ホトトギス

鳥類

ホトトギスは、初夏に南から渡ってくるカッコウの仲間です。自分では巣を作らずにウグイスに卵を育てさせ、「特許許可局」と聞こえる声で昼も夜も鳴きます。

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  1. 分類と学名
    1. 分類階層
    2. 和名・英名
    3. 名前の由来
  2. 大きさ・分布などの基本データ
  3. 巣を作らず、ウグイスに卵を預ける
    1. 托卵の相手はほぼウグイスだけ
    2. ウグイスと見分けがつかない、チョコレート色の卵
      1. 模様のない卵を、1つの巣に1卵ずつ
      2. 赤い人工卵を抱き続けたウグイス
    3. 先にかえったヒナが、ウグイスの卵を背中で押し出す
    4. 剥製を激しく攻撃する、ウグイスの守り
      1. ホトトギスの渡来後に強まる防衛
      2. 托卵率46〜54%、繁殖成功率は3%
  4. 夜も響く「特許許可局」の声
    1. 「キョッキョッ キョキョキョキョ」の聞きなし
    2. 昼も夜も、飛びながらも鳴くオス
    3. 「ピピピピ」と鳴くメス
  5. 5月中旬に渡来する、毛虫好きの夏鳥
    1. 他の渡り鳥より遅い渡来
    2. 樹上の毛虫を多く食べる食性
    3. 冬はインドやアフリカ東部へ
  6. カッコウ・ツツドリ・ジュウイチとの見分け
    1. 夏に渡来するカッコウ類4種の早見表
    2. 腹の横斑は7〜9本と少なめ
    3. 赤褐色の「赤色型」のメス
  7. 低地へ広がる分布と、森での減少
    1. 確認されたマス目が約1.4倍に広がった分布
    2. シカが増えた森では減少
  8. 万葉集でいちばん多く詠まれた鳥
    1. 田植えの時期を告げる「時鳥」
    2. 150首を超える万葉集の歌
    3. 托卵を詠んだ『高橋虫麻呂歌集』の長歌
    4. 百人一首81番と、初音を待つ夜
    5. 平安時代から当てられた「郭公」の字
  9. 不如帰・子規と「鳴いて血を吐く」伝説
    1. 杜鵑・時鳥・不如帰など多くの漢字表記
    2. 蜀の望帝の伝説と、赤い口の中
    3. 正岡子規の号と、俳誌『ホトトギス』
    4. 徳冨蘆花の小説『不如帰』
    5. 「鳴かぬなら」の三句は後世の作
    6. 1994年に岡山県の鳥からキジへ
    7. 名前を借りた、ユリ科の植物ホトトギス
  10. 参考
  11. 画像出典

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:カッコウ目 Cuculiformes
  • 科:カッコウ科 Cuculidae
  • 属:カッコウ属 Cuculus
  • 種:ホトトギス Cuculus poliocephalus

和名・英名

  • 和名:ホトトギス
  • 英名:Lesser cuckoo

名前の由来

「キョッキョッ キョキョキョキョ」という声は、「ホトトトギス」とも聞こえます。和名はこの鳴き声から来たと考えられています。声を「ホトトギ」と聞き、そこに鳥を意味する「ス」が付いたとする説もあります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長約28cm、翼を広げると約46cm(ヒヨドリよりわずかに大きく、ハトより小さい)
見た目頭と背は灰色、翼と尾は黒褐色。白い腹に7〜9本の黒い横斑が入る
分布ヒマラヤから中国・朝鮮半島・日本で繁殖し、冬はインドやアフリカ東部に渡る
日本での時期夏鳥。5月中旬ごろ渡来し、秋に南へ去る(九州以北。北海道では南部に少数)
生息環境低地から山地の、ササやぶのある林
食べ物昆虫。特に毛虫を多く食べる
繁殖托卵(主にウグイスの巣に卵を産む)
寿命平均1〜2年とされる
保全状況IUCN:LC(低懸念)。環境省レッドリストには掲載なし

