オワンクラゲ

クラゲ類(刺胞動物)

オワンクラゲは、お椀をふせたような形の、ほぼ透明なクラゲです。傘のふちが青く光り、その光は体にある特別なタンパク質を通して緑色に見えます。このクラゲから見つかった緑色蛍光タンパク質(GFP)は、生命科学を大きく変える発見となりました。研究した下村脩(しもむらおさむ)博士は、2008年にノーベル化学賞を受賞しています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:刺胞動物門 Cnidaria
  • 綱:ヒドロ虫綱 Hydrozoa
  • 目:軟クラゲ目 Leptothecata
  • 科:オワンクラゲ科 Aequoreidae
  • 属:オワンクラゲ属 Aequorea

和名・英名

  • 和名:オワンクラゲ(お椀水母)
  • 英名:Crystal jelly

名前の由来と学名の注意点

和名の「オワンクラゲ」は、傘の形がお椀をふせたように見えることにちなみます。英名の Crystal jelly(水晶のクラゲ)は、その透きとおった姿に由来します。オワンクラゲと呼ばれるクラゲはオワンクラゲ属にいくつかいて、日本の海でよく見られるのは Aequorea coerulescens などとされます。一方、GFPの研究で有名になったのは、北米の太平洋岸に住む近縁種の Aequorea victoria です。同じ「オワンクラゲ」でも、種としては分けて考えられています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ傘の直径 約3〜10cm
分布GFPで有名な種は北米太平洋岸(ベーリング海〜カリフォルニア)。近縁種は日本近海にも
生息環境海の中層を漂う(沿岸から沖まで)
食べものほかのクラゲやプランクトンなど(肉食)
寿命クラゲの姿ではおよそ半年ほど

透明なクラゲの体

ほぼ透明な傘

水に溶け込むような体

オワンクラゲの体は、無色でほとんど透明です。水の中にいると輪郭が分かりにくく、透きとおった傘だけがかすかに見えます。クラゲの仲間の多くがそうであるように、体の大部分は水分でできています。透明な体は、外敵に見つかりにくくする役割があると考えられています。

たくさんの触手と放射管

傘のふちに沿って、細い触手が並びます。大きく育った個体では、その数が150本ほどに達することもあります。傘の内側には、中心から放射状に伸びる「放射管(ほうしゃかん)」という管が走っていて、多いものでは100本近くにもなります。触手には刺胞(しほう)と呼ばれる毒の針があり、これで小さな獲物を捕らえます。

透きとおったオワンクラゲ
透きとおったオワンクラゲ。傘の内側を放射状に走る放射管が見える

食べもの

オワンクラゲは肉食のクラゲです。海中を漂いながら、小さな生きものを食べます。おもな獲物は、カイアシ類などの小さなプランクトンや、ほかのゼラチン質のクラゲの仲間です。口は傘の内側の中心にあり、触手で捕らえた獲物をここへ運びます。ときには、同じ仲間どうしで食べ合うこともあると報告されています。

青い光と緑の光

傘のふちが光るしくみ

イクオリンが青く光る

オワンクラゲの光は、傘のふちにある発光する部分で作られます。ここには「イクオリン」というタンパク質があり、体の中でカルシウムイオンと結びつくと、青い光を出します。刺激を受けたときに、このしくみがはたらいて光ると考えられています。もともとのイクオリンが出す光は、緑ではなく青い色です。

GFPが青い光を緑に変える

青い光は、そのまま外に出るわけではありません。同じ発光部分には、「緑色蛍光タンパク質(GFP)」という別のタンパク質があります。GFPは、イクオリンの青い光を受け取り、それを緑色の光として出し直します。この二段構えのしくみによって、オワンクラゲは緑色に光って見えます。

オワンクラゲの傘のふち
光を作る発光する部分は、傘のふちにそって並ぶ(写真は発光していない状態)

