メダカは、体長3〜4cmほどの小さな淡水魚です。日本の田んぼや小川で古くから見られ、上を向いた小さな口で水面の餌を食べます。飼いやすく丈夫なため、学校の教材や観賞魚として親しまれ、色や形の違う改良品種も数多く生まれています。宇宙で卵を産んだり、生き物の研究に使われたりと、小さな体で大きな役割を果たしてきた魚です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:ダツ目 Beloniformes
- 科:メダカ科 Adrianichthyidae
- 種:ミナミメダカ Oryzias latipes
和名・英名
- 和名:メダカ(目高)
- 英名:Japanese rice fish / Medaka
名前の由来と2種のメダカ
和名の「メダカ(目高)」は、目が体の高い位置、つまり頭の上のほうについていることにちなみます。英名の Japanese rice fish(日本の稲の魚)は、田んぼに住むことに由来します。かつて日本のメダカは1種とされていましたが、研究が進み、2011年に2種へ分けられました。おもに太平洋側などに住むミナミメダカと、日本海側に住むキタノメダカです。見た目はよく似ていて、分布する地域で見分けられます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約3〜4cm |
|---|---|
| 分布 | 日本や東アジアの淡水域 |
| 生息環境 | 田んぼ・用水路・小川・池などの流れのゆるい水辺 |
| 食べもの | プランクトン、ボウフラ(蚊の幼虫)、小さな水生の虫など |
| 寿命 | 自然下で1〜2年ほど(飼育下ではより長いことも) |
| 保全状況 | 環境省レッドリスト: 絶滅危惧II類(野生集団) |
小さな体と暮らし
上を向いた口と群れ
水面を向いた口
メダカの口は、少し上を向いた形をしています。これは、水面に落ちてきた小さな虫や、水面近くに浮かぶプランクトンを食べるのに向いた形です。目が頭の上のほうにあるのも、水面の様子を見上げるのに役立ちます。ボウフラをよく食べることから、蚊の発生を抑える魚としても知られてきました。
群れで暮らし、顔を見分ける
メダカは、ふだん数匹から数十匹の群れで泳ぎます。群れでいることで、外敵に見つかっても逃げやすくなると考えられています。研究では、メダカが仲間の顔の違いを見分けているとする報告もあります。小さな魚ですが、群れの中で互いを認め合いながら暮らしているようです。

丈夫で環境に幅がある
メダカは、体の小ささのわりに、とても丈夫な魚です。水温は0度近くから40度をこえる高さまで耐えるとされ、水質の変化にも比較的強く育ちます。淡水だけでなく、海水がまじる汽水にも住めるほど適応の幅が広いことも特徴です。この丈夫さが、田んぼのように季節で環境が大きく変わる水辺で生き抜く力になっています。
卵と育ち
オスとメスの見分け
オスとメスは、ヒレの形で見分けられます。オスの背びれには切れこみがあり、尻びれは大きく、平行四辺形に近い形です。メスの背びれには切れこみがなく、尻びれも小ぶりです。繁殖の季節には、オスがメスを追いかけ、寄りそって泳ぐ様子が見られます。産卵は、明け方の暗いうちに行われることが多いとされます。
メスが卵を運ぶ
メダカの産卵期は、水温が高くなる春から夏です。この時期、メスは次々と卵を産みます。産んだ直後、メスは腹の後ろに卵のかたまりをぶら下げたまま泳ぎます。卵のかたまりは、しばらくメスの体についたままです。やがてメスは水草などに体をこすりつけ、卵を1粒ずつなすりつけます。水草についた卵は細い糸でからみつき、ふ化までにはおよそ1〜2週間かかるとされます。
針子から親へ
かえったばかりの稚魚は「針子(はりこ)」です。体長数ミリの、針のように細い透明な姿をしています。親のメダカは、卵や針子を食べてしまうことがあるため、殖やすときは分けて育てるのが普通です。針子は、ごく小さな微生物や粉状の餌を食べて育ちます。体が小さいうちは弱く、無事に親まで育つのはごく一部です。数か月をかけて、親と同じ大きさになります。

たくさんの品種
ヒメダカと改良メダカ
野生のメダカは、黒っぽい地味な色をしています。その中から、体の色が黄赤色になった個体を選んで育てたものが「ヒメダカ」です。ヒメダカは古くから親しまれ、今では学校の教材や餌用の魚としても広く使われています。近年は、白・青・光る鱗をもつものなど、さまざまな改良品種が生み出されています。その数は数百種類にのぼるともいわれます。美しい品種はメダカ人気を支え、高い値がつくものもあります。

同じく観賞用に多くの品種が作られてきた魚として、金魚がいます。

ふつうの黒メダカ
改良品種のもとは、野生型の色をした「黒メダカ」です。全体に黒みをおびた体は、水草や泥の多い水辺では目立ちにくく、身を守るのに役立ちます。ヒメダカや改良メダカも、もとをたどればこの黒メダカから生まれました。近年は、放流された改良品種との交雑で、純粋な黒メダカが減っている地域もあるとされます。野外で見かける在来のメダカは、この黒メダカの姿をしています。
メダカと科学
学校でおなじみのモデル生物
飼いやすく観察しやすい
メダカは、小学校や中学校の授業でよく飼われる魚です。小さな水そうでも飼え、丈夫で殖えやすいうえ、卵が透明で中の様子を観察しやすいという利点があります。卵の中で心臓が動き、体ができていく過程を、顕微鏡でじかに見られます。命の育ちを学ぶ教材として、長く使われてきました。
遺伝や発生の研究に
メダカは、生物学の研究でも重要な「モデル生物」として使われています。世代交代が早く、飼育の手間が少なく、体や卵が観察しやすいためです。遺伝のしくみや、卵から体が作られていく発生の様子を調べる研究に、広く役立てられてきました。同じ小さな魚のゼブラフィッシュとともに、研究者に欠かせない魚の一つです。体を透明にした品種も作られ、内臓の様子を生きたまま観察できるようになりました。
宇宙へ行ったメダカ
メダカは、宇宙へ行った魚としても知られます。1994年、メダカはスペースシャトル・コロンビア号に乗り、宇宙飛行士の向井千秋さんとともに宇宙へ運ばれました。そして無重力の宇宙空間で交尾し、卵を産んで、その卵が無事にかえりました。宇宙で子孫を残した最初の脊椎動物が、このメダカだったとされています。丈夫で飼いやすいというメダカの性質が、こうした実験を可能にしました。
数を減らす野生のメダカ
減少の背景
すみかとなる水辺の変化
身近な魚だったメダカは、近年、野生では数を大きく減らしました。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類に指定されています。田んぼと小川をつなぐ水路がコンクリートで固められ、メダカが行き来したり卵を産んだりする場所が失われたことが、大きな原因とされます。農薬の影響や、水辺そのものの減少も重なりました。
放流と外来魚の問題
善意で行われる放流が、かえって在来のメダカに害となることもあります。ほかの地域や飼育されたメダカを放すと、その土地の野生メダカと交雑し、地域ごとの特徴が失われてしまいます。また、メダカによく似た外来魚のカダヤシが、各地でメダカの生息地に入りこんでいます。カダヤシは尻びれの形などで見分けられますが、メダカとまちがえられることも少なくありません。
参考
- Wikipedia「Japanese rice fish」(分類・形態・生態・繁殖・モデル生物・宇宙メダカ)https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_rice_fish
- 環境省レッドリスト(ミナミメダカ・キタノメダカの保全状況)https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/
- 大阪府立環境農林水産総合研究所「淡水魚図鑑 メダカ(ミナミメダカ)」(2種分割・分布・生態)https://www.knsk-osaka.jp/zukan/zukan_database/tansui/8450b2c298b2683/9950b6e7394c5f6.html
画像出典
- アイキャッチ・群れ:Seotaro, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Oryzias latipes, Hamamatsu, Shizuoka, Japan, 2007)
- 卵:Ethmostigmus, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Medaka (Oryzias latipes) egg, day 0.jpg)
- 改良品種(幹之):Manuel Werner, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Medaka Miyuki Blue, 2024)