巣を作らず、ウグイスに卵を預ける

枝の上でさえずるウグイス
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

托卵の相手はほぼウグイスだけ

ホトトギスは自分で巣を作らず、他の鳥の巣に卵を産んで育てさせます。この習性を托卵といい、ホトトギスが相手に選ぶのはほぼウグイスだけです。

伊豆諸島では、イイジマムシクイやウチヤマセンニュウの巣に産むこともあります。それでも主な相手はウグイスです。道南を除く北海道にはホトトギスがおらず、そこのウグイスには同じカッコウ科のツツドリが托卵します。

ウグイスと見分けがつかない、チョコレート色の卵

模様のない卵を、1つの巣に1卵ずつ

チョコレート色をしたウグイスの卵の標本
Roger Culos, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ホトトギスの卵は、ウグイスの卵と同じチョコレート色で模様がありません。日本鳥学会誌の論文でも「赤色無斑」(赤っぽく模様がない)と表され、ウグイスの卵と非常によく似ています。

1つの巣に産むのは普通1卵で、大きさは直径20mmの1円玉より少し細長い約22×16mmです。

赤い人工卵を抱き続けたウグイス

東京大学の樋口広芳博士は、ウグイスの巣に人工の卵を入れて反応を調べました。白やピンクの卵を入れると巣を放棄しましたが、赤い卵は抱き続けました。

ウグイスは托卵を拒もうとしているものの、ホトトギスの卵の擬態がそれを上回っています。そのため、自分の卵と区別できずにいるとみられます。

先にかえったヒナが、ウグイスの卵を背中で押し出す

卵は、ウグイスが抱卵を始めてから10〜13日でかえります。かえったホトトギスのヒナは、ウグイスの卵を背中で押し出して巣の外に捨てます。こうして親鳥が運ぶ餌を独り占めにして育ちます。

ホトトギスは子育てをしない分、産卵に力を注ぎ、一夏に10〜15個の卵を産むと推定されています。托卵そのものは短く、埼玉県で観察された2例では18秒と19秒で終わりました。

剥製を激しく攻撃する、ウグイスの守り

ホトトギスの渡来後に強まる防衛

国立科学博物館の濱尾章二さんは、三宅島でウグイスの巣の前にホトトギスの剥製を置きました。ウグイスは剥製を激しく攻撃し、無害なキジバトの剥製にはほとんど反応しませんでした。

関東地方の低地では、ウグイスは4月に繁殖を始めます。一方、ホトトギスが托卵を始めるのは6月になってからです。ウグイスは、ホトトギスが渡来した後のほうが剥製を激しく攻撃しました。

托卵率46〜54%、繁殖成功率は3%

それでもホトトギスの渡来期以降は、ウグイスの巣の46〜54%が托卵を受けます。2巣に1巣ほどの割合で、繁殖期全体でも21〜24%、4〜5巣に1巣にあたります。

一方、埼玉県の調査では、ホトトギスの繁殖成功率は3%(100に3つほど)にとどまりました。この低さは、ウグイスが卵を拒んだ結果ではなく、主に捕食の影響によるものでした。

ウグイス
ウグイスは、日本で「ホーホケキョ」のさえずりとともに春の訪れを告げる小鳥です。「梅にウグイス」の絵柄と結びついていますが、そこに描かれる緑色は本種ではなく、多くの場合メジロの姿だとされます。ホトトギスに托卵されることでも知られる、藪の中で暮...

夜も響く「特許許可局」の声

茂った葉の間の枝にとまるホトトギス
Sun Jiao (Interaccoonale), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

「キョッキョッ キョキョキョキョ」の聞きなし

オスは「キョッキョッ キョキョキョキョ」と、大きく遠くまで響く声で鳴きます。鳴き声を人の言葉に当てはめた「聞きなし」では、「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られています。

