともあります。
見た目によらない力の強さ
人を上回る腕の力
速筋が多い体つき
チンパンジーは、体の大きさのわりに力の強い動物です。腕を引く力は、人のおよそ1.4倍にもなるとされます。理由の一つが、すばやく大きな力を出す「速筋」の多さ。木の上で体を支え、枝から枝へ移る暮らしに合った体つきです。にぎる力や噛む力も強く、硬い実の殻や太い枝も難なくあつかいます。
強い力と、飼育の危険
強い力と予測しにくい気性から、チンパンジーはペットには向きません。おとなしく見えても、興奮すると人に大けがを負わせることがあります。テレビなどでおなじみの姿とは違い、野生の力を秘めた動物です。海外では、飼われていた個体が人を襲った例も報告されています。
寿命と、数の減少

野生と飼育での寿命
チンパンジーの寿命は、野生でおよそ30〜40年です。飼育下では50年をこえて生き、60年近くに達した記録もあります。妊娠期間は約8か月で、子は3歳ごろまで母乳で育ちます。乳ばなれのあとも数年は、母親のそばで暮らしながら育つ動物です。
絶滅の危機
野生のチンパンジーは、17万〜30万頭ほどと見積もられています。森林の伐採や密猟、人から広がる病気により、数を減らしてきました。IUCNのレッドリストでの区分は、絶滅危惧種です。ヒトにもっとも近い動物の一つが、いま危機に立たされています。
参考
- Wikipedia(英語版)「Chimpanzee」― 分類・道具使用・群れ・力・寿命・保全の各節
- 京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ「チンパンジーについて」― ヒトとの近さ・DNA・生態
- チャート研究所「チンパンジーとコンピュータ記憶課題」― アユムの数字記憶の研究
画像出典
アイキャッチ画像:Carlos Valenzuela, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。


