キジバト

小型陸鳥

キジバトは、庭先や公園、街路樹でごく普通に見かける全長33cmほどの中型のハトです。首の両側に青と白の細かい横縞、翼にはうろこ状の模様が入り、公園でおなじみのドバト(カワラバト)とは一目で区別できます。早朝の「デーデー ポッポー」というさえずり、ほぼ周年におよぶ繁殖、口の中で種子を「カララッ」と揺らして選り分ける独特の食べ方。身近ながら細かな癖の多い鳥です。もとは山や田舎の鳥でしたが、20世紀後半から都市部にも進出し、今では東京でもごく普通に見られる存在になっています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:ハト目 Columbiformes
  • 科:ハト科 Columbidae
  • 属:キジバト属 Streptopelia
  • 種:キジバト Streptopelia orientalis(Latham, 1790)

和名・英名・亜種

  • 和名:キジバト(雉鳩)
  • 英名:Oriental turtle dove/Eastern turtle dove
  • 日本の亜種:S. o. orientalis(本州〜九州)/S. o. stimpsoni(リュウキュウキジバト、南西諸島)
  • 地方名:ヤマバト(東北〜九州北部)/サトバト(四国・九州中南部)/デデイポッポ(岩手・宮城)/カラハト(南九州・沖縄)

名前の由来 ―雉の雌に似ている

和名の「雉鳩」は、体色や翼のうろこ模様がキジの雌に似ていることに由来するとされます。学名の種小名 orientalis は「東洋の」の意で、アジアに広く分布することを表した命名です。英名の turtle dove の turtle は「亀」ではなく、鳴き声を写したラテン語 turtur が語源で、かつては turtle 一語でこの仲間のハトを指すこともありました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約33cm/体重 約200〜250g/ドバトよりやや小型
分布ユーラシア中部〜東部、インド亜大陸に広く分布/日本では北海道〜南西諸島まで全域(北海道・東北北部では夏鳥、それ以南は留鳥)
生息環境平地〜山地の明るい林・農耕地・都市の公園や街路樹
寿命野生で7〜10年程度、飼育下で15年以上の記録もあります
保全状況IUCN:LC(低危険種、2024年評価)/狩猟鳥獣に指定(鳥獣保護法)

姿と見分け方

樹上のキジバト・首の青と白の横縞が明瞭
Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

翼のうろこ模様と、首の青と白の横縞

翼のうろこ模様

体色は全体に茶褐色から紫灰色。翼には黒と赤褐色のうろこ状の模様が並び、額から後頭部にかけては灰色で、後頭部はぶどう酒色を帯びます。目のまわりは赤く裸出しており、腹側は淡い葡萄色を帯びた灰白色です。全体としてキジの雌を思わせる落ち着いた色合いに整っています。

首の青白横縞

キジバト最大の目印は、首の両側にある青と白の細かい横縞です。他の日本のハト類には見られない模様で、遠くからでもキジバトを識別するもっとも確実な手がかりになります。若鳥ではこの縞がやや薄めですが、成鳥では鮮明に浮かびます。

雌雄はほぼ同色 ―見分けは難しい

キジバトの雌雄は羽の色や模様がほとんど同じで、外見だけで雌雄を見分けるのは難しいとされます。オスの方がやや大きめで首の色がわずかに濃い、後頭部の葡萄酒色が強いといった報告もあります。ただしいずれも個体差の範囲で、確実な判別材料にはならないとされます。もっとも確実なのは行動での判断で、繁殖期にさえずるのはほぼオス、抱卵時間の役割分担も雌雄で異なります。詳しくは後述の繁殖の節で触れます。

ドバト(カワラバト)との違い

公園などでよく見かける灰色や白斑のハトはドバト(カワラバト、Columba livia)で、キジバトとは別種です。3種の見分けポイントを整理すると次のとおりです。

キジバトドバト
体色茶褐色・翼にうろこ模様灰色主体・首に緑や紫の光沢
首の縞青と白の細い横縞なし
群れつがい・単独が多い大きな群れになりやすい
生息林・田畑・住宅の庭駅前・広場・ビル街

「デーデー ポッポー」の鳴き声

樹上で正面を向くキジバト
Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

5音のさえずり

音を写した表現はいろいろ

キジバトのさえずりは、伝統的には「デーデー ポッポー」と書き表されます。人によっては「ホーホー ホッホー」「クーク グッググー」など、聞き手ごとに異なる写し方をされる鳴き声です。基本は5音の繰り返しですが、4音でさえずる個体もあり、音程やリズムには個体差があります。付点四分音符で約72のテンポの9/8拍子で書けるといわれ、繰り返しが多く音楽的な響きを持つ鳴き声です。

早朝によく鳴く

もっともよく鳴くのは繁殖期(春〜夏)の早朝で、時に夜間や明け方に鳴く個体もあります。窓辺の近くで鳴き始めると、早朝の街ではっきり響く鳴き声のひとつです。鳴くのはおもにオスで、メスも同じ鳴き声を出しますがオスほど頻繁ではありません。繁殖期以外の鳴き声はさえずりよりも短く、地鳴きに近いものになります。