「本尊掛けたか」と聞く例もあり、どれも鋭い短い音が5つか6つ続く同じ声を表しています。

昼も夜も、飛びながらも鳴くオス

繁殖期のオスは昼夜を問わず鳴き、飛びながらもよく鳴きます。渡来して間もない時期は、特に夜昼構わず鳴いています。ただし、声の割に姿を見る機会は多くありません。

森林総合研究所の鳥類調査でも、声はよく聞く一方で、茂った枝葉の中に姿を見かけることはそれほど多くありません。

「ピピピピ」と鳴くメス

メスの声は「ピピピピ」だけで、オスとは違います。オスもさえずりの終わりに、「ピピピピピ」という鋭い声を付けることがあります。

5月中旬に渡来する、毛虫好きの夏鳥

他の渡り鳥より遅い渡来

ホトトギスが日本に来るのは5月中旬ごろで、他の渡り鳥より遅めです。托卵する相手の繁殖が始まる時期に合わせるためと説明されています。

埼玉県の調査地では、ウグイスの産卵が4月中旬に始まったのに対し、ホトトギスは5月下旬に渡来して6月初旬から托卵しました。

樹上の毛虫を多く食べる食性

餌は主に樹上の昆虫で、他の鳥と比べて毛虫を多く食べます。早春に渡ってきても餌の毛虫が少ないことも、渡来が遅い理由の一つとされます。

俳人・宝井其角には「あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥」という句があります。美しい声で鳴く鳥がトカゲも食べることから、人や物事は見かけによらないという意味で使われます。

冬はインドやアフリカ東部へ

繁殖地はヒマラヤから中国・朝鮮半島・日本にかけて広がります。秋になると南へ渡り、インドやアフリカ東部などで冬を越します。資料によっては越冬地を東南アジアとするものもあり、見方が分かれています。

カッコウ・ツツドリ・ジュウイチとの見分け

夏に渡来するカッコウ類4種の早見表

日本には、夏にカッコウ類の4種が渡ってきます。ホトトギスは全長約28cmで、その中でいちばん小さい種です。

種全長オスの声主な托卵相手主に住む場所
ホトトギス28cmキョッキョッ キョキョキョキョウグイスササやぶのある林
カッコウ35cmカッコウノビタキ・モズ類・ホオジロ類・オナガなど林やその周辺、草地
ツツドリ33cmポポ、ポポセンダイムシクイ山地の林
ジュウイチ32cmジュウイチーィコルリ・オオルリなど標高の高い山地の林

4種はどれも姿がよく似ていますが、鳴き声にはそれぞれはっきりした特徴があります。

腹の横斑は7〜9本と少なめ

姿で見分けるときは、腹の横斑の数が手掛かりになります。横斑はホトトギスで7〜9本と、カッコウの11〜13本やツツドリの9〜11本より少なく、1本ずつが太めです。カッコウは全身の色が淡めで、ツツドリには尾の付け根の下側(下尾筒)にも黒い横斑があります。

赤褐色の「赤色型」のメス

全身が赤褐色で腹に黒い横斑がある赤色型のホトトギス
Sun Jiao (Interaccoonale), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

メスの中には、頭から尾や翼までが赤褐色で、黒い横斑が入る「赤色型」がいます。広島県でも、赤色型の個体が撮影されています。

カッコウ
初夏に日本へ渡ってくるカッコウ。ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせる「托卵」をする鳥で、卵の擬態やヒナの排除、毒のある毛虫を食べる食性まで紹介します。

低地へ広がる分布と、森での減少

確認されたマス目が約1.4倍に広がった分布

全国鳥類繁殖分布調査は、国土を細かなマス目(メッシュ)に区切って鳥の分布を調べています。ホトトギスが確認されたマス目は、1970年代の581から2010年代の829へ、約1.4倍に増えました。特に広がったのは、標高100m以下の低地で森林の少ない地域です。

こうした場所では托卵相手のウグイスも増えており、それが分布を広げた一因ではないかとみられています。

シカが増えた森では減少

一方、環境省の「モニタリングサイト1000」の森林の調査地では、ホトトギスがはっきり減っています。減少が目立ったのは、シカがササなどを食べて下草が衰え、ウグイスが減った場所でした。

里地里山の調査でも、2005〜2022年度にかけて1年あたり4.4%の減少が報告されています。この割合で10年続けば、およそ3分の2に減る計算です。国のレッドリストには載っていませんが、千葉県や東京都などは独自のレッドリストに掲載しています。

万葉集でいちばん多く詠まれた鳥

田植えの時期を告げる「時鳥」

5月半ばに渡ってきて田植えの時期を告げることから、ホトトギスは「時鳥」とも書かれます。万葉集にも、この声は田植えを促すために鳴くのだとあります。季語では夏を表します。

