ワニ【総合】

ワニ類

ワニは川や海辺に潜んで大きな獲物を仕留める、爬虫類の仲間です。世界最大のイリエワニや強力な噛む力、アリゲーターとの見分け方など、話題の多い生きものでもあります。大昔には日本にもワニが住んでいました。

スポンサーリンク

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:爬虫綱 Reptilia
  • 目:ワニ目 Crocodilia
  • 科:クロコダイル科/アリゲーター科/ガビアル科

和名・英名

  • 和名:ワニ(鰐)
  • 英名:Crocodilian(総称)

「ワニ」という3つの仲間

日本語の「ワニ」は、ワニ目に属する生きものをまとめて指す言葉です。英語ではもう少し細かく呼び分けます。口先の細いものをクロコダイル(crocodile)、口先の丸いものをアリゲーター(alligator)、魚を食べる細口のものをガビアル(gharial)と呼びます。人気マンガの名前や革製品の表示で見かける「クロコダイル」「アリゲーター」も、生物としてはワニ目の別の仲間を指しています。

大きさ・分布などの基本データ

種類の数世界に約26種(分類により24〜27種とされる)
大きさ全長 約1.5m(小型のカイマン類)〜6m超(イリエワニ)
分布アジア・アフリカ・南北アメリカ・オーストラリアの熱帯〜亜熱帯
生息環境川・湖・湿地・マングローブの汽水域。クロコダイル類は海にも出る
寿命おおむね35〜75年(種による)
保全状況種によりLC(軽度懸念)〜CR(近絶滅)。ガビアルやヨウスコウアリゲーターはCR

ワニは恐竜時代から続く生きた化石

鳥にいちばん近い爬虫類

ワニは、恐竜や翼竜と同じ「主竜類(アーコサウルス)」という大きなグループの生き残りです。この仲間で今も生きているのはワニと鳥だけで、ワニは見た目に反して、トカゲやヘビよりも鳥に近い間柄にあります。心臓が4つの部屋に分かれる点など、ほかの爬虫類にはない鳥類的な特徴も備えています。

今のワニに直接つながる姿は、約8350万年前の白亜紀後期にはあらわれていました。ワニ目全体の祖先まで遡ると2億年以上前になり、恐竜が栄えた時代をくぐり抜けて、ほとんど姿を変えずに現代まで残ってきました。「生きた化石」と呼ばれるゆえんです。

約26種が3つの科に分かれる

現在のワニは、大きく3つの科に分かれます。イリエワニやナイルワニを含むクロコダイル科がもっとも種類が多く、アメリカアリゲーターやカイマン類を含むアリゲーター科、そして細長い口をもつガビアル科が続きます。この3つの仲間は、口先の形などで見分けられます。

アリゲーターとクロコダイルの違い

口先の形と歯で見分ける

もっとも分かりやすい違いは口先の形です。アリゲーターやカイマンは幅広くU字型の丸い口先をもち、口を閉じると下あごの歯が上あごに隠れて見えなくなります。いっぽうクロコダイルは細めのV字型で、口を閉じても下あごの4番目の歯が外に飛び出して見えます。ガビアルはさらに極端で、細い棒のような長い口をもつのが特徴です。

アメリカアリゲーターの幅広いU字型の口先
アメリカアリゲーターの丸いU字型の口先。H. Zell, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

塩に強いのはクロコダイル

体のつくりにも違いがあります。クロコダイルとガビアルは舌の上に塩を出す腺をもつため、海水の中でも暮らせます。イリエワニが外洋を泳いで島から島へ渡れるのもこのためです。いっぽうアリゲーターとカイマンはこの塩腺をもたず、その多くは淡水の川や湖に住むとされます。3つの仲間の特徴を表にまとめました。

ガビアルの極端に細長い口先
ガビアルの極端に細長い口先。魚をとらえるのに適した形です。Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
仲間口先閉じたときの歯塩への強さ
クロコダイル細いV字型下の4番目が見える強い(海に出る)
アリゲーター・カイマン幅広いU字型下の歯が隠れる弱い(おもに淡水)
ガビアル極端に細長い細かい歯が並ぶ強い

世界最大の爬虫類イリエワニ

6mを超える体

現生の爬虫類でもっとも大きいのがイリエワニです。おとなのオスはふつう全長4.0〜4.5m、体重は400〜770kgに達します。1979年にパプアニューギニアの網にかかった個体は、乾いた皮の状態で6.2mありました。フィリピンで捕らえられた「ロロン」は全長6.17m・体重1075kgで、生きて正確に測られたワニとして世界最大の記録とされています。

岸に上がったイリエワニの全身
岸に上がったイリエワニ。大きなものは全長6mを超えます。Bernard DUPONT, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

実験で記録された強い噛む力

骨を砕く「閉じる力」

イリエワニの噛む力は、実験室で測られた動物の中でもっとも強い値が知られています。全長4.59mの個体で約16,414ニュートン(約3,690重量ポンド)が記録され、アメリカアリゲーターの値を上回りました。大型個体ではさらに強いと推定されています。獲物の骨を砕き、カメの甲羅すら割る力です。

