ハクビシン

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

ハクビシンは、額から鼻すじにのびる白い線が目立つ、ジャコウネコ科の動物です。名前の「白鼻心」も、この白い模様に由来します。木登りが得意な夜行性で、都市の屋根裏にも住みつくため、アライグマとともに害獣として知られています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:ジャコウネコ科 Viverridae
  • 属:ハクビシン属 Paguma
  • 種:ハクビシン Paguma larvata

和名・英名

  • 和名:ハクビシン(白鼻心)
  • 英名:Masked palm civet

名前の由来

「白鼻心」は、額から鼻先へ白い線が通る顔つきに由来する漢名です。属するハクビシン属は、この一種だけで成り立つ単型の属です。英名の masked も、覆面をつけたような白い顔の模様を指しています。同じジャコウネコ科の仲間には、コーヒーで知られるジャコウネコなどがいます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ頭胴長 約50〜60cm・尾長 約40〜50cm・体重 約3〜5kg
分布インドから東南アジア・中国・台湾(日本にも分布)
生息環境森林(市街地や農地にも適応)
食べもの雑食(果実を好み、小動物・昆虫・鳥なども)
寿命飼育下でおよそ10〜15年
保全状況IUCN: 軽度懸念(LC)

白い覆面と樹上の暮らし

額から鼻へ白い線が通るハクビシンの顔
Sunuwargr, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

顔の白い覆面

額から鼻へ通る白い線

ハクビシンの最大の特徴は、額から鼻先へまっすぐのびる白い線です。目の上下にも白い斑があり、耳のほうまで広がって覆面のように見えます。体は灰色がかった褐色で、頭や足、尾は黒っぽく仕上がっています。同じ科の仲間に多い斑点や縞がなく、すっきりした毛並みをしています。

体と同じくらい長い尾

尾は40〜50cmと長く、頭から胴までの長さの3分の2をこえます。この長い尾は、枝の上でバランスを取るのに役立ちます。全身は細長く、胴が長いわりに足は短めです。木の上を移動するのに向いた、しなやかな体つきをしています。

木の上で暮らす夜行性

登るのが得意

ハクビシンは木登りが巧みで、多くの時間を樹上で過ごします。垂直に近い木の幹を登るのも得意です。細い枝や電線の上も、長い尾でバランスを取りながら渡っていきます。昼は木のうろや天井裏で休み、暗くなってから活発に動きます。ふだんは群れをつくらず、一頭で行動する夜行性の動物です。

肛門腺のにおい

ジャコウネコ科の仲間らしく、肛門の近くににおいを出す腺を持ちます。身の危険を感じると、この腺から強いにおいの分泌物を出して敵を遠ざけます。屋根裏に住みついた個体が、このにおいやフンで問題になることもあります。においは縄張りや仲間への合図としても使われるとされます。

果実を好む雑食

木の上のハクビシン
Denise Chan from Hong Kong, China, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

イチジクなどの果実が好き

ハクビシンは雑食ですが、なかでも果実を好んで食べます。イチジクやマンゴー、バナナのような甘い果実をよく口にします。熟した実の甘さを覚えると、同じ木に何度も通うことがあります。果実のほか、小動物や昆虫、木の葉なども食べる幅広い食性です。食べた果実の種を運ぶことで、植物の芽ばえを広げる役割も担っています。

屋根裏に住みつく害獣

天井裏をねぐらにする

木登りが得意なハクビシンは、家の屋根や壁のすき間から天井裏に入り込みます。暖かく雨風をしのげる天井裏は、子育ての場所にも使われます。繁殖は年に1〜2回で、一度に2〜4頭ほどの子を育てるとされます。夜になると天井を歩く足音がひびき、フンやにおいの被害につながります。市街地でも生きていける適応力の高さが、住みつきを支えています。

果樹や畑の食害

甘い果実を好むため、ブドウやモモ、カキなどの果樹園が被害を受けます。とくに収穫を控えた熟した実を狙うため、農家にとって厄介な相手です。畑の作物や生ゴミにも手を出すため、各地で対策が続けられています。捕獲や駆除は、法律にもとづいて許可を受けて行われます。

アライグマ・タヌキとの見分け

アライグマとの違い

夜に現れる中型の獣として、ハクビシンはアライグマとよく間違えられます。アライグマは尾に黒い輪もようがあり、目のまわりは黒い覆面に囲まれています。ハクビシンの尾には輪がなく、額から鼻へ白い線が一本通ります。体つきもハクビシンのほうが細長く、尾が体と同じくらい長い点も違います。

アライグマ
アライグマは、目のまわりの黒い覆面と、輪もようの尾を持つ北アメリカ原産の動物です。器用な前足で食べ物を水につけて洗うようなしぐさで知られ、アニメ『あらいぐまラスカル』で人気になりました。一方、日本では逃げ出したものが各地で増え、今では特定外...

タヌキとの違い

ずんぐりしたタヌキとは、体つきと顔立ちで見分けられます。タヌキはイヌ科で、丸みのある体と短い尾を持ち、木登りは苦手です。ハクビシンは細長い体と長い尾を持ち、木の上を軽々と動きます。より小さく細長いイタチとは、体の大きさで区別できます。顔の白い線も、タヌキにはないハクビシンならではの目印です。

タヌキ
タヌキは、日本の里山や、ときには街中にもすむイヌ科の動物です。顔つきや名前は似ていますが、アライグマの仲間ではありません。昔から「化ける」と言い伝えられ、信楽焼(しがらきやき)の置物としても親しまれてきました。分類と学名分類階層界:動物界 ...

在来か外来か、そしてSARS

地上で餌を探すハクビシン
Rushenb, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

在来か外来かの議論

日本のハクビシンが昔からいた在来種か、外から入った外来種かは、長く議論されてきました。近年の遺伝研究では、台湾などから複数回持ち込まれた外来の可能性が高いとされます。江戸時代の記録に現れる、正体不明の「雷獣」の一部がハクビシンだったという説もあります。ただしアライグマとは異なり、特定外来生物には指定されていません。

SARSの中間宿主になった

2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、ハクビシンが注目されました。中国広東省の市場で売られていた個体から、SARSのウイルスが見つかったためです。野生動物からヒトへウイルスが渡る「中間宿主」の一つと考えられています。この出来事は、野生動物と人との距離を見直すきっかけの一つになりました。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Masked palm civet」― 形態・分布・食性・日本への移入・SARSの各節
  • IUCN レッドリスト「Paguma larvata」― 分布・保全状況(軽度懸念)
  • 環境省・各自治体 獣害対策資料― ハクビシンの生態と防除・農業被害

画像出典

サムネイル画像: Rejoice Gassah, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

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