春のウグイスと並ぶ季節の初音として、その声は毎年待たれてきました。

150首を超える万葉集の歌

万葉集には、ホトトギスを詠んだ歌が150首以上あります。これは、万葉集に出てくる動物の中で最も多い数です。

数え方によっては153首とされ、後の『古今和歌集』では42首、『新古今和歌集』では46首に詠まれました。

托卵を詠んだ『高橋虫麻呂歌集』の長歌

万葉集の巻9には、「鴬の 卵の中に 霍公鳥 独り生れて」で始まる長歌があります。ウグイスの卵の中から1羽だけ生まれたホトトギスが、父にも母にも似ない声で鳴くと詠まれています。この歌は『高橋虫麻呂歌集』から採られています。

ウグイスの巣でホトトギスが育つことは、万葉の時代から知られていたことになります。

百人一首81番と、初音を待つ夜

百人一首の81番は、後徳大寺左大臣(藤原実定)の「ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる」です。声のした方を見ても姿はなく、明け方の月だけが残っていたと詠んでいます。

その年に初めて聞くホトトギスの声は「忍音(しのびね)」と呼ばれ、大切にされました。『枕草子』には、初音を人より早く聞こうと夜通し待つ様子が描かれています。

平安時代から当てられた「郭公」の字

歌川広重「東都名所 佃島初郭公」。月の下を飛ぶホトトギスが描かれている
Utagawa Hiroshige, CC0, via Wikimedia Commons

平安時代以降は、ホトトギスに「郭公」の字を当てることも多く、松尾芭蕉もこの字を使いました。ホトトギスとカッコウがよく似ていることからくる誤りと考えられています。

不如帰・子規と「鳴いて血を吐く」伝説

満月を背に飛ぶホトトギスを描いた歌川広重の版画
Utagawa Hiroshige I, Public domain, via Wikimedia Commons

杜鵑・時鳥・不如帰など多くの漢字表記

ホトトギスは、漢字表記や異名が多い鳥です。杜鵑・杜宇・蜀魂・不如帰・時鳥・子規・霍公鳥などが使われてきました。旧暦4月に鳴くことから、「卯月鳥(うづきどり)」という別名もあります。

蜀の望帝の伝説と、赤い口の中

「杜宇」「蜀魂」「不如帰」は、中国の伝説に基づく名前です。古代の蜀の国で帝王となった杜宇(望帝)は、死後にホトトギスに化身したと伝えられます。

後に蜀が秦に滅ぼされると、ホトトギスは「不如帰去(帰り去くに如かず)」と鳴きながら血を吐いたといいます。ホトトギスの口の中が赤いのはそのためだ、と言われるようになりました。

正岡子規の号と、俳誌『ホトトギス』

正岡子規は1895年、従軍記者として渡った遼東半島からの帰りの船で喀血しました。結核と思われる病で死を覚悟し、「鳴いて血を吐く」と言われるホトトギスに自分を重ねたといいます。そして、ホトトギスの漢字表記の一つ「子規」を自分の俳号にしました。

1897年には、子規の友人の柳原極堂が松山で俳句雑誌『ホトトギス』を創刊しています。

徳冨蘆花の小説『不如帰』

明治時代には、徳冨蘆花の小説『不如帰』も書かれました。結核にかかった妻が離縁される悲劇を描いた作品で、1898〜1899年に『国民新聞』に連載されています。

「鳴かぬなら」の三句は後世の作

「鳴かぬなら殺してしまえ時鳥」は織田信長、「鳴かせてみしょう」は豊臣秀吉、「鳴くまで待とう」は徳川家康の句とされます。3人の性格を、鳴かないホトトギスをどうするかで言い表したものです。

ただし、3人が実際に詠んだ句ではありません。江戸時代後期の平戸藩主・松浦静山の随筆『甲子夜話』巻53に、人が作ったものとして載っています。

1994年に岡山県の鳥からキジへ

岡山県は、1964年にホトトギスを県の鳥に選びました。しかし托卵のイメージの悪さなどを理由に、1994年の県民投票でキジへ変わっています。

名前を借りた、ユリ科の植物ホトトギス

白地に紫の斑点がある植物ホトトギスの花
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ユリ科の多年草にも、ホトトギスという植物があります。白地に紫の斑点が入る花を咲かせ、この斑点が鳥の胸の模様に似ていることから名付けられました。花の時期は秋で、10月ごろに上向きの花を付けます。

参考

画像出典

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