「開ける力」はとても弱い

ただし、この強さは口を「閉じる」ときの話です。口を「開ける」ための筋肉はとても弱く、大人が両手で押さえたり、ガムテープを何重にも巻いたりするだけで開けられなくなります。研究者がワニを扱うとき、閉じた口を軽くしばって作業できるのはこのためです。

待ち伏せの狩りと死のローリング

日光浴で体温を調節する

ワニは変温動物で、自分の体で熱をつくれません。朝は岸に上がって日光浴で体を温め、暑くなると水に入ったり、大きく口を開けたまま動かずにいたりして体温を下げます。開けた口の内側から水分が蒸発して熱を逃がすしくみで、これは怒っているわけではありません。胃の中に石(胃石)を飲みこんでいることもあり、食べたものをすりつぶす助けになると考えられています。

体を回転させて肉を引きちぎる

ワニの歯は、獲物をかみ切るのではなく、つかんで離さないための道具です。大きな獲物の肉を引きちぎるときは、あごでくわえたまま自分の体を高速で回転させます。この動きは「死のローリング(デスロール)」と呼ばれ、ワニの狩りを代表する行動です。獲物を水中に引きずりこみ、おぼれさせてから食べることも多く、待ち伏せ型の狩りに特化しています。

歯は一生生えかわる

ワニの口には約80本の歯が並びます。狩りや獲物との格闘で歯が抜けても、下から新しい歯が生えてくるため、一生の間に同じ場所の歯を50回ほど交換します。生涯では数千本の歯を使うことになり、歯がすり減って食べられなくなる哺乳類とは大きく異なります。

イリエワニの頭骨と並んだ歯
イリエワニの頭骨(博物館の標本)。獲物をつかんで離さない、円錐形の歯が並びます。Australian Museum, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

「ワニの涙」はうそ泣きか

ことわざとしての「ワニの涙」

「ワニの涙」は、見せかけの涙やうわべだけの同情を指す古いことわざです。ワニは獲物を食べながら涙を流して悲しむふりをする、という西洋の言い伝えから生まれました。もちろんワニが獲物に同情することはなく、この意味での「涙」は作り話です。

食事中に涙を流すのは本当

ただし、ワニが実際に涙を流すこと自体は本当だと分かっています。2007年に発表された研究では、陸上でエサを食べるカイマンやアリゲーター7頭のうち5頭が、食事中に目をうるませました。原因は感情ではありません。食べるときに勢いよく空気を出し入れすると、それが副鼻腔を通って涙腺を刺激するためではないか、と考えられています。断定はできませんが、「ワニは食事中に涙を流す」という部分だけは事実に近いといえます。

卵からかえる子と親の子育て

温度でオスとメスが決まる

ワニは卵で繁殖する爬虫類です。生まれてくる子がオスになるかメスになるかは、卵が育つときの温度で決まります。多くの種で、巣の温度がおよそ32度より高いとオスが、31度より低いとメスが多く生まれます。地球温暖化が進むと性別のかたよりが心配される、と指摘される理由もここにあります。

母親が口で子を運ぶ

怖そうな見た目に反して、ワニは爬虫類の中でもきわめて子育て熱心なグループです。メスは枯れ草や泥を積んだ巣をつくって卵を守り、卵の中の子が鳴く声を聞き分けて、ふ化のタイミングで巣を掘り返します。生まれたばかりの子は、母親が大きな口の中にそっとくわえて水辺まで運びます。あの強力なあごを、子を傷つけずに運ぶために使い分けているわけです。

日本とワニ ― 化石と飼育施設

45万年前の日本にいたマチカネワニ

いまの日本の野生にワニはいませんが、大昔には住んでいました。1964年、大阪府豊中市の待兼山(大阪大学の建設現場)で、大型のワニの全身骨格が見つかりました。約45万年前の地層から出たこの化石は「マチカネワニ」と名づけられ、学名を Toyotamaphimeia machikanensis といいます。

推定される全長は6.9〜7.7mで、頭の骨だけで1mを超えます。ワニの化石としては世界でも屈指の完全な骨格で、2023年には国の天然記念物に指定されました。かつての日本が、大型のワニが住めるほど暖かかったことを物語る証拠です。

マチカネワニの全身骨格(復元)
マチカネワニの全身骨格(復元標本)。全長は7m前後と推定されています。Kingfisher, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

まれに南の海へ流れ着くイリエワニ

海を渡れるイリエワニは、ごくまれに日本近海まで到達します。江戸時代の1744年や1800年、昭和の1932年に、日本の沿岸でイリエワニの記録が残っています。近年も南西諸島でワニが目撃されることがありますが、その多くは飼育されていた個体の脱走や漂着とみられ、日本に定着した野生の個体群はありません。

ワニを飼育する動物園とワニ園

日本で生きたワニを飼育しているのは、動物園や専門の施設です。静岡県の熱川バナナワニ園は、20種近いワニを飼育する国内でも有数のワニ園として知られます。上野動物園などでもイリエワニやメガネカイマンが飼育されています。こうした施設では、複数の科のワニがまとめて展示されており、口先の形の違いなどを見比べられます。

参考

画像出典

Tisha Mukherjee, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons | https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Saltwater_crocodile_in_Sundarbans_National_Park_September_2024_by_Tisha_Mukherjee_02.jpg

タイトルとURLをコピーしました