発光の役割

オワンクラゲが何のために光るのかは、はっきりとは分かっていません。外敵を驚かせるためや、仲間への合図のためなど、いくつかの説が唱えられています。光るのは、体に刺激が加わったときだとされ、ふだんから光り続けているわけではありません。暗い海の中で青緑色に瞬く姿は、古くから人の目を引いてきました。

ノーベル賞を生んだクラゲ

下村脩によるGFPの発見

大量のクラゲを集める

この緑色の光のしくみを解き明かしたのが、日本出身の科学者、下村脩(しもむらおさむ)博士です。イクオリンやGFPは、クラゲ1匹にごくわずかしか含まれていません。そのため研究には大量のクラゲが必要で、下村博士は長い年月をかけて、数十万匹ものオワンクラゲを集めたと伝えられます。夏のあいだ、家族とともに網ですくい取る作業を続けたといわれます。採ったクラゲから発光する部分だけを切り取り、そこから成分を取り出す、根気のいる作業でした。

二つの光るタンパク質

1961年、下村博士はアメリカのフライデーハーバーで、オワンクラゲから青く光るイクオリンを取り出しました。さらに、その青い光を緑に変えるGFPも見つけ出します。当時は、この地味に見えた発見が、のちに世界の研究を変えるとは知られていませんでした。青い光と緑の光の関係を突き止めたことが、のちの応用への第一歩になりました。GFPが真価を発揮するのは、発見から30年ほどのちのことです。

生命科学を変えた光る目印

光る目印として使う

GFPが注目されたのは、それが「光る目印」として使えると分かってからです。研究者は、調べたいタンパク質にGFPをつなぎます。すると、そのタンパク質が細胞のどこにあるかを、緑の光で直接たどれるようになりました。たとえば、がん細胞や神経細胞にGFPをつなげば、それらが体の中で広がるようすまで光で追えます。目に見えなかった体の中のできごとを、目に見える形に変えたことが、GFPの大きな功績です。

さまざまな研究を支える

GFPをもとに、青や黄、赤などさまざまな色に光るタンパク質も作り出されました。複数のものを同時に見分けられるようになり、研究の幅はさらに広がります。今では、体の一部を光らせたメダカやマウスなどが、世界中の研究に使われています。2008年、下村博士はGFPを研究に役立てたマーティン・チャルフィーとロジャー・チエンとともに、ノーベル化学賞を受賞しました。

暮らしと一生

ポリプとクラゲの世代交代

クラゲの一生は、二つの姿を行き来するのが特徴です。オワンクラゲも、季節に合わせて姿を変えます。海底の岩などに張りつく「ポリプ」の姿と、海中を漂う「クラゲ」の姿です。ふだん目にするお椀形のクラゲは、春の終わりごろにポリプから生まれ、半年ほど海を漂って過ごします。小さなポリプの時期は、目立たない姿で岩の上に群れをつくって過ごします。やがて産んだ卵から次の世代が育ち、また岩の上のポリプへと戻っていきます。

観察・展示

日本の海にも、オワンクラゲの仲間は住んでいます。生きたオワンクラゲは、クラゲの展示で知られる山形県の鶴岡市立加茂水族館などで見ることができます。透明な体は明るい水槽では見つけにくいものの、暗くして青い光を当てると、緑色に光る姿を観察できる展示もあります。加茂水族館は、展示するクラゲの種類の多さで世界的に知られています。ノーベル賞で名前が知られてからは、このクラゲを目当てに水族館を訪れる人も増えました。

クラゲ【総合】
クラゲは、体の大半が水でできた刺胞動物のなかまです。水族館の人気者ミズクラゲや猛毒のハコクラゲ、「不老不死」で話題のベニクラゲなど、姿も生き方もさまざまな仲間がいます。分類と学名分類階層界:動物界 Animalia門:刺胞動物門 Cnida...

参考

画像出典

  • アイキャッチ:Mnolf, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Aequorea victoria.jpg)
  • 透きとおった体:Julia Sumangil, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Crystal jelly.jpg)
  • 傘のふち:Jim G from Silicon Valley, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Crystal Jelly, Monterey Bay Aquarium)
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