ガラパゴスペンギンは、南米エクアドルのガラパゴス諸島だけにすむ、とてもめずらしいペンギンです。なんと、赤道の真下で暮らす、世界で唯一のペンギン。北半球にすむペンギンは、この種だけです。氷の世界とは正反対の、暑い島でどうやって生きているのでしょうか。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:フンボルトペンギン属 Spheniscus
- 種:ガラパゴスペンギン Spheniscus mendiculus
和名・英名
- 和名:ガラパゴスペンギン
- 英名:Galápagos penguin
名前の由来
和名も英名も、すむ場所のガラパゴス諸島に由来します。この諸島にしかいない「固有種」です。ずっと昔、南アメリカの海岸にいたペンギンが冷たいフンボルト海流に乗ってガラパゴス諸島へたどり着き、長い年月をかけてこの島だけの別の種へと進化したと考えられています。同じフンボルトペンギン属の中で、いちばん赤道に近いところまで進出したペンギンです。島ごとに生きものが独自の進化をとげた、ダーウィンでも有名なガラパゴス諸島ならではの物語です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約48〜50cm・体重 約2〜4kg(世界で2番目に小さい) |
|---|---|
| 分布 | ガラパゴス諸島(エクアドル)の固有種 |
| 生息環境 | 火山(溶岩)の岩場の海岸・洞くつと、まわりの海 |
| 食べ物 | イワシ・カタクチイワシなどの群れる小魚(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ15〜20年 |
| 保全状況 | IUCN:絶滅危惧(EN) |
赤道直下にすむ、北半球唯一のペンギン
北半球で暮らす、ただ一種
ペンギンは、ふつう南半球にしかすんでいません。ところがガラパゴスペンギンは、その9割がすむイサベラ島の北のはしが赤道をこえているため、一部は北半球で暮らしています。北半球にすむペンギンは、世界でこの種だけ。「ペンギン=寒い南極」というイメージをくつがえす、とても特別なペンギンなのです。世界にいるペンギンの中で、いちばん北にすむ種でもあります。
なぜ暑い赤道でくらせるの?
暑い赤道の島で、ペンギンが生きていけるのはなぜでしょう。その答えは、島のまわりを流れる冷たい海流にあります。ガラパゴス諸島には、南極方面から来る「フンボルト海流」や深い海からわき上がる「クロムウェル海流」といった、冷たくて栄養ゆたかな流れがぶつかります。この冷たい海が、たくさんの魚を育て、ペンギンのごちそうを運んでくるのです。ペンギンにとって、海は食べ物をとる場所であり、暑さから逃げこむ「クーラー」でもあります。

世界で2番目に小さく、暑さとたたかう
2番目に小さいペンギン
ガラパゴスペンギンは体長50cmほど、体重2〜4kgと小さく、コガタペンギンに次いで世界で2番目に小さいペンギンです。体が小さいことも、暑い土地で暮らすのに役立っています。胸には黒い帯が2本あり、これは南アメリカにすむマゼランペンギンとよく似ています。顔は黒く、目のうしろから白い線がぐるりとまわります。オスのほうがメスより少し大きく、体つきはほっそりとしているのも特徴です。
暑さをしのぐ体の工夫
海・日陰・「ハアハア」で体を冷やす
強い日ざしから体を守るため、ガラパゴスペンギンはいろいろな工夫をしています。暑いときは海に入って体を冷やし、陸ではつばさを広げて前かがみになり、熱がにげやすい足に日が当たらないようにします。犬のように口を開けて「ハアハア」と息をし、のどから熱をにがすこともあります。
涼しい洞くつでの子育てと、年2回の換羽
卵やヒナは、日光の当たらない涼しい溶岩の洞くつの中で育てます。つがいは一生同じ相手とつれそい、羽づくろいをしあったり、翼で軽くたたき合ったりして絆を深めます。えさが豊かなときは一年じゅう子育てをし、海のすぐそばの洞くつや岩のすき間に1〜2個の卵を産んで、両親が交代で温めます。さらにこの種は、羽の生えかわり(換羽)を1年に2回行う、唯一のペンギンとしても知られています。食べ物がいつ手に入るか分からない環境で、羽をいつでも良い状態にたもつための工夫だと考えられています。

世界でもっとも希少なペンギンのひとつ
野生に約1200羽・エルニーニョが最大の脅威
ガラパゴスペンギンは、野生に大人がおよそ1200羽ほどしかいない、世界でもっとも数の少ないペンギンの一つです。IUCNレッドリストでは「絶滅危惧(EN)」に指定されています。いちばんの脅威は「エルニーニョ」という気候の変化です。数年ごとに海があたたまると魚がいなくなり、ペンギンは子育てをあきらめたり、えさ不足で命を落としたりします。1982〜83年の大きなエルニーニョでは、数が77%も減ってしまいました。生まれたヒナは2か月ほどで独り立ちしますが、こうしたきびしい環境のため、無事に育つのはひとにぎりです。ほかにも、人が持ちこんだネコやネズミが卵やヒナをおそうことも、大きな問題です。
ガラパゴスでしか会えない・守る取り組み
ガラパゴスペンギンは、ガラパゴス諸島でしか見られません。世界の動物園や水族館にもほとんどおらず、日本の水族館で会うことはできません。この貴重なペンギンに会うには、ガラパゴス諸島まで行くしかないのです。ガラパゴス諸島は国立公園として、島の自然と生きものたちが厳しく守られています。数少ないこのペンギンにとって、赤道の島の海と自然を守ることが、生き残りのかぎになっています。



参考
- IUCN Red List: Spheniscus mendiculus(絶滅危惧EN・野生は約1200羽)
- Animal Diversity Web「Spheniscus mendiculus」(求愛=羽づくろい・翼パット・くちばし合わせ/一夫一妻/群れで狩り・なわばりを守る/エルニーニョ/ラニーニャで餌が激変し飢餓も=Boersma 1998ほか)
- Wikipedia「Galápagos penguin」英語版(赤道をこえる北半球唯一のペンギン/冷たいフンボルト・クロムウェル海流/2番目に小さい・胸の帯2本/暑さ対策=水冷・足を日陰・パンティング・溶岩洞くつ/年2回換羽/エルニーニョで77%減)