食性 ―口の中で種子をふるう

地面で餌をついばむキジバト
Tisha Mukherjee, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

雑食で種子と果実が中心

食性は雑食で、主に果実や種子を食べ、季節によっては昆虫・貝類・ミミズもとります。地面を歩き回りながら小さな種子を拾う姿がよく見られ、農耕地ではまかれた大豆や麦などを食害する農業害鳥として扱われる面も持ちます。餌台に来ることも多く、住宅の庭やベランダで見かける機会が最も多いハトの一つです。

カララッと3回鳴らして種を弾き飛ばす

キジバトの独特な行動として、口ばしの中で種子を細かく震わせる仕草があります。「カララッ カララッ」と2回鳴らして飲み込みやすい向きに調整し、そのまま飲みこむのが基本ですが、気に入らない種子や異物が混ざっているときは「カララッ カララッ カララッ」と3回鳴らして遠くへ弾き飛ばします。単なる嚥下ではなく、口の中で種子を選別する高度な行動で、餌台でキジバトを観察するとよくわかります。

繁殖 ―ほぼ周年、同じ巣を使い回す

枝に並んで止まる2羽のキジバト
Tisha Mukherjee, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

樹上に皿状の巣、卵は2個

粗く組まれた皿状の巣

キジバトは樹上や人工構造物の上に、小枝を粗く組んだ皿状の巣を作ります。ベランダの室外機の上や物干し竿、屋根裏の隙間に営巣した事例も多く報告される、都市部の代表的な営巣鳥の一つです。1回に産む卵は白い2個で、抱卵期間は15〜16日、雛は孵化から約15日で巣立ちます。

喉の「ピジョンミルク」で雛を育てる

育雛期には親鳥の喉の内側から分泌される「ピジョンミルク」と呼ばれる高栄養の分泌液を、雛の口に運びこんで与えます。ハトの仲間に共通する育て方で、種子食の親でも雛を早く育てられる仕組みを支えているとされます。オスも同じくピジョンミルクを分泌し、雛の食事は雌雄が交代で担当します。

春〜夏が多いがほぼ周年

繁殖期のピークは春〜夏ですが、条件がよければ晩秋や冬にも繁殖に及ぶほぼ周年繁殖型に分類されます。1シーズンに2〜3回繁殖する個体もあり、都市部では冬でも巣立ち直後の幼鳥が観察される年もあります。抱卵は夕方から朝までの夜間はメス、昼間はオスが担当するはっきりした役割分担があり、繁殖時の性別判別の手がかりにもなります。

古巣を何度も使う

キジバトはいったん作った巣を捨てずに、同じ場所や同じ巣枝を何度も繁殖に使う「古巣再利用」の性質を強く持ちます。ベランダなどで一度巣が作られると、翌シーズン以降も同じ場所で繁殖が繰り返されるケースも珍しくありません。営巣中の巣や卵・雛は鳥獣保護法の保護対象とされ、多くは巣立ちが済み空になった状態で撤去された事例として報告されています。

山の鳥から街の鳥へ

電線に止まるキジバト・街の環境で見かける姿
Imran Shah, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

キジバトはもともと平地から山地の明るい林に暮らす、田舎の鳥でした。1960〜70年代を境に都市部への進出が急速に進み、公園や街路樹はもちろん、ベランダや電線でもごく普通に見かけるようになった鳥です。街路樹の増加や、餌をとりやすい環境の広がりが背景にあるとされ、いまでは東京都心でもキジバトの声が春先の早朝を告げる鳴き声として定着しました。「キジバトが庭に来る」を縁起がいいと語る言い伝えも各地にありますが、これは古くから身近な暮らしの鳥だった名残と考えられます。

切手にもなった身近な鳥

身近さゆえに、キジバトはたびたび切手の意匠に選ばれてきました。日本では10円切手(1963年発売)と62円切手(1992年発売)、80円切手(2007年発売)でキジバトが図案化されました。いずれも郵便で長期間使われた馴染みの深いデザインです。80円切手は2014年に発売を終了しましたが、古い封筒の残り物として今も家庭で見かける機会が残っています。狩猟鳥として指定されている一方、身近な野鳥として長く親しまれてきた歴史も並行して積み重なってきました。

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参考

  • BirdLife International. 2024. Streptopelia orientalis. IUCN Red List of Threatened Species(LC指定)
  • 叶内拓哉ほか『山渓ハンディ図鑑7 新版 日本の野鳥』山と溪谷社, 2014(形態・分布・繁殖)
  • 清棲幸保『日本鳥類大図鑑 II(増補改訂版)』講談社, 1979(羽色・鳴き声・抱卵時間)
  • 農商務省編『狩猟鳥類ノ方言』日本鳥学会, 1921(地方名)
  • Wikipedia (English): Oriental turtle dove(分布・種子選別行動)/Wikipedia(日本語版):キジバト(形態・繁殖・呼称)

画像出典

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