アライグマ

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

アライグマは、目のまわりの黒い覆面と、輪もようの尾を持つ北アメリカ原産の動物です。器用な前足で食べ物を水につけて洗うようなしぐさで知られ、アニメ『あらいぐまラスカル』で人気になりました。一方、日本では逃げ出したものが各地で増え、今では特定外来生物に指定されています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:アライグマ科 Procyonidae
  • 属:アライグマ属 Procyon
  • 種:アライグマ Procyon lotor

和名・英名

  • 和名:アライグマ(洗い熊)
  • 英名:Raccoon

名前の由来

和名の「アライグマ」は、食べ物を洗うように見えるしぐさに由来します。学名の種小名 lotor も、ラテン語で「洗う者」という意味です。名にクマとつきますが、クマの仲間ではなく、独立したアライグマ科に属します。この科にはハナグマやキンカジューなど、中南米の動物も含まれます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ頭胴長 約40〜70cm・尾長 約20〜40cm・体重 約5〜12kg(オスがやや大きい)
分布北アメリカ原産(日本・ヨーロッパなどに外来種として定着)
生息環境水辺の森林(都市部にもよく適応)
食べもの雑食(ザリガニ・昆虫・果実・小動物・卵・生ゴミ)
寿命野生でおよそ2〜3年(飼育下では20年をこえた例も)
保全状況IUCN: 軽度懸念(LC。日本では特定外来生物)

器用な前足と「洗う」しぐさ

前足で水辺をさぐるアライグマ
BS Thurner Hof, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

発達した前足の触覚

触覚に特化した手

アライグマの前足は、5本の細長い指を持ち、とても器用に動きます。指先の感覚は鋭く、脳で触覚を扱う領域は、これまで調べられたどの動物よりも広いとされます。目でよく見えない暗がりでも、手ざわりだけで食べ物か石かを見分けられます。この繊細な手が、複雑な仕掛けを解く賢さの土台にもなっています。

頭から木を下りる

アライグマは木登りが得意で、高い木の上で眠ったり身を隠したりします。後ろ足の向きを反転させられるため、頭を下にしたまま木を下りることができます。この下り方ができる哺乳類は多くなく、体の大きな動物ではめずらしいものです。地上では時速20km前後で走り、泳ぎも達者で、水の中に長くとどまることもあります。

なぜ食べ物を洗うのか

「唾液が足りない」説は俗説

「唾液が少ないので水で湿らせて食べる」と語られることがありますが、これは俗説とされます。実際には、洗うしぐさは飼育下で水が近くにあるときに多く見られます。野生のアライグマが、食べ物をわざわざ洗って食べる例はまれです。名前の印象から広まった説明で、確かな裏づけはありません。

水辺で探る本能のなごり

有力なのは、水辺で獲物を探る行動のなごりだという見方です。アライグマは川岸で、水中のザリガニや貝を前足で探って捕らえます。水にぬれると前足の皮膚が柔らかくなり、手ざわりがいっそう鋭くなるとされます。洗うように見えるしぐさは、この「探る」動きが表れたものだと考えられています。

賢さと夜の暮らし

木を登るアライグマ
Korall, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

錠前も開ける学習能力

複雑な仕掛けを解く

アライグマは、記憶力と問題解決の力が高いことで知られます。ある実験では、13種類の複雑な錠前のうち11種類を、短い試行で開けてみせました。一度覚えた解き方を、3年ほど記憶しているという報告もあります。この賢さと器用な手があわさり、ゴミ箱や物置を荒らす個体が各地で問題になっています。

数を見分ける

数の違いを見分ける力も、実験で確かめられています。大脳皮質の神経細胞の密度は、霊長類に近いとする研究もあります。こうした知能の高さは、さまざまな環境にすばやく適応する強みにつながっています。都市に入り込んで生き抜く力も、この賢さと無関係ではありません。

夜に動く雑食

アライグマは夜行性で、暗くなってから活発に動きます。食べ物はえり好みせず、ザリガニや昆虫、果実から鳥の卵まで口にします。捕らえやすい獲物を好み、すばやい大きな動物を追い回すことは多くありません。もともと水辺の森に住む動物ですが、餌が豊富な都市や農地にもよく適応します。

タヌキ・ハクビシン・レッサーパンダとの違い

タヌキ・ハクビシンとの違い

日本では、姿の似たタヌキやハクビシンとよく間違えられます。タヌキはイヌ科の動物で、尾に輪もようがなく、木登りも苦手です。ハクビシンは額から鼻先へ抜ける白い線が目印で、細長い体をしています。アライグマは尾の黒い輪と、器用に物をつかむ前足で見分けられます。

タヌキ
タヌキは、日本の里山や、ときには街中にもすむイヌ科の動物です。顔つきや名前は似ていますが、アライグマの仲間ではありません。昔から「化ける」と言い伝えられ、信楽焼(しがらきやき)の置物としても親しまれてきました。分類と学名分類階層界:動物界 ...

レッサーパンダとの違い

輪もようの尾は、レッサーパンダともよく似ています。レッサーパンダはかつてアライグマ科に分類されたこともあり、姿に共通点があります。今では別の科に分けられ、主に竹を食べる点で暮らしぶりが異なります。分布も、レッサーパンダはヒマラヤなどアジアの山地に限られます。

レッサーパンダ
レッサーパンダは、ヒマラヤや中国南西部の山の森にすむ、赤茶色の小さな動物です。竹を食べ、木の上で暮らし、後ろあしで立ち上がる姿で親しまれています。「パンダ」の名を持ちますが、ジャイアントパンダとは近い仲間ではありません。分類と学名界:動物界...

ラスカルと特定外来生物

人里に現れたアライグマ
Rhododendrites, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

アニメで人気になった

日本でアライグマが広く知られたのは、1977年のアニメ『あらいぐまラスカル』がきっかけです。その姿が人気を呼び、ペットとして年に千頭以上が輸入された時期もありました。しかし子どものアライグマはよくなつく一方で、成長すると気が荒くなり、力も強くなります。飼いきれなくなった個体が捨てられたり、逃げ出したりする例が相次ぎました。

逃げ出して各地に広がった

天敵の少ない日本は、野に放たれたアライグマにとって増えやすい環境でした。またたく間に分布を広げ、2008年ごろには47すべての都道府県で生息が確認されています。畑を荒らす農業被害や、古い建物への住みつきが各地で問題になっています。今では特定外来生物に指定され、飼育や輸入、生きたままの運搬が原則として禁じられています。

野生のアライグマは、回虫などの寄生虫や病気を運ぶことがあります。そうした見た目にかかわらず、素手でさわらないよう各地で注意が呼びかけられています。捕獲や駆除は法律にもとづいて自治体などが行い、勝手に捕まえたり飼ったりはできません。人の生活圏に入り込んだ個体も、こうして法律の枠組みのなかで管理されています。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Raccoon」― 形態・前足の感覚・知能・食性・外来分布の各節
  • IUCN レッドリスト「Procyon lotor」― 分布・保全状況(軽度懸念)
  • 環境省 日本の外来種対策― 特定外来生物「アライグマ」の解説と防除

画像出典

サムネイル画像: Darkone, